転章 ドラゴンへの道
序章と転章は視点が変わります
ゾンビ視点
「お好み焼き定食がっ」
意味不明の叫びをあげて大阪男が目覚めた。
ジムのマットの上。
岩男が運んでくれた。
あたりを見渡す。
側に立つ自分を見たあと表情を曇らせる。
「ワイは負けたんかっ」
どんっとマットを右手で叩き悲鳴をあげる。
拳を骨折してるみたいだ。
「魔王倒しに来たのに、こんな所で負けるのか、俺はっ」
また右手を叩きつけようとして止まる。
左手でマットを叩く。
「まあ、良くやったほうだ。岩人形は倒したんだろう」
大阪男の顔が青ざめる。
自分の後ろにいる王に気付いたようだ。
大阪男との戦闘が終わってすぐ王は現れた。
横にヒノメを従えて。
ヒノメはなんだか疲れた顔で両手に大量のチラシを抱えている。
賞金首のチラシを配っていたのはヒノメのようだ。
「さっそく来たのか」
王がジムの荒れ具合を見て言う。
「倒れてるそいつ、お前が倒したのか?」
岩男に聞く。
当然無言。
「そうかお前はやられて、ゾンビが倒したのか」
どこにも会話はなかった。
どうやって意思疎通を交わしてるのだろうか。
「ヒノメ、こいつの戦闘能力は?」
ヒノメが左目を押さえる。
「高いですよ、500を超えている。でも」
大阪男にヒノメが近づく。
倒れている大阪男の手首をつかみ、持ち上げる。
手にリストバンドがしてある。
「これを外したら、たぶん更に上がります」
両腕に巻いているリストバンドは重り入りらしい。
ヒノメ曰く、片方10キロ、両足にも同じものを巻いているそうだ。
合計40キロ。
大阪男はそれだけの重量を背負ったまま戦っていた。
「バカだなぁ」
王が嬉しそうな顔をした。
「お前、名前は?」
目覚めたばかりの大阪男に王が聞く。
「鎧塚 剣」
漫画のような名前だった。
「よし、ケン。賞金をやろう」
懐から裸の万札を取り出す。
岩男を倒した賞金10万円だ。
不機嫌そうな顔でケンは受け取る。
「また来るからな」
立ち上がり、王を睨む。
王は嬉しそうに笑みを浮かべている。
「お前行くとこあるのか?」
ジムから出ようとするケンの足が止まる。
行くところはないらしい。
「二つ道がある」
王が右手でピースサインを作る。
「一つはここで俺に鍛えられ怪物となる」
指を折り、ナンバーワンサインにかわる。
「もう一つ。俺を倒すためのジムが先週作られた。そこで鍛えてリベンジする」
王を倒すためのジム? 初耳だ。
「どっちもお断りや」
大阪男はカバンから数冊の漫画本を取り出す。
「トラゴンボール」「喧嘩売買」「はじめた一歩」
どれも擦り切れてボロボロだ。
「ワイの師匠はこの中におる。誰にも教わらへん」
ジムから出て行く。
だがすぐに戻ってくる。
「ええかっ、ワイは負けてない。勝ちへの途中やっ! 覚えとけよっ!」
捨てゼリフを残し今度こそいなくなる。
「いいバカだなあ」
王が笑う。
その顔は見たことがある。
自分を殴ったときの顔だ。
「あいつは戦士だ」
怪物に挑む戦士が誕生した。
次回
第五部
邪眼




