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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第50話 長く短い1週間

第50話 長く短い1週間


ドッ


「かはっ」


奈美は咳き込みながら、膝をついた。


「悪くない、少しずつ良くなってるとは言えるが…まだまだだねえ」


「どこらへんが…今はダメだった?」


「左の蹴りで意識をそっちに向けて、右で私を引っ張る。そこを左で殴る。悪い策じゃないけど、引き寄せるのは、相手のバランスが崩れてたり、意表をつければいいが相手を自分の懐にいれるリスクがある。現に私からはカウンターを食らった。そこかな」


「なるほど…ありがとうございました」


「おし、次!」


「お願いします」


そう言って一郎太がシミュレーションルームに入った。


「毎日毎日頑張ってるのね…」


「あ、真春ちゃん」


そう言いながら待合室のような部屋に真春がはいってくる。


「念のために見ておくわ」


「いいって!こんなのどうってことないよ」


「思わぬダメージがはいってるかもしれないでしょ!」


そう言って真春は奈美の服をめくる。


右の脇腹がほんのりと赤くなっている。


「…たしかに赤くなってるだけだけど…一応治癒の術をかけておくね」


「大袈裟だよ〜〜」


そう言いながらも、すでに真春は術を使っていた。


「ありがとうね」


「いいのよ、これしきのこと。一旦また保健室に戻るけど、なんかあったら呼んでね」


「はーい!」


そうして真春は部屋を後にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「お邪魔しまーす」


「はーい。…って坂上くんか」


「何ですかその残念そうな声は」


「別に残念とは…。あら、その右目どうしたの。眼帯なんかして」


「あ、これですか?実はアリスさんの神器の中に『真紅の眼帯』と言うのがあるらしくて。それをつけると片目を塞ぐ代わりに再生能力が高まるらしいんですよ」


「な、なるほど?」


「だからそれをつけて、今回戦おうと思うんで、片目見えない時の距離感や視野に慣れるために、練習中なんです」


「そう言うことね」


「真春さんこそ何を?」


「私は…その、戦争に向けて一人一人に傷薬の準備を」


「うわ、ありがとうございます。すごく助かります」


「…そう言ってくれると助かるわ」


「…何かありましたか?元気がないようですが」


「私、今回、お留守番なのよ」


「ええ、聞きました。真春さんは戦うためにいるんじゃありません。当然です」


「それに、他のみんなに比べて、その…選ばれたわけじゃなく、アクシデントでこうなっちゃったから、異界…適性度?が低いらしくて」


「あぁ、なるほど。ぶっつけ本番でいきなりが魔界なんて、何が起こるかわかりません。行くべきではないですよ」


「そう、そう、よね」


真春は俯いていた。


「…気にする必要はないですよ」


「ありがとう…なんか、正直ホッとしてるのよ」


「ふむ?」


「行かなくていいんだ、って。だけど奈美ちゃんや、湯島くん、原墨くん、山藤くんまで今日も天海さんとトレーニングしてるし、金谷くんはずっと射撃場にこもってる。鍵瓜くんも戦略を立てるのに一生懸命だし、霧子さん、彩香さんや伊有さんも新しい技を作ろうと頑張ってる。あなただって準備をしてる。それなのに…私は」


「後ろめたい、と?」


「それもそうなんだけど、そんなみんなが少しでも怪我するたびに、慌てて治療することで許されようとしてる」


真春はさらに下を向いた。


「私は卑怯も…!?!」


グイッ


言葉を最後まで言い切る前に、雅信の手が、真春の頬を包み、無理やり前を向かせた。


「真春さん」


「ふぁい」


「あなたは卑怯者なんかじゃない。むしろ、やらなくても良かったはずの事に巻き込まれて、こんなにも仕事をしてくれている」


雅信の手が離れる。


「安心してください、みんなでちゃんと帰ってきますから。怪我をしたら、お願いしますね」


雅信の笑顔を見て、真春も少し頬を緩める。


「そうだね…頼むよ、坂上くん」


「ええ、任されました。っとそうそう、これ悪いんですけど持っててくれません?」


そういうと雅信はポケットから小さな布袋を取り出した。


「なに?これ?」


口はきつく結ばれており、なかに何か瓶のようなものが入っている感触がある。


「御守りです、私たちが無事に帰ってこれるように。大事に持っててくれませんか?」


「…わかったわ。ちゃんと持っておく」


「お願いしますね」


そう言って雅信は保健室を去った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そろそろ休んだらどうだい?士郎。頭がパンクしちゃうよ」


「あー、そうだな…休憩にするか…」


そう言って士郎はペンから手を離す。


「ルナ、これで何人目だっけ?」


「今ので湯島くんが終わったから、あと2人だね!」


「そうか…」


「お疲れ様。あと少しだ」


「あぁ…」


そう言いながら自分の書いた紙の束を覗き込む。


「…悪いサン。あと1人追加だ」


「別に僕は構わないけど、大丈夫かい?能力を使いつづけると、頭痛くなっちゃうよ」


「今んところなったことないから、大丈夫」


「やっぱり士郎はすごいよ。で、誰を調べるんだい?」


「ーーーーー」


「…なるほどね、そっちも調べておく必要はありそうだね。了解」


「あぁ、頼む」


そういうと、サンサンは士郎の頭に手をかけた。


士郎のペンがまた走り出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はあっ!」


「っ!!ふんっ」


「わあ!?」


霧子が彩香の拳を受け流し、腕を掴み投げ飛ばす。


「うう〜〜またやられた〜」


「でも動きはすごくいいですよ。彩香さんセンスがあります」


「ありがとう〜〜、どうにもうまく行かないなあ…」


「必殺技…ですか」


「なんかこう1つ何かあると強いかなあって。闇雲に引っ掻いたり、叩いたりじゃ芸がないし…」


「彩香さんは力が強いタイプだから、それを生かした何かを考えられればいいんですけど…」


「逆に早く動くのは得意じゃないのよね〜〜…うーん、もう一回お願いできる?」


「ええ、もちろん」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

神社の裏手に広がる、鬱蒼とした森の中にで1人の少女が立っていた。


「…本当に…斬れた」


「ええ、あなたが、あなたの手で切ったのです」


「でもどうして…こんな竹刀で…」


彩香の前には大きな岩が真っ二つになって転がっていた。


「…今の感覚を忘れないようにしてください。自ずと仕組みはわかるはずです」


「…はい!!」


彩香は次の岩へと向かった。




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