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アルバイターズ  作者: 野方送理
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第20話 幻の壊し方

第20話 幻の壊し方


キンッ、ガギッ、ギッ、ギィンッ


爪と刀がぶつかる音が部屋に響く


(なんで…体が…言うことを…聞かない…!)


「霜村さんっ…あなたまで!」


(いやだ…いやだ…私は…なんてことを…!)


操られながら伊有を倒さんと攻撃を繰り出す奈美に対し、出来る限り奈美を傷つけまいと防戦一方の伊有。


少しずつ傷が積み重なる。


「ねえねえ刀のお嬢ちゃん、君も名前を教えてくれないか?そしたら悪いようにはしないよ〜?」


「名前を…!呼ぶのが!操るための条件…なんだろ!」


「ありゃばれた、まあわざとらしすぎたな…どうだーい?友達と戦う気分は」


「いいわけ!ないだろ!」


一瞬視線をオッドベノンに向ける。


「よそ見なんかしてていいのかい?」


その一瞬を奈美は逃さない。


ドッ!


右の拳が彩香の腹部を襲う。


「がっ…はっ…」


部屋の隅に吹っ飛ぶ伊有。


(そんな…私…伊有ちゃんを…!)


「ぐっ…」


よろよろと伊有が立ち上がる。


「おいおい何をしている?追撃しろ」


オッドベノンの声に従うように奈美が伊有に飛びかかる。


(いやだ…こんなのいやだ…いやだいやだいやだ!)


ガギッ!


その奈美の一撃を止めたのは


「おいおい…どういう状況ですかこれは…」


「湯島…くん?!」


「大変遅れて申し訳ない…!」


奈美を押し飛ばし距離を取る一郎太。


「オッドベノンの能力は…洗脳。名前を呼ばれると操られてしまうようです…」


「洗脳とは人聞き悪いなぁ、幻惑とでも行って欲しいね」


「それで…霜村さんが…ってわけね」


「男はお呼びじゃないんだけどなあ…そうだ彩香ちゃん、君もあの2人を倒してくれ」


その声に従い彩香がゆっくりと歩き始める。


「相手も2人になるわけかよ…」


「どうしましょう…彩香ちゃんは変化をしていません…手加減をしつつ止めないと…」


「さーてと…君たちの友情見せてもらうよ」


「この下衆が…春近さんは佐藤さんを頼む…僕は霜村さんをどうにかする…」


「そんなこと言って…!酷い傷じゃないですか!!」


「言ってる場合じゃないみたいだし…来るぞ!」


奈美と彩香がそれぞれ飛びかかる。


ガッ、ドッ、ドドッ、バギッ


「くっそ…なんって…力だ」


元々満身創痍の一郎太も奈美の攻撃を防ぐので手一杯。


だが


(…ここだ…一瞬だけ…隙!)



「ごめん!」


ドゴッ


奈美の脇腹に一郎太の拳が入る。


「かはっ」


転がる奈美。


(痛い…痛いよお…脇が…)


そうして無意識に脇をさすっていた。


(あれ…今私…洗脳が…?)


そう思い指を動かす。自分の思い通りに動かすことができた。


(強い…痛み…)


オッドベノンは倒れている奈美に一瞥をくれると一郎太を非難した。


「おお〜えげつないねえ!女の子相手に…」


「くっ…嫌な感触だ…」


「さあさあ奈美ちゃん、憎きその男にやり返してあげなさい!」


そして奈美はゆっくりと立ち上がり


オッドベノンの方を向くと






勢いよく走り出し、顔面をぶん殴った。


「!!!?ごばあっ!?!?な、なべ!なべだ奈美ぢゃん!」


肩で息をしながら


「さっき…一郎太くんにやられた時…一瞬だけ操りが解けた…強い痛みがあれば…操ることは…できない…」


そういう奈美の口からは


夥しい量の血が流れていた。


「俺の幻惑よりも強く意識を支配するほどの痛み…こいつ…舌でも噛みやがったな…!」


「ほんの端っこだからね…なんとか…」


「まあいい…その痛みの中で…俺を倒せるか?もう1人もボロボロ…彩香ちゃんは…」


オッドベノンが彩香に目をやると伊有が(アルバイターとなり強化されているとはいえ)生身の彩香に反撃できず、鞘で攻撃を受け流していた。


「まあ、どうしようもなさそうだな。ずっとやらせておこう。というわけで…お前ら今から…殺す」


その殺すには重みがあった。


奈美と一郎太の額に嫌な汗が流れる。


その時


「悪い悪い今日はピアノの練習があったから遅れちゃって…って…なんだこりゃ大変なことになってるな」


「おやおやあ?新しい子かあ…めんどくせ、彩香ちゃん、やっちゃって」


オッドベノンがそう命令すると彩香は伊有から視線を移し、その人物に飛びかかる。


そして彩香は


空中で静止したかと思うと


事切れたかのように


地面に倒れた。


「うわ、何かと思ったわ。よく見りゃあんた味方じゃねえかやっべ」


「「「「!?」」」」


「何が…起こったの…?」


伊有がつぶやく。


誰もその時起こったことを理解できていなかった。


「ん?いや飛びかかってきてあぶねえなと思ったから、首を叩いただけだよ」


そう、天海愛羅はなんでもないことのようにに答えた。


「さてと、どうやらピンチみてえだな…だか安心しな…私が来たんだ、こっから逆転だぜ、アルラウス!」


「はい愛羅様!ご存分にお暴れください!」


愛羅はうやうやしい指先へのキスにうんざりした顔をしながら


「神憑変化!」


そう唱えた。

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