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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第59話 戦争の火種

第59話 戦争の火種


「いやーキツイキツイ。手強かったわあ」


そう言いながら健が、倒れふす魔人を背に奈美達の元に帰ってくる。


「お疲れ様!怪我は大丈夫?」


彩香が声をかける。


「ん、大したことないっすよ」


「これで5戦4勝1分け、11戦だから次勝てば引き分け以上は決まるわね」


「気を引き締めていかなきゃ…って、何で!?」


霧子が戦績をまとめたところで、奈美が素っ頓狂な声を上げる。


なぜならば


フィールドに立っていたのは


ベンダーニア国王・アルゼンであったから。


「あーん?どういうことだ…?」


「何ということはない」


愛羅の疑問に答えるようにアルゼンは口を開いた。


「ここからの6戦、私が全勝するということだ」


その言葉か、アルバイターズ達の怒りを誘う。


「言ってくれるじゃねえか…俺にいかせてくれ」


一郎太が名乗りをあげる。


「あ、ちょ、ちょっと!!」


そしてそのままずんずんとフィールドへと足を運ぶ。


そしてイレズマが勝負開始の合図をした次の瞬間。


真っ直ぐに歩いていたはずの一郎太は



ドサリ



事切れたかのごとく倒れた。


「湯島くん!!」


霧子が声をあげる。


士郎と奈美、愛羅が駆け寄る。


一郎太は目を開けたまま倒れていた。


首筋に赤く細い痕を残して。


「お前…次は私が!!」


「まあ待て奈美」


気炎をあげる奈美を片手で制し、


「私とやろうぜ、王様」


愛羅がそう告げた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「魔界の国の王様っていうからよ」


奈美と士郎に一郎太を運ばせてから、愛羅が口を開く。


「てっきり魔法やら何やらで戦うのかと思ったら、バリバリに格闘屋じゃねえか」


「・・・」


アルゼンは答えない。


「あの赤い筋、あのスピードで指一本で相手を落とす。並の芸当じゃねえ。だからこそ解せねえ。なぜ殺さなかった」


「…その必要はない」


「これは戦争だぜ?随分甘いな。…それとも、殺せない理由でもあるとか」


アルゼンの片目がぴくりと動く。


「…まあいいや、その辺の理由も含めて」


足を肩幅に開き、愛羅が脱力する。


「勝ってから聞こう」


アルゼンも足を開き、拳を前に構える。


「はじめ!!!!」


イレズマの声に


ドオッ!!


アルゼンが地面を蹴り


ゴォン!!!!!


目にも留まらぬ速さで、愛羅の胸に拳が入る。


「うーん」


「!!」


アルゼンは距離を取る。


血塗れの拳を隠しながら


「なんというか、あいつほどじゃないなあ。こっちから殴ろうって感じにそそられないし」


アルゼンの額に汗が浮かぶ。


「まあいいや、全然悪くはない。さて行こうか」


愛羅が歩き出す。


ドゴン


その次の瞬間にはハイキックがアルゼンの胸に叩き込まれる。


ギリギリで腕を組むも、その防御ごと後ろへ吹き飛ばされる。


慌てて立ち上がり、構え直す。


しかし愛羅は追撃にこない。


「来なよ、あんたなら、相手になってあげる」


アルゼンが走り出す。


ゴンゴンドォンゴォン!!!!!


凄まじい速さで、拳や脚を繰り出す。


それをあくまで避けずに、腕や脚で受け止める。


まるで鐘を鳴らしているかのような、金属と金属がぶつかるような音がフィールドに響く。


アルゼンの拳や脚が少しずつ傷つく。


愛羅はなおもうっすらと笑いを浮かべていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「アルゼン様でも…あの女何者なんだ!!」


ベンダーニア側の控え場所で、フィールドをにらみながら、アルゼンの側近が声を漏らす。


そこに伝令が駆け寄る。


「報告します!!」


切羽詰った口調で伝令が述べたのは


「アルリエス様が牢を破りました!!!!」


「なっ!」


側近の背中に寒気が走る。


「どういうことだ」


問いかけるよりも早く『答え』は現れた。


伝令が血を吐いて倒れる。


「ねえねえ」


『答え』がつぶやく。


「遊ぼうよ」


側近が声を上げることはなかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(これほどまでとは…!!)


アルゼンは生まれて初めて「攻めあぐねる」という感覚を味わっていた。


王族に生まれて幾千年、平和を愛していたものの、武術、魔法共に訓練は怠らなかった。


武術はおろか、魔法すら通用しない相手が、目の前にいた。


その瞬間だった。


言葉では形容しがたい感覚に2人、いや、その場にいた全員が襲われた。


お互いに距離を取り、辺りを見回す。


愛羅は新しい脅威に対して、自身も殺気を立てた。


アルゼンは、この感じに覚えがあった。


そしてその覚えは的中する。


「父様」


殺気とも、邪気とも言えないオーラを吐きながら


「お久しぶりです。何してるんですか。僕も混ぜてくださいよ」


アルリエスは現れた。

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