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怪闘王  作者: 恋魂
第三部 吸血鬼(ヴァンパイア)
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一話 ブレイド

 

 幼い頃の一番印象に残っている言葉は「失敗した」だ。


 両親が話しているのを、隠れて聞いた言葉。

 うちのことを言っているとわかった。


 兄貴は、成功した。

 

 練剛家(れんごうけ)は代々、最強を作り上げてきた。


 最強の筋肉を作り上げ、さらに磨きをかけていく。

 それは、兄貴で完成を迎えた。

 長年の夢だった肉体は兄貴で完成したのだ。

 

 兄貴は(おう)と名付けられる。

 練剛 王。

 鍛え、練られた剛の者。その中の王。


 最強は完成し、すべては終わりを迎えるはずだった。


 だが、そこで終わりはしなかったのだ。

 人間の欲は果てしない。

 

 最強の筋力と最強のスピード、矛盾する二つをかけ合わせ、さらなる最強を作る。

 その為に親父は黒人の血を混ぜる。

 そうして生まれたのがうちだ。

 

 だが、そんな夢のような最強は生まれない。

 失敗作が生まれたのだ。


「筋肉は主に二種類あってね。赤と白がある。速筋と遅筋といってね。君はね速筋が異常に優れている。瞬発力はあるがスタミナはない筋力だ」

 

 担当医が言う。

 

「兄貴の筋力は?」


「どちらでもない。新種だね。異常に発達し、鍛えればどこまでも伸びる。人間の範疇を超えた筋肉だ」


 兄貴は怪物として生まれてきた。

 うちは凡人として生まれてきた。

 どうすれば、怪物になれるのか。


 

 小学生年長の頃は、五歳離れた兄貴に何度もスパーリングを挑んだ。

 まるでお話にならなかった。

 軽くあしらわれる。

 スピードに優れているはずの特性なのに、兄貴には当たらない。しかも、すぐにバテる。

 泣きたくなる。それ以上に腹が立つ。

 なぜ、うちは失敗作なのか。

 

 頭が、真っ白になった。

 すべての記憶が飛んでいた。

 兄貴の首から血が流れている。

 初めて、血を流している兄貴をみる。

 そして、口の中に血の味がする。

 

 どうやら意識が飛び、うちは兄貴に噛み付いたようだ。

 驚いた目で兄貴は、うちを見ていた。

 そして、笑った。



「驚いたな、筋肉の質が変わっている」


 担当医は、嬉しそうに言う。


「なにをしたんだ? 王君の血を飲んだ? 噛み付いたのか!」

 

 興奮していた。うちも興奮する。


「うちも兄貴みたいになれるのか!?」


「いや、そこまでじゃない。王君の力のほんの一部だ。鍛えればスタミナがつく程度だ。スピード特化は変わらない」


 期待していた答えと違う。


「だが、血を飲んで強くなるなら、君は怪物になれるかもしれない!」


 担当医が興奮している。

 


「そうだ。今度、僕の息子を連れてきていいかな? 鑑定に優れていて、見ただけで人の数値がわかるんだ」

 

「いい、まだうち、弱いから」


 ヒノメと会うのは随分後になってからだ。


 

 血を飲んで強くなるなら、血を飲もう。


 その日からうちのあだ名は吸血鬼になった。

 




 

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