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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第58話 真春の決断

第58話 真春の決断


「…ここは?」


「よかった柊くん!目を覚ました!」


柊が目を覚ますと奈美が自分の顔を覗き込んでいた。


「霜村さん…?!?た、戦い!俺!!今!!」


勢いよく上半身をあげてあたりを見回す。


激痛が体を走る。


「ち、ちょっと!無理に動いちゃダメ!」


顔をしかめながら、周りを見回す。


士郎を除くみんながこちらを見ている。


少し首を伸ばすと士郎がフィールドで戦っているのが見える。


「そっか…俺…また負けて…」


「負けてねえよ」


愛羅がそう呟く。


「気休めはよしてくれよ」


「本当だよ、鍵瓜くんが今戦っているのはさっきのと違う人だし」


彩香もフォローする。


「…え?」


痛む体を無理矢理立ち上がらせる。


確かに士郎は別の魔人と戦っていた。


「…勝ち抜いた?」


「ちげーよ、最後の最後にお前の盾があいつの攻撃をはじき返した…いや、相手から受けたダメージを全て…かな?」


「え…?」


「俺もちゃんと見えたわけじゃねーけど、

お前が倒れた瞬間に、盾がピカって光って相手に向かってビームみたいなのが出て、相手も倒れたんだよ」


「まさか…」


「そうです」


「お、オーフェンス!」


柊の後ろに女神が現れる。


「これが私の力の1つ、『死の反撃』あなたの意識が発動ギリギリまで途切れなかったからこそあれだけの力を出せました」


「ぶ、ぶっそうな力だな…」


「名前こそアレですが、なんにせよあなたは本当に最後までよく頑張りました。あなたは、負けていません」


「…ありがとう」


少し照れ臭そうに柊が頭をかく。


「おーおー、目が覚めたか、怪我の感じはどうだ?」


なんてことを言っている間に、士郎が敵を倒し、帰ってきた。


「は、はやっ!!…身体中痛いけど、別に大したことねえよ」


「お帰り士郎くん」


霧子が士郎を迎え入れる。


「もう一戦ぐらいやれそうだが、そこのお姉さんが睨んでくるんで帰ってきたよ」


「別に無理に帰って来いとは言わねえが、まだ負けてねえしな」


「おっし、じゃあ俺行くわ」


健の手にハンマーが現れる。


「行ってらっしゃい、無理するなよ」


一郎太が肩を叩く。


「おう、準備して待っててくれ」


バトルフィールドに足を踏み入れた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「魔女王様ってのはすごいですねえ」


空中で大立ち回りを見せる、雅信とエヌリエスを見ながらアリスが呟く。


「普通に体術もなかなかじゃないですか」


あれで『なかなか』なのか、と思いながら真春も空を見上げる。


愛羅に勝るとも劣らない勢いで雅信へと攻撃を仕掛けるエヌリエス。


(なぜ…なぜだ!?なぜこの男は…折れぬ!?)


先程からエヌリエスの攻撃のほとんどがクリーンヒットしている。


確実に急所を捉えて拳や脚を叩き込んでいる。


それでも


「あぁぁぁぁ!!!!!」


エヌリエスの拳が地面から飛び上がった雅信の顔面に突き刺さる。


その腕が


「やっと…捕まえた」


ゴキリ


「い゛っ」


「投げ飛ばしても空を飛べるあんたにはあんまり意味がない」


腕を掴んだままエヌリエスの腹に蹴りが入る。


「がはあっ」


完全に体勢を崩したエヌリエスを掴んだまま、地面に叩きつける。


「さて、と」


そして



その首に



手をかける。



「おしまいです。ここで」


雅信の腕に血管が浮かび上がる。


グッ


「やめろおおおおおおおお!!!!!!」


その瞬間、

気を失っていたはずのアズィールが

目を覚まし、その光景に絶叫する。


腕で身体を引きずりながら、雅信に近づく。


「お願いだ…かあさまは、かあさまだけは見逃してくれ。私の…もう片方の腕をちぎってもいい、こ、殺してくれたっていい。頼む、頼む、お願いだ」


「アズィール…」


「私も…だ」


石畳に叩きつけられ、気を失っていたはずのセルネアもヨロヨロと立ち上がって呟く。


「まだ、私はやれるぞ…かあ様を離せ。私を…倒してみろ…」


それを見た雅信はひどく困惑した表情をしていた。動きが止まり、首の締め付けが緩む。


「そう…言われても」


と、エヌリエスの首を締めていた右手に、何者かの手が触れた。


「もういいよ、もう十分だから」


真春の手だった。


「でも…」


「私は今元気だから、やり返すにしたってやりすぎだよ。もう大丈夫、ありがとうね」


「でも…だって」


口ごもりながらもエヌリエスの首から手を離す。


崩れ落ちるエヌリエスにアズィールとセルネアが近づく。


「あ、ありがとう、ありがとう」


アズィールが真春に頭を下げて礼を言う。


「…雅信くん」


「はい?」


「この人たち治してもいい?」


「「「「!?」」」」


真春以外の全員が目を見開く。


「治すってそんな、あなたに怪我させたんですよこの人!」


雅信が驚きながらも答える。


「うん、でも、治したいんだ」


「…そう思うなら別に私が何か言うことはありませんよ」


「うん、その、治してもいい?っていうのは治してもしこの人たちがまた戦おうとしたらまた倒してくれる?って言うこと」


「…それは別にいいですけど」


「ありがとう。坂上くんは向こうで休んでて」


そう言って、アズィールのもとにしゃがみこみ


「なんで…あんた、私が殴って…」


ちぎれた腕を無理矢理にくっつけ、治療術を開始する。


「…私のために彼が誰かを殺すって言うのに、私自身が耐えられないだけ。あなたたちのためじゃない」


そう言いながら、腕が少しずつ少しずつくっつく。


「…こんなものかしら。動くかどうかはあなた次第だけど…」


そういうとアズィールは指を滑らかに動かしてみせた。


「十分だ…あ、ありがとう」


「そう、じゃあ次ね」


セルネアの方に近づき、後頭部に手をかざす。


「ありがとう…」


そして、倒れてる2人にも治療を施す。


「私は…大丈夫よ」


エヌリエスが真春に言う。


「そう…じゃあ聞かせてくれませんか?」


真春がエヌリエスに問いかける。


「こんな戦争を始めた理由を」


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