表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルバイターズ  作者: 野方送理
36/100

第35話 奈美VS伊有 2

第35話 奈美VS伊有 2


「刀を振れるならまだ勝機が有ったろうに、自分から森に入っていくとは」


「…おそらく環境に対する適応、とかも大事だって言ってたからかね?本当に戦う相手は霜村ちゃんの様に甘くはないだろうからねえ」


「はてさてその状況は打破できるかな?」


モニターを覗きながら陽太、一郎太、柊が呟いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(伊有ちゃんの匂いは…)


できる限り音を立てぬ様、木々の間をすり抜けていく奈美。


(こっち……いた!)


闇雲に森の中を走る伊有を奈美の目は捉えた。


奈美は追跡を始める。


(!?後ろから音がする…もう見つけられて)


気付き、振り返った時にはすでに遅く、伊有の眼前には獣の拳が迫っていた。


咄嗟に腕を組み防ぐが、その膂力を持って、弾き飛ばされる。


「ぐっ!」


ドンッ!


すぐ後ろにある木にぶつかり、背中を強く打ち付ける。


「がっ」


全身を走る衝撃に顔を歪めながら抜刀しようと刀に手をかける。


しかし、その手の上に柔らかな何かが覆いかぶさり、抜刀を止める。


顔を上げる間も無くそのまま腕を掴まれ投げ飛ばされる。


(なんてパワー…とスピード!!)


ドォンッ!!


先ほどよりも強く木に背中を叩きつけられる。


「かはっ…」


息が止まる。


よろよろと立ち上がる伊有に奈美が声をかける。


「まだやる?」


「…当然!」


伊有はまた走り出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「根性あるねえ伊有さん」


「ただあのまんま追いかけっこして捕まってダメージ食らってじゃ、負けは見えてるようなもんだな」


「フィールドが悪いとはいえ、このままいけばなっちゃんが勝つでしょうね。何かしら打開してくれるといいんですけど」


エキシビションマッチの開催を取り下げることができずふてくされた雅信は、せめて模擬戦を見ることで気を紛らわせていた。

そんな雅信を士郎は笑うのをこらえていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(どうすれば…)


走りながら私は考えた。


このまま逃げてもいずれ捕まり、攻撃の先手を取られる。どうにかしないと。


すでに後ろからは音がしている。少しずつ近くなっている。



「くっ!」


苦肉の策で背中を木に預ける。死角を一つ潰すためだ。


とはいえ、あのスピード…。前か、右か、左か。一瞬の判断ミスで拳が叩き込まれることになる。


後ろから追いかけてきた音がやむ。


また少しだけ木が揺れる音がし、その時たまたま見ていた斜め右の木から、彼女は現れた。


(いける…!)


構えていた刀をその方向へ振るう。


まさか攻撃を出すとは思わなかったであろう彼女が驚いた表情で腕を組む。


ゴォン!



勢いを失った彼女は、勢い良く地面に叩きつけられる。峰打ちとはいえ多少のダメージがあるはず。すぐさま私は追撃をねらい刀を振り上げる。そして彼女めがけ振り下ろす。


ガサッ


それは叶わなかった。驚いて上を向くと木の枝に刀が引っかかっていた。


ドッ


脇腹に鈍い衝撃が走るとともに私はまた地面に転がされる。


「あっぶなかった…腕切られちゃったかと思ったよ…刀の背中を使ってくれたんだ…」


イテテと呟きながら彼女がこちらに迫ってくる。


私は起き上がり刀を構えた。


(これだけ木があれば引っかかりもするだろう…!どうして気づかない!)


狭い空間では刀を存分に振れない。その状況を打破するには…突きでは彼女に致命傷を与えかねない。彼女はそれを使うべき相手ではない…他にどんな技が…


「あっ」


その瞬間にひらめいた。私は少し頭が固くなっていたみたいだ。


私は刀の刃を正面に持ち替えた。


彼女がそれに気づき後ずさりする。


力を込めて刀を振り抜く。


ズバッ!!!


そして、私は近くにあった木の幹を斬った。


「広い空間は作り出せばいいんだ」


ダダーン!


木が倒れる音と舞い上がる砂けむりに紛れて、私は何本か木を斬り倒した。



ダダーン!ドサッ!ドーン!バキバキバキ!


すごい音が鳴り響く、そして倒れた木が地面に転がる広い空間が出来上がった。


「…すごい斬れ味だね…」


彼女がつぶやく。


「すごい腕前といってほしいものですね」


そして刀の向きをひっくり返して構える。


「ラウンド2です」


私は彼女に向かってはしりだした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ