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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第43話 健 VS 柊 2

第43話 健 VS 柊 2


かたや大きなハンマー。


かたや大きな盾。


両極端な武器を持つ2人は障害物のない闘技場のフィールドで対峙した。


「柊くんが戦ってるところをあまりみたことがないのですが…」


「うーんまあ、見ての通り盾が防具であり武器だから、ああ見えてバランスよく戦うよ。ただ…」


「ただ?」


不思議そうに聞き返す伊有に一郎太が苦笑しながら返す。


「いかんせん戦うこと自体が好きじゃねえみたいだから、原墨に勝てるとは思えないなあ…」


「原墨くんは見るからに強そうだもんね」


彩香も賛同する。


「特訓しまくってるもんね…」


そう言いながら真春もモニターの前に座る。


試合が始まる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(さて、要はあの盾を避けて攻撃を叩き込まなきゃいけないわけだが…)


ちらりと盾を構え動かない柊を見る。


(あれごとぶっ叩いてぶっ飛ばした方が楽なんじゃねえか…?)


自分でも気づいていなかったが、健は笑っていた。


笑いながらハンマーを構えて走り出していた。


盾にあいた隙間から柊はそれを確認し



震えた。


(なんで笑ってんだ!?)


健はすぐそこまで来ていた。


思わず顔を背ける。



ドゴンッッ!!!


今日一番の轟音を立てて盾と槌は衝突した。


そして



柊は音を立てながら壁へ激突した。


「がっ…はっ…」


盾の後ろで、なんとか盾につかまりながら膝をつく柊。



(痛い痛い痛い…!!!背中…打った!!息が…!!立たなきゃ!!)


全身を襲う激痛の中で、先ほど好戦的な笑みを浮かべていた健を思い出し、必死に立ち上がろうとする。


全身に走る痛みをだましだまし、荒い息でなんとか立ち上がり、追撃に備える。


しかし、柊の息が整ってもまだ、健は動かなかった。


怪しんでまだ隙間から健の様子を伺う。



健の顔は先ほどとは打って変わって


歪んでいた。


よく見ると肩のあたりから血を流している。


柊はパキルの槌の衝撃で全身に相当のダメージを受けた。



と、同時にオーフェンスの盾も、健の両腕を破壊することに成功していた。



それでも健は動き出した。


先ほどのようにハンマーを持ち上げず、ひきずりながら。


また顔は笑っていた。


先ほどのように震えはなかった。


オーフェンスの盾はあの攻撃を受けきれる。


もちろんただじゃあすまなかった。


それでも俺だって負けていない。


そう思い、足に力を入れ、今度はまっすぐ健を見据える。


その顔は




同じく笑っていた。


ゴオン!!!!!!!


先ほどに勝るとも劣らない音ともに槌と盾がぶつかる。


今度は、柊も後ずさるものの壁寸前で踏ん張りを見せる。


一方の健は、


(痛えな…)


完全にハンマーの持ち手を取りこぼしていた。


腕の震えがそれを掴むことをさらに難しくした。


衝撃が全身を走っていた。


足の先まで痺れるようだった。


肩からの出血は先ほどよりも増えていた。


それを確認し、柊は突進を始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「意外にも健くんが負けちゃう…?」


「山藤くんの盾は相当な防御力があるみたいね…」


「あいつは負けないよ」


「!?」


奈美と霧子の話に割り込んだのは、愛羅だった。


「愛羅ちゃん…?でも結構厳しいような…」


「あいつをそんなやわに鍛えた覚えはないよ」


「そ、それもそうだけど…」


そう言って愛羅はトレーニングルームへ続く廊下へ行こうとした。


「ど、どこ行くの?まだ試合中…」


「もう終わるよ、だから、準備」


その後に行われることが、楽しみで待てない、と言った風に愛羅は笑いながら部屋を後にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(こいつ、俺のハンマーは受け切れるとわかって…)


少しずつ、少しずつ盾が近づいてくる。


(最後ぐらい、もう一発…)


健は震える手でハンマーを掴み直し、今度は持ち上げて振りかぶる。


柊はそれを見て、そのまま突進を続ける。



最後の衝突



モニターを見る数名が耳を閉じる。



ゴン!!!!



先ほどよりもいくらか小さい音。



(押し勝った!!!)


盾に伝わる衝撃からそれを察し、柊は盾を持ち上げて、叩きつける。



ドスン!!!!!











「えっ?」


しかし、そこには誰の姿もなかった。


ドッ


柊の脇に、何が当たる。


緩くふるった槌が、柊を捉える。


「今回は、押し負けてみた」


ハンマーを柊に押し当てながら健がつぶやく。


「今思いっきり振るってみてもいいんだが…どうする?」


柊のほおを汗がダラダラと流れる。


「…俺の負けで」



ドスン


気が抜けたかのようにハンマーが地面に落ちる。



「勝負あり!!!!!」


イレズマが試合の終わりを告げる。


模擬戦第4回戦 勝者・原墨健。











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