表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪闘王  作者: 恋魂
第五部 邪眼(イービルアイ)
32/52

転章 実験室KR-13

ヒノメ父視点。

 実験施設。

 ここはすでに何度目の施設だろうか。

 アルファの暴走により何度も破壊された。

 一定周期でくる破壊衝動を私では止めれない。


 多勢いた助手もいまは一人しかいない。

 能面のように表情のない女。

 名前は覚えていない。

 覚えることが多い中、無駄なことは覚えない。

 助手Aで十分だ。


「現在、怪物製作所に挑戦したもので使えそうなのはこの2名です」


 助手Aから資料をもらう。

 戦士(ファイター)盗賊(シーフ)

 なるほど勇者(ヒーロー)の実験にはぴったりだ。


「二人をスカウトに迎え、それからさらに二人、いや三人くらい候補を見つけておけ」


 無言で助手Aは出ていく。


「君のいい友達になるといいのだが」


 アルファを見る。

 暴走を終えたアルファは今は普通の体型だ。

 静かに部屋の隅に座っている。


 怪物を倒す勇者として私が作った。

 いまはまだ未完成。

 だがアルファは成長していく。


 戦えば戦うほどアルファの力は倍加する。

 その力はいつか魔王(サタン)を倒す勇者となるはずだ。


 両手両足についた鎖が揺れる。

 目覚めたようだ。


「お早う」


 返事はない。

 だがガラス越しにこちらをじっと眺めている。

 暴走後の軽い混乱が残っているのか。


 私を叩き潰すこともできたはずだ。

 だが、アルファは暴走しても私にだけは手を出さない。


 私がいればさらに強くなれることを忘れないのだ。


「もうすぐだよ、シュウ」


 久しぶりに名前を呼ぶ。

 終わりの始まり。

 アルファでありオメガ。


 シュウでありハジメ。


 二つの人格。

 二つの肉体。

 理性と暴力。


 相反する二つを掛け合わせた私の最初で最後の最高傑作。


「お前が勇者となって魔王を倒すんだ」


 シュウが吼える。暴走。周期が早くなっている。

 筋肉が増大され、身体全体が巨大化する。その肉体は魔王、練剛(れんごう) (おう)にも見劣りしない。


 倍増した筋肉、伸びた身長。

 片方だけだった紅い瞳が両目に宿っている。


 科学が作り出した怪物。

 愛おしい息子。

 私のすべて。


 シュウとハジメが完全に混ざりあったとき、怪物を超える勇者が生まれるのだ。


 オォォオォォオォォぉぉォォ


 シュウの時の記憶はハジメにはなく、ハジメのときの記憶はシュウにはない。


「シュウ、お前にはなにが見えているんだ?」


 数字は見えているのか?

 人を人として見ているのか?

 何も見ていないのか?


 鎖がすべて引きちぎられ、強化ガラスにシュウがぶつかりヒビが入る。


 私を憎んでいるのか?

 私はお前を何より愛している。


 強化ガラスを叩く、叩く、叩く。


 静かに目を閉じる。


 叩く、叩く、叩く、叩き割る。

 強化ガラスが割られてシュウが私の前に立つ。


「ト、ウ、サ、ン」


 初めてシュウが言葉を喋る。


 勇者が魔王を倒す日は近い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ