表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

踊らない胸

作者: Q作くん

 僕の彼女の胸は揺れない。Aカップだから。走っても、ジャンプしても、急ブレーキをかけても、揺れない。「揺れる」というのは観測によって知りうる事象だ。彼女の胸が実際には「微動」しているのだとしても、それが目視によって確認できない限りにおいて、彼女の胸は揺れてはいないのだ。

 そのことを彼女に告げると、僕は顔面を引っぱたかれた。

「最低」

 確かに、僕の行為にはデリカシーがなかった。しかし、彼女に告げたことは客観性をもった事実なのだ。現に、僕を引っぱたくために、腕を振りかぶってスイングをした彼女の胸は揺れていなかった。

 ある芸能人が、AカップのAはAccident(事故)のAだと言っていた。僕はその考え方に納得した。彼女の胸は、事故による副産物だったのだ。あってもなくても(おっぱい)としての存在感に大差はない。しかし、申し訳程度に膨らんだ、彼女の胸は、主張しているのだ。「わたしは女です」と。現代社会の生き抜いていくうえで、やはり胸の存在(女性性)の有無は大きな差を生む。たとえ、Aカップだとしてもだ。ジェンダー(社会的性差)を表現し、そのアドバンテージを得る。彼女の胸は、女性優遇社会において、無意味ではない。Aカップだとしてもだ。

「つまり、ケンくんは胸のおっきな女性が好きってことでしょ?」

「そうだ」

「何で彼女と付き合うことにしたの?」

「余地があるからだ」

「何に対して?」

「胸に対する期待値だよ。将来、彼女の胸はB,C,Dと成長する可能性がある。彼女の胸が揺れる日が、来るかもしれないんだ。そして、その瞬間を、僕は見逃したくないんだよ」

 彼女の胸は揺れない。しかし、いつかきっと、揺らしてみせる。僕の胸は、希望に満ち溢れている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 素敵です!彼女の胸には夢が詰まってた!
[一言] 面白(笑) 何を下らないことを……と最初は思いましたが、段々語り手の話に納得し始めました(笑)下らないことに変わりはないですけど 女性社会的に価値があっても……巨乳好きにとっては価値無し…
2016/07/18 11:01 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ