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怪闘王  作者: 恋魂
第五部 邪眼(イービルアイ)
29/52

二話 レインマン

 

 右目の上のまぶたを傷つけた。

 失明はしていない。

 とっさに目を閉じてかわしたがまぶたからは血が流れ右目の視界は閉ざされた。


「おっしい、残念賞」


 狂気の顔が一瞬でもとの気弱そうな美少年に戻る。


「君は」


 右目を押さえて、血を止めようとする。

 いつもと逆の目を押さえることに違和感がある。


「君は一体」


 美少年が飛び切りの笑顔を見せる。

 まるで純粋に子供が笑っているような笑顔。


「どんなに強い怪物も隙をつけば簡単に倒せるね」


 血が右目に入る。

 紅い景色で笑う美少年。


「次は目玉、えぐりとるからね」


 背筋がゾクリとする。

 狂気。

 この相手はヤバい。


 両手を上下に動かしている。

 右手を顔の近くまで上げると左手は腰の辺り、逆に左手を上げると右手は腰。それを何度も繰り返す。


 上下に動きながら、残った左目を狙ってくる。

 まるで元気な腕振り行進だ。

 美少年の左手が目の前を横切る。

 気を取られた隙に右手が僕の左目を狙う。

 ギリギリでかわす。


 目を狙ってるのが明白ならそこをガードしていればっ。


 ごつん


 右脚に痛みが走る。

 美少年の左前蹴りが突き刺さる。

 上への攻撃はフェイント、本命は足。


「甘いよ」


 笑っている。

 身長は小さい。

 筋肉もない。

 だが攻撃は相手の隙を的確についてくる。

 そして、容赦がない。


 右目は見えない。

 その死角に隠れるように美少年は動いている。

 目を狙うと見せかけ様々な急所を攻撃してくる。


 相手の得意なことはさせずにどんどんと追い詰めてくる。目を奪われ、足を奪われ、体力を奪われる。


「全部、奪うよ」


 そして笑みを絶やさない。


「ボクは盗賊(シーフ)なんだ」


 なるほど。ぴったりなあだ名だ。


「はじめて盗んだのは小学校の時」


 喋りながら攻撃する。

 気を散らそうとしているのか。


「盗んだのはゲームボーイだったかな。ボクの家は貧乏で買って貰えなかったんだよ」


 激しく両手を動かすが攻撃は足に集中している。

 すでに両足は腫れ上がっている。


「なんでかな。盗んだら興味なくなるんだ。一回も遊ばずに叩き壊しちゃったよ」


 手の動きが早くなる。

 見たことのない動き、格闘技の動きではない。


「お兄さんの目玉、えぐったら潰してあげるね」


 右手人差し指と親指でぷちっと潰す動作をする。

 無邪気な子供のような顔。

 その顔めがけて殴りかかるがあっさりかわされる。

 同時に左脇腹に盗賊の蹴りが入る。


 絶対絶命。


 僕は静かに残った左目を閉じた。



『ハジメはたぶん見ているじゃなくて、感じてるんだよ』


 医師である父がいっていた。


『世の中のものすべてが数字で見える人間がいるんだ。ハジメはその人ととてもよく似ている』

 

 盗賊が攻撃をしてくる。

 数字が左胸に迫ってくるのを感じる。

 身体を半身にしてかわす。


 盗賊の身体は見えない。

 背景も見えない。

 だが数字が見える。

 様々な数字が沢山集まって人の形を作っている。


 55 2 73 21 361 47 83 99


 一番小さい数字は2。

 そこに向かって全力で殴りかかった。


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