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怪闘王  作者: 恋魂
第三部 吸血鬼(ヴァンパイア)
19/52

転章 シャドウ・オブ・ヴァンパイア

序章と転章は視点が変わります。


ヒノメ視点。

 

 最近、キバコさんの様子がおかしい。

 どう、おかしいかと言われても答えられないが、何かがおかしい。


「キバコさん、体力の回復早くなりました?」


 ぎっ、とキバコさんが固まった。

 あれ? そんな変なこといっただろうか?

 前よりもトレーニング後の回復が37パーセントも向上している。

 凄まじいトレーニングの成果だろう。


「気のせいだよ、ヒノメ。たまたま調子良いだけだと思うなー」


 棒読みだった。

 普段、感情をめったに出さないキバコさんが、しどろもどろだ。

 目も泳いでいる。

 

 泳いでいた視線の先に、カイくんがいた。

 

 ぶんっ!!

 

 ものすごい勢いで視線をそらすキバコさん。

 カイくんもあわてて視線をそらす。

 

 怪しさマックス。

 やっぱりこの二人、あの夜なにかあったのか。


 

 キバコさんは、恋愛とかそういうものとは、無縁だと思っていた。

 だが、考えてたら思春期の女の子だ。

 カイくんを好きになったのなら応援してあげたい。

 そんな風に思っていたとき、チャラ男が現れた。


「へい! 彼女、お茶しない?」


 ない。これはない。

 キバコさんと、このチャラ男がくっつくぐらいならいっそ......。


 いっそ、なんだよ!


 (よこしま)な考えを振り切る。

 

 だが、チャラ男はあっという間にジムに馴染み、キバコさんとも親しげに話す。

 


 気になって一度聞いてみた。


「キバコさん、あいつは、阿波瀬(あわせ)はないですよね?」


「いや、ありだと思う」


 なにがありかは聞けなかった。


 モヤモヤしていた。

 三年間で、練剛さんに勝てなければ、キバコさんは練剛さんの決めた男の子供を産まなければならない。


 だが、キバコさんがその男を気にいったのならば、それは幸せなことだろう。


 そう思っていた。思っていたはずなのに、モヤモヤは心の中で大きくなっていく。


 

 朝のマラソン後、キバコさんがシャワーを浴びている間にジムを掃除する。

 いつもの日課だ。キバコさんは、ほぼジムでのトレーニングで1日を潰してしまう。

 たぶん、学校ではずっと寝てるのだろう。

 ジムを掃除できる時間はわずかしかない。

 

 その日も、いつもと変わらない掃除のはずだった。

 一冊のメモ帳を発見するまでは。


 兄貴 済

 エロオンナ 済

 カイ 済


 阿波瀬 未遂

 岩男 無理

 栗田 論外

 

 ヒノメ 検討中


 なんだ! このメモ帳は!

 文字に見覚えがある。書き殴ったようなこの文字はキバコさんだ。


 この済というのはなんだ! やっぱりあれか!

 最後までいったという、あれなのか!?


 兄貴、済て!? 練剛(れんごう)さんとあれなのか!

 エロオンナ、済? 両刀なんですか!?

 カイくんも済! やっぱりかあああ!!


 チャラ男とも未遂て、どこまでしたんだ。

 岩男さんと栗田が無理と論外。

 ますます、あれしか考えられない!

 

 そして、僕。

 検討中てどういうこと???


 頭の中で情報処理が追いつかない。

 パニックになっているといると、タオルを巻いただけの半裸状態のキバコさんが凄まじいスピードでやってくる。


 見えない右。ファントムライトが、僕の手の中のメモ帳を奪う。



「なんでもない! なんでもないから忘れろ!!」


 来た時と同じ凄まじいスピードで消えていく。


 しばらく、呆然としていた。

 

 キバコさんが忘れろと言うなら忘れよう。

 あのメモ帳は僕が思うものと違うだろう。


 そして、この時、僕はわかった。

 キバコさんが好きだということを。


 キバコさんと結ばれる怪物になりたいということを。


 はじめて。

 生まれてはじめて強くなりたいと思った。

 

 


 

 

 


次回

幕間

登場人物紹介①


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