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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第57話 オーフェンスの神力

第57話 オーフェンスの神力


ゴォン!



ゴン!


ゴゴン!!


「おおぉおおおぁ!!!!!」



「おらぁぁぁぁぁあ!!!!!」


円形のバトルフィールドの中心で、2人の男が自身の武器を振り回しながら雄叫びをあげていた。


盾と槌、ハンマーとシールドがぶつかるたびに、鈍い音が鳴り響く。


「最初の一撃はうまくいなしたが、あのスピードで振り回されちゃあ、対応は後手に回らざるを得ないな」


愛羅が冷静に分析する。


「す、少しずつ押されているように見えるんだけど」


奈美が不安そうにつぶやく。


「どうしても防御、っていう武器の特性上そう見えるよな。まあ実際押されているとは思う。あらゆる方向から落ちてくるハンマーをどうにか受けてる感じだしな」


士郎が答え


「…次の準備しとくわ」


と健が応じて立ち上がる。


「…見てあげよう」


特訓に付き合わされた彩香が、ぽつりと呟いた。


「まだわからないよ。最後まで、信じよう。無理はしないように言ったから、きっとまだ、山藤くんは戦ってるんだよ」


「…そうだな、悪い」


健は座り直し、フィールドを見つめた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(いてぇはえぇ、いてぇ!)


雨のように降るハンマーの攻撃を受けながら、柊は考える。


(やばい、このままだと!)


ゴン!!


ひときわ大きい激突の後、アランテイルが距離を取る。


「いやー、すげえよ。おまえ」


ハンマーを肩に担ぎながら、アランテイルが柊を賞賛する。


と、そのハンマーが赤く、煙を上げ始める。


「…俺のハンマー『レイドテイル』は何度かぶつからないと本気を出してくれねえんだ」


柊の額に汗が浮かぶ。


「久しぶりだよ、本気を出すのは」


アランテイルがハンマーを構え直す。


「行くぜ」


紅く光るハンマーが、柊に迫る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぁぁぁあ!!!!」


エヌリエスの持つ杖から光が放たれ、雅信の体を貫く。


それを構わず雅信はエヌリエスに近づくが、バリアのようなものが彼女を包み、その拳が弾かれる。


また距離をとって、地面を蹴り、バリアに連撃を叩き込む。


その連撃は少しずつ、少しずつバリアにヒビを入れる。


「あ、あの…」


そんな様子を見ながら真春が目の前のアリスに尋ねる。


「?どうかされました?」


「あの…坂上くんの力は、アリスさんの力によるものなんですか?」


「いえ、もちろん人間以上の力を出せてるのは、私の能力によるものですけど…技や動きはもともと旦那様が持っていたものです」


「そ、そうなんですか…?」


「ええ、戦いの神たる私の力を除いても、旦那様は非常に強いですよ。あの時、あなたをあの魔人の元へ助けに言った時もあの人変化してませんでしたし」


「そ、そういえば…」


フープスピアとの戦いにおける雅信の姿は、いつもの通りの人間らしいものだった。


バリィッ!!


謎が深まる一方で、雅信のかかと落としがついに、エヌリエスのバリアを破った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(やばい!これは!まずい!!)


先ほどとは段違いの重さ、スピードの攻撃を受けながら、柊は後ずさる。


(これは、負け…死…いや降参…)


腕に力が入らなくなり、すこしずつ、すこしずつ意識も弱くなっていく。



(相手が強いですね)


(お、オーフェンス!?)


そんな意識に、女性の声が響く。


(ですが、死んでは行けません。降参しても構いません)


(じ、じゃあ)


(ですが、気持ちだけは、気持ちだけは負けてはいません)


(気持ちだけ…?)


(気持ちさえ負けなければ、私はあなたにフルの力を貸せます)


(…)


(ですから、前へ!行くのです、柊!)


(ちくしょー…わけわかんねえわけわかんねえ)


「おおおおおぁぁぁおおおおおおあ!!!!」



ただ受け止めるだけだった盾がいきなり勢いをつけて槌に激突した。


驚きにアランテイルが後ずさる。


そしてその腕から一筋の血が吹き出る。


「いいね、おまえ強いよ!!」


笑いながらアランテイルが走り出す。


柊も力のない腕を、脚を、体を引きずりながら、それでも走り出す。


わざとではなく、その口元は緩く笑っていた。


「おおおおおおぉおおお!!!!!!」


「ああああああぁあああ!!!!!!」



ドゴォオオオオン!!!!!



バトルフィールドの真ん中で、ひときわ大きい激突が起こる。


果たして


アランテイルは、あらぬ方向に曲がった片腕をかばうように、肩で息をしながら柊を見つめた。



オーフェンスの盾は、割れることもかけることもなく、立っていた。



しかし、その使用者は、盾の後ろで膝をつき、倒れた。


「まだ、だ。まだ…」


腕で体を引きずり、もう一度、盾に向かい、立ち上がろうとする。


そして、肘からまた崩れ落ちる。


アランテイルがそれを見ながら


「ほんとうにおまえ、すげえよ」


と、ハンマーを構える。そして


ゆっくりと歩き出す。


「ま、待て!勝負あー」


イレズマが慌てて試合を終わらせようとする。


その瞬間


オーフェンスの盾が光る。


「!?」


ゴオオオオオオオッ!!!!!



その盾から、まばゆいばかりの光線が、アランテイルを襲った。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


長く放たれ続けた光線はアランテイルをボロボロにした。魔人は膝をおり、同じく倒れた。


「…し、勝負あり」


イレズマが終わりを告げた勝負は、初めて引き分けで終わった。










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