第37話 一郎太VS彩香 1
第37話 一郎太VS彩香 1
「いてて…」
「伊有さん、目が覚めた?」
伊有が目を覚ますとそこは、真春がいつもいる救護室のベットの上だった。
「あぁ…真春さん。手当をしてくれたんですね、ありがとうございます…」
「それが私の仕事らしいからね…とはいえ神様ってのはすごいわね…普段から回復する力も相当上がるみたい、最後の胸への一撃以外はもうほとんど治ってるレベルよ」
「そうですか…まあ、あれはソードハートさ…ソードハートの武器ですからね。峰打ちとはいえまさに身を以てその力を知りましたよ…」
「少しだけ赤くなってたから湿布だけ貼っといたけど…キュラスが言うには、骨とかは特に折れてないし、跡もなく綺麗が治るって」
「すみません何から何まで…って!次の試合は…!!!イタタタ」
「あぁ、無理はしないの!ほらモニターこっちにあるから…彩香さんと一郎太くん…ね」
「ええ…」
よろよろと立ち上がりながら伊有はモニターを覗き込んだ。
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「はぁぁぁぁ…やだなあ、必要なこととはいえ、味方と闘うなんて…」
開始位置で自分の頬を手で包みながら彩香はため息をついた。
そんな中、何者かがポンと彩香の肩を叩いた。
「…あ、ツキノワ様…」
それは彩香の憑神、見た目はただの大きめな熊のような、ツキノワであった。
「恐れる必要はない、やりたいように、やれることをやればいい」
「はい…」
「友人と闘うのが嫌ならば、早めに負けてしまえ、それもまたよし」
「そう…ですね。そうしちゃおうかな」
「ただし、いつまでもそうできるかはわからんがな」
「え?」
「始まるようだ、準備をするぞ」
「え、あ、はい!」
彩香はシャツの袖をまくった。
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「女の子かあ…やりたくないなあ」
「なんだ、色男みたいなことを言うじゃあないか。似合わないぞ?」
「べ、別にいいだろう!?男は女の子を叩いちゃダメなんだよ」
「だからオッドベノンの時もあんな苦しそうにしてたのか」
「そうだよ…」
同じく開始位置で憂鬱そうな顔をしているのは彩香の相手、一郎太、それをたのしそうにみているのは憑神・ダンシュラである。
「ふむ、ならば負けを認めてしまえばいいんじゃあないか?」
「そ、それは」
「…負けるのも嫌か?わがままだなあ」
「いや…そうだな…さっさと殴られて負けを認めちまえば…」
「え?」
「悪いがダンシュラ、付き合ってくれ」
「あ、あぁ」
同じように一郎太も腕をまくった。
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「それでは2人とも準備はいいかい?」
スピーカーからイレズマの声が響く。
「あぁ」
「はい!」
「それでは…始め!!」
「「神憑変化!」」
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「フィールドは特に隠れる場所のない、闘技場みたいな感じだな今回は」
「単純な戦闘能力をしらべるにはちょうどいいのかもな…今度の試合はどう見る?」
相変わらず2人で観戦する愛羅と健。
「私は…うーん、さっきほど激しくはならねーんじゃないかと思うな。あの2人が味方相手に本気になるとは思えんな」
「なるほど…よく考えればさっきのはだいぶ白熱してたな…」
「どっちかの降参とかで終わっちまうかもな」
「…ありえるな」
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(ある程度の闘いぶりと技を見せて降参すればいいか…)
一郎太はそう考えると、素振りのように何回か拳を突き出した。
(ウォーミングアップかな?)
などとのんきに構えていた彩香の顔の横を
ブォンブォンブォン!
何かが通り過ぎていった。
「さてと、彩香さん手加減はなしだ、本気で来てくれ」
(う、う、う、嘘でしょう!?)
一郎太のハッタリに彩香は足が震えるのを感じた。
(ち、ちゃんとやらなきゃ…相手もやる気なんだ…私だけ手を抜くわけには…!)
「わぁぁぁぁぁ!」
大きな声を上げながら彩香は走り出した。
(よし、これで攻撃をなんとか避けたりして、適当にふっ飛ばされて降s…)
ドオッ!
彩香の渾身のタックルが、一郎太の思考を遮った。




