四話 ファイター
肉が弾ける音がして不死の口から血の混ざった液体が噴出する。
吐瀉物が顔に降りかかる。
だが、こちらのスタミナもゼロになる。
脳に酸素がきていない状態で放ったために、呼吸が出来ない。
目の前で崩れおちる不死。
勝利を確信した瞬間だった。
目の前?
崩拳を使えば相手は吹っ飛ぶはずや。
なんで目の前にいるんや?
後ろに岩人形がそびえ立っていた。
不死の首筋をつかみ身体を支えている。
「......ウテ」
初めて岩人形の声を聞く。
「オマエはタオレルナ」
ぺちん
みぞおちに不死のパンチがあたる。
身体は半分倒れている。
それでもパンチを当ててきた。
死人のような不死が起き上がる。
死んでいるようにしか見えない顔から笑みが浮かぶ。
あああああぁアァアアァ
叫ぼうとしたが声にならへん。
半歩前に出る。
呼吸は出来ひん。
右の拳は砕けている。
それでも打つ。
心臓が止まっても打ち抜くんや。
再び不死の心臓めがけて崩拳を打つ。
だがそこに心臓がない。
猫背の不死がさらに猫背になる。
心臓のあった所に不死の顔があった。
額に崩拳が炸裂する。
ぼんっ がっ
爆発音と何かが崩れる音。
ワイの右拳。
不死の額。
その両方。
不死は今度こそ吹っ飛び、岩人形のいたダンベルの山に突っ込む。
岩人形はそちらを見ない。
呆然とワイを見ている。
まだやるんか?
ええで、何度でもやったる。
構えようとして腕が上がらないことに気がつく。
ぺたん。
足音が聞こえた。
ぺたん、ぺたん。
足を引きずり近づいてくる。
額が割れて血まみれ。
焦点もあってない。
岩人形が満足気にうなづく。
あかんな。やっぱりゾンビ漫画苦手やわ。
それが最後の意識やった。
ぺちん
不死の拳がみぞおちに入りそのまま意識を失った。




