四話 エクスマギナ
「Mama、Mama!!」
ロボ男が泣きながら逃げている。
四つん這いだ。
すでにロボ部分の大半は壊れてすでに偽ロボ男だ。
その背後から剣がゆっくりと歩いてくる。
指をパキパキと鳴らしている。
キレてからの剣の強さは凄まじかった。
重りのジャンパーを脱いだだけであそこまで強くなれるのだろうか。
「ヤサイ人がスーパーヤサイ人になったような強さじゃったな」
隣に座る金髪幼女が解説する。
「普段からリミッターをはずす訓練をしているのじゃろう。怒りで強くなるのはいかにも漫画ぽくってかっこいいからのう」
幼いのに喋りがじじくさい。
「いま、プリティー幼女のくせに喋りがじじくさいと思ったろう」
プリティーは思ってないがうなづく。
「こう見えてもお主より年上じゃ、見た目で判断しないほうがよいぞ」
どうみても幼稚園ぐらいにしか見えないが本当だろうか。
「さて、と」
どっこいしょと腰を叩きながら幼女が立つ。
「スクラップを回収しますかのう」
ボコボコにされているロボ男の元にむかう。
「ハ、ハカセッ」
ほとんど裸状態のロボ男が幼女に気がつく。
「ハカセ、コイツ、コワイ、タスケテッ!」
ゴキブリのようなスピードの四つん這いで幼女に駆け寄り抱きつく。
ロケットパンチを出していた左手もある。
どうやら折り曲げた左肘に機械の腕をつけていたようだ。
「お前の目的はなんだった?」
ロボ男は幼女の顔を泣きそうな顔で見る。
英語で書かれた賞金首リストを出して言う。
「コイツラ、コワスコト」
幼女が睨む。
ロボ男は目線を逸らした。
「違うな、ワシは壊されてこいと言ったはずじゃ」
「ダ、ダッテ、ハカセノサクヒン、コワサレルノ、ボク、イヤッ」
ごんっ
幼女は抱きついたロボ男の頭を殴る。
ロボ男の頭が地面に埋まった。
そのままピクリとも動かない。
「迷惑かけたの」
剣は無言で幼女を見下ろしている。
幼女はロボ男の身体に残っているパーツを外す。
ボロボロで原型をとどめてない。
「プロトタイプとはいえ、ここまで破壊されるとはな。これ以上強度を上げては動きは鈍くなるし、いっそ外部から手動で動かすかのう」
「お前がこれを作ったんか?」
剣がしゃがんで幼女と同じ目線になる。
「そうじゃ、ワシはこう見えても偉い博士だからな」
そう言ってロボ男を軽く片手で担ぐ。
どうやら腕にロボ男のように機械をつけているようだ。
「迷惑のお詫びにお主にも作ってやれるぞ、重りをつけて動いていたお主ならいまの強度より五倍はあげれそうじゃ、どうかの?」
「いらへん、ワイは機械に頼らへん」
剣が立ち上がって額から流れる血を拭う。
「ゾンビくんの腕もくっついとるしかんべんしたるわ」
「ふむ」
幼女が納得したようにうなづく。
「ではかわりにこんなのはどうじゃ?」
幼女が剣に手招きする。
幼女の顔に自らの顔を近づけた剣に耳打ちする。
剣の瞳が子供のように輝いた。




