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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第63話 戦争の終結

第63話 戦争の終結


「…ここは」


アルリエスが眼を覚ますと、


「気がついたかしら」


奈美が見下ろしていた。


「ヒッ」


その瞬間思い出した


先ほどまでの戦いを。


「どうだったかしら?殺されかけてみて」


先ほどとは違った雰囲気の、自分を倒した少女が顔を覗き込んでくる。


「…痛かった…怖かった」


そう、アルリエスは

生まれて初めて


ー恐怖を味わったのだ。


「あんたが何の考えもなしに、様々な人にやったのはそういうことよ」


正気を取り戻した奈美もまたアルゼンからこの戦争の発端を聞いていた。


「これに懲りたら、あとはちゃんとやれるかしら?」


首を縦に振るアルリエス。


「…これでいいかしら、王様?」


「…ありがとう。…でも本当にいいのか」


戦争を仕掛けた挙句、破れ、息子に『教育』までしてもらう始末。


「いいんです。私たちの目標は、死者を出さないこと」


霧子が答える。


「これで、戦争は終わりです」


そう、宣言した。


「…あぁ、我々の負けだ。今後一切、人間界には手を出さない」


「あぁ、そこのドラ王子」


愛羅がアルゼンの宣言を遮る。


「何かを殺したくなったらいつでも呼びな。何度でもぶっ殺してやるから」


そう、誰もが震える殺気を放ちながら、満点の笑顔で言ってのけた。


「…では、門を開けよう」


そういうと、闘技場の真ん中に黒い穴が空き…


「坂上くん!真春ちゃん!」


「エヌリエス…!」


各々が声を上げる。


「申し訳ございません…アルゼン王私を含めた5人、全員があの少年に」


「まさか…いや、私もあの少女に敗れた。彼女たちは本当に強かった」


「かあ様…お久しぶりです…」


「!アルリエス!どうしてあなたがここに、そんな!」


「かあ様…ごめんなさい」


「!?…な、何のことを」


「僕はどんな相手かも考えずに、自分が楽しいから、たくさんの人を殺しました。それがどれだけこわくて痛いことなのかも知らず…」


「なにが…あったんですか」


「…アルリエスも敗れた」


「そんな…そう、ですか」


「私たちが弱かったせいで、アルリエスに伝えるべきことが伝えられなかった」


「今度からは大丈夫ですよ」


奈美が3人の会話に割って入る。


「身を以て1つのことを知ったなら、あとは言うことを聞けるね?」


アルリエスが頷く。


「いい子。…最終的に子供を導いてあげられるのは親だと思います。紆余曲折はあれど、まだその子は精神的には赤ちゃんみたいなものです」


その言葉を聞きながら、雅信が細い眼をさらに細める。


「…こんなことがもう起こらないように、頼みますよ」


「…あぁ、すまない。君たち子供に戦争を仕掛けたにも関わらず…」


「ありがとうございました」


エヌリエスが深く頭をさげる。


「…ありがとよ。それと、すまなかった」


アズィールが真春に頭をさげる。

他の治療を受けた3人も同様に。


「…いいわよ。私も別にけがはもう治ってるし」


「真春さんの心の広さに感謝して一生過ごしなさい」


「こら」


毒づく雅信を真春がはたく。


「では、そろそろ」


「あぁ…本当に迷惑と世話をかけた」


「他の国にまでかかる影響力は期待してない。だけど少なくともベンダーニアの魔人たちには、今回の約束守らせてくれよ」


「神に誓おう、イレズマ」


「…じゃ、行こうか」


そう言って霧子を先頭に、アルバイター達穴をくぐった。


「さようなら、達者でな」


そう言いながらヒラヒラと手を振る愛羅を最後に、門は閉じた。


人々の平和を脅かしかねない、魔界の王国と、少年少女の戦争は誰にも知られることなく、ひっそりと、そして拍子抜けするほど終わりは平和的に幕を下ろした。

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