表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルバイターズ  作者: 野方送理
69/100

第69話 隠された事実

第69話 隠された事実


「最近霜村さんの動きが怪しい」


Y市への調査から1週間たった6月の初め、士郎はそう切り出した。


「…怪しい?」


霧子が疑い深く答える。


「移送システムを使って何度かY市に行っている」


「別に私用だろうと使うのは構わないんだけど…?」


「シフトがない日は毎日だ。なぜかを聞いても気になることがあるからもう少し調査したい、としか言わない」


「…何か出ちゃった?」


「いや、サンもルナも特に嫌な未来を予測したわけじゃない」


そこで言葉を切り、少し考えてから


「俺の勘だ」


「勘、ね。あなたらしくないけど、気になることはわかるわ」


そう言って霧子が立ち上がって


「今度後をつけてみましょう」


そう言った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「いやはや本当に素晴らしい強さ…」


ボコボコにのされた男を見て吉凪は呟いた。


「で、次はいないのかしら?」


「今日はこれだけです。ありがとうございました」


深々と頭を下げなげる。


「好きでやってるからいいのよ。じゃあ帰るわね」


「ええお疲れ様でした」


そういうと、吉凪は振り返って歩き出した。


しばらくすると、『幸福の雨』という看板のたったプレハブの建物に到着する。


「やあ、まだあの女落ちないのかい?」


そこにいたのは、奈美たちより少し年上に見える青年だった。


「まだもうすこしかかりそうです。しかしあれだけの力、多少時間がかかってもこちら側に引き入れたいものです」


「そうだね」


吉凪の返答に青年も頷く。


青年の前を通り、掃除ロッカーを開ける吉凪。


彼が掃除ロッカーの奥に手をかけるとギィィと音を立てて開く。


「私たちの理想の世界のために」


果たしてそこにいたのは


「さあ今日も楽しませてくれよ」


身体中傷だらけで裸の男女が床にいくつも転がっている。ほとんどの物は意識がなく、あるものも身を縮めて震えている。


おぞましい部屋の奥には




肌の青い悪魔が鎖に繋がれて捕らえられていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「今日も行くみたいね」


神社裏手のワープゾーンに奈美が入っていったことを確認して、霧子と士郎が後に続く。


「変なこと起こしてなきゃいいけど…」


そうしてY市の神社に再度到着する。


「あ、いた。バレないようについていきましょう」


いくつかの角を曲がり、複雑に進んでいく奈美。


「どこへ行くのかしら、ずいぶん曲がるのね」


その時


「!?いない!?どうして、さっきここを曲がったのを見たのに!」


2人が角を曲がるとそこに奈美の姿はなかった。


「…なんらかの道具を使った…?」


その時だった


「…誰だあの人」


1人の青年がこちらをみていることに士郎が気づいた。


その顔を見るや否や、霧子は目を見開き、ぽかんと口を開けた。


「…兄…さん」


2人の姿を見るなり、霧子が兄と呟いた人物は背を向けて歩いていってしまう。


「ま、待って!!!」


同じように角を曲がると、その青年の姿はいなくなっていた。


「…神城さん」


「見た限りだけど、私の兄に似ていました」


「お兄さんは今どこに?」


「…今から5年前に、交渉人に選び出され…」


そこで言葉をきると


「死んだことになっているわ」


そう続けた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「どうやらつけられていたようですね」


「…迂闊だったわ、申し訳ない」


吉凪と奈美が話し合う。


「どうしてそこまで隠したがるのですか?我々の活動を彼らにも知ってもらいましょうよ」


煽るかのように吉凪はいう。


「それは…!…言ったって協力してくれるかはわからないわ」


苦い顔をしながら奈美も返す。


「それもそうですね。道具もいくらか回収されてしまいましたし」


奈美に背を向けてカレンダーを見る吉凪。その顔は笑みで歪んでいた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「連続…殺人」


「えぇ、あの街で起こっている不可思議な事件です」


休み時間の教室で真春と雅信が朝の続きを話し合う。


「誰かに…殺されたってこと?」


「分かりません。ただ、同時並行で街の警官と暴力団関係者が同数殺される、という事件が起きています」


「同数?…何のためにそんな回りくどい」


「ここからは仮説に過ぎませんが、あの街では最近異界の道具の使用反応が頻発しているそうです」


「まさか…!?」


「…調べてみましょうか」


結論は出た。


そんなことはつゆも知らず伊有は止まない雨の向こうで復讐を遂行するツキハのことを考えていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ