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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第49話 宣戦布告

第49話 宣戦布告


その男は神社の階段の下で誰かを待っていた。

その男はごく普通の出で立ちをしていた。



それにもかかわらずどこか異質さを感じさせた。


「あら?御機嫌よう」


「っ…」


「おやおや、答えてくれないのですか」


「誰だ」


「安心してください、私はオッドベノン様のような力はありませんから」


「…!!」


「聞き覚えがあるでしょう?」


「お前は誰だ…!?」


「私は第3次界、魔界の小国、ベンダーニアの使者マデウス。本日はあなた方に」


そこでマデウスと名乗る男は言葉を切った。


「宣戦布告をしに参りました」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「宣戦布告ってどういうことよ!?」


「ご丁寧に書簡まで残していったわ…」


「…読めな…あれ読める」


「私たちは今アルバイターになってる間、どの種族とも会話が出来るように勝手になってるわ…で、なんて書いてるか、分かるかしら?」


「なになに…その、ベンダーニアとかいう国の食客であるオッドベノン…オッドベノン…!?」


「そういうことになる」


「イレズマ様!」


「で…そのオッドベノンを傷つけた、傷つけたあ!?あっちから手を出してきたのに」


「今まで何度か人間界に来ては観光程度に問題を起こさずに静かに帰っていったオッドベノンがなぜ今回あんな騒ぎを起こしたのか…それが分かったよ」


「この争いを引き起こすため…!!」


「火種の原因にするためってわけだね」


「で、でも戦争なんてそんな…!!」


「戦争、というわけでもないよ」


「で、でも一国と私たちたった12人ですよ!?」


「その紙の続きを読んでくれないか」


「えっ…えっと…5番目の月…5月の最後の日曜日に…ベンダーニアで10対10の決闘式で勝負を分ける…ってことは」


「ベンダーニア代表の10人と、我々の代表10人で戦うということだ、勝ち抜き式で」


「それで…はあ!?べ、ベンダーニアが勝った場合、日本に攻め入る!?な、なんで!?」


「日本という国の土地と人間が目当てらしい。ただこれもちろんありえないほど理不尽な要求なんだが、何かがおかしい」


「おかしい…というのは?」


「要求が弱いんだよ」


「よ、弱い?これで?」


「もちろん理不尽であるという前提は消えない。ただこれが、他の国だったら問答無用で進行、又は戦争に負けたら世界征服なんてことをやりかねない」


「そ、そんな」


「ただ、魔界からこちらに来るような必要は本来ないんだよ」


「ど、どうして」


「まずもって魔界は人間界の何十倍も広い、未開の土地もまだまだあると報告が入ってる」


「は、はあ」


「そして、もし、魔界の住人らしく闘争を求めるのならば…」


「周りに山ほど相手がいる」


「その通り、愛羅ちゃん、こんにちは」


「あ、愛羅さん」


「楽しそうな話してるじゃない…」


愛羅は今までで1番いい笑顔をしていた。


「いいじゃん。わたしが全部ぶち壊してきてやるよ」


「そ、そうは言っても」


「ただそんな魔界にあってベンダーニアは過去1000年間争いを仕掛けたことがない」


「え?」


「あ?」


「じゃあ…なんで…」


「それは分からない。今わかるのは、彼らの指定した日時に行くか、行かないか。行くならば…」


「当然行く。舐めたことした落とし前をつけさせてやる」


「あ、愛羅!!」


「…もちろん、行かなければどうなるか分からないから…行くしかない」


「だから後1週間…」


「準備するしかない…ってことですか」


「そうなるね」


「…とりあえず今日来た人たちに事情を話してみます」


霧子が苦々しくそういった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「行かなきゃどうにもならないってわけでしょう?」


意外にも伊有の反応はあっさりしたものだった。


「どうしようもない…のか、ならば、やることは1つだな」


健も同様だった。


「後1週間…か。ちょっと部屋を1つ貸してくれ。ありったけの戦略を立てる」


士郎は既に行動を開始した。


「そういうことですか…。しょうがないですね」


雅信はただ落ち着いて返事をした。


「戦わなきゃ…いけないんだね」


彩香も意外にも落ち着いていた。


「そ、そんなの…き、給料上げてくれよ?」


柊の声は震えていた。


「…わかった、愛羅さんとこ行ってくる」


一郎太は深く息を吐いてからそう答えた。


「仕方ないよね…わたしは、やるよ」


奈美もまたはっきりと答えた。


そして、愛羅はこみ上げる笑いを堪えられないでいた。


ただ1人真春だけが


「そ、そんな、ど、どうして、せ、戦争なんて」


明らかに怯えていた。


「戦うのは10人です…真春さんは非戦闘員なのでこちらで待っていていただけますか?」


「え…あ…」


真春の頭には自分だけは戦わなくていいという安心と、自分のみが安全な場所にいるという罪悪感に苛まれた。


「わ、分かったわ。留守番…頑張るわ」


真春はどこか歯切れの悪い返事をした。


霧子もまた他のアルバイターとは違い、苦しげな表情を浮かべた。


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