第48話 VS テスト!!
第48話 VS テスト!!
「あぁ、あれは肩を外したんです。折れても案外早く治るみたいだから、別の方法をとるか、と思いまして」
人でごった返す廊下の隅で、愛羅と雅信が話している。
「…学校だからって無理に口調変えなくていいんじゃ無いですか?」
「誰が聞いてるかわからないでしょう?」
「誰が聞いてても内容が内容なのでどうしようもない気がしますが…」
「まあ…それもそうか。…あれは『女の子が戦う必要はない』って頑固な父親が、唯一教えてくれた護身術だよ。正直、意図してというより、咄嗟に出たら効果ありだったって感じ」
「なるほど…いわゆる脱臼ですか。経験したことがない痛みだったせいで『治れ』という意識を向けるのが遅れ、慌てて左も出したら、そちらも外されたわけですね」
「まあ、そういうわけ。最後は確かに悪手だったかも。…とはいえ、それ以外は本当にいい戦い振りだったぜ」
「…満足しましたか?」
「あぁ、もちろん。別のやつに相手してもらうなんてとんでも無いくらいに楽しめたよ」
「それは何より」
「…こっちも1つ聞きたいことがあるんだけどよ」
「はい?」
キーンコーンカーンコーン
「っと、5分前か。続きは放課後、城波神社で」
「はーい。じゃあテスト頑張ってくださいね」
「お前もな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「終わったァァァァァァァァァァ!!」
そう言いながら奈美が大広間へと入ってくる。
「お疲れ様、奈美。高校入って初めてのテストはどうだったかしら?」
すでに部屋にいた霧子が声を掛ける。
「難しかった…」
「あらあら」
「終わったァァァァァ!!!」
同じような掛け声とともに柊が部屋に入ってくる。
「柊くんまで…」
やれやれといった感じで霧子が笑う。
「お疲れ様です〜〜」
「その声は健くん!テストどうだった!?」
「ど、どうもこうも、まあ普通かな。よかないけどそこまでひどくも無かったと思う」
「そっか〜」
「こんにちは…」
元気のなさそうな声とともに、陽太が入ってきて、そのままソファに倒れこむ。
「よ、陽太くん」
「聞かないで霧子さん」
起き上がらないままそう答える。
「おーおー、久しぶりに賑わってんなあ」
「あ、愛羅!」
「で、そこらへんで転がってる奴らはテストどうだったんだ?」
「聞かないでって!!」
泣き笑いのような表情をしながら陽太が噛み付く。
「愛羅はどうだったの?」
「別に、まあ各教科通して2、3問よくわかんないのがあったが後はなんとかなったよ」
「え?」
「え?とはなんだ、え?とは。別に私は脳筋キャラじゃないんだから」
「愛羅さんすごく頭がいいのよ」
書類の整理をしていた霧子が答える。
「幸いなことに、模擬戦からテストまでの1週間、仕事の依頼も入らなければ緊急の事件も起きなかったんだけど、愛羅さん毎日ここに来てくれて、一緒に勉強させてもらったの。分からないこと教えてもらったりして」
「私としては残念なことこの上ないけどな。あ、あと春近は部活で今日来ないって」
「私もここで勉強すればよかった…」
落胆する奈美の後ろから、また人が入ってくる。
「こんにちは〜、お久しぶりですね」
「雅信くん!…と、士郎くんはいいや」
「なんの話だよ」
「どうせすごい点取ってくるもん!」
「なんだテストか」
「テスト明けなんで湯島は今日部活行くそうです。真春さんも、今日お母さんと出かけるとかで」
「はーい」
鞄をロッカーに入れ、イスに腰掛ける2人。
「じゃあ一応聞くけど、テストどうだったのよ」
むくれながら奈美が尋ねる。
「まあ、悪くはないな」
「お、意外に普通の反応」
「なんだよ」
「考えた限りで数学と英語満点で悪くはないってどんな神経ですか」
雅信が突っ込む。
「はあ!?いいじゃん!?すごく!!」
「ただ流石に国語は満点の自信がないな、現代文の方が特に」
「前提が満点ってどういうこと…?」
「ほんとですよ」
奈美の言葉に雅信が頷く。
「雅信くんは!?」
「うーん、逆に国語は出来たんだけど、英語と数学はあんまり」
「難しかったよねえ!」
「もちろん。新しくやったことがたくさんあったから」
そんなやりとりをしてる最中
「終わったよおおおおああ」
同じような悲痛な叫び声をあげながら彩香が入ってきた。
その後、その日は特に仕事は入らず、解散となった。
次の日、見事なまでの先生の採点スピードにより、全生徒に答案と順位表が渡った。
全員集合した城波神社では、盛り上がったことはこの上なかった。
☆アルバイターズ一学期中間テスト結果☆
(1学年240人)(カッコ内は学年順位)
1位 鍵瓜士郎 (1位)
2位 天海愛羅(8位)
3位 門矢真春(15位)
4位 神城霧子(21位)
5位 原墨健 (36位)
6位 坂上雅信(65位)
7位 春近伊有(72位)
8位 湯島一郎太(76位)
9位 佐藤彩香 (137位)
10位 金谷陽太 (162位)
11位 下村奈美 (192位)
12位 山藤柊 (193位)
「ビリじゃない!」
「だーっくそまけたぁ!」
「1つ違いの上に1点違いよね」
「次は勝つ!」
「受けて立つ!」
「私も抜かされないよう頑張る!」
「彩香ちゃん、上を見ていいんだよ…?」
「ヒッ」
「愛羅さん頭いいんですね…」
「おー?お前も私を脳筋だと思うのか春近ァ」
「そっ、そんなことは!!」
「国語だけ結局10位だったわ」
「あ、僕国語9位でしたよ」
「すごいな雅信」
「英語平均点だったんですけどね。湯島だって数学8位じゃないですか羨ましい」
「俺も英語がな…」
「ま、まあ大会前で弓道忙しかったし仕方ない!」
「剣道も大会前だったんじゃねえか?」
「原墨、そういうのは言わなくていいんだ」
「また今度勉強会でもしますか」
「士郎くん、一郎太くん数学教えて!!!」
「…とりあえずテストのやり直しから今日やってみるか」
「そうだな、一郎。とりあえず見せてみろ」
「「「「お願いします!!!」」」」
「真春さん頭いいんですねえ。すごいですねえ」
「…まあ悪い気はしないけど上に2人もいるとねえ…」
「あれは片方は化け物で、もう片方の愛羅さんとはそこまで点数的には離れてないじゃないですか」
「まあ…そうね」
「今度英語教えてくださいよ」
「…いいけど」
「やったあ」
模擬戦が嘘のように
彼らは普通の高校生のように
放課後を下らないことに費やした。




