悲しみのワルツ
かつて、その少女は封印された。
愛する者の手によって。
滅びの穴に落ちゆく彼女に彼が与えたものは、時を止める魔法。
ガラスのように透き通り、溶けない氷に閉ざされたまま、彼女は滅びの穴で長い年月を経て未だその姿を保ち、命を長らえている。
目覚めたときには共に戦った仲間も、心を通わせた愛する者もいないというのに。
そして自らは、目覚めれば穴に食らいつくされ、滅びてしまうというのに。
夢は甘ければ甘いほどに儚いもの。
だがその少女の長い夢が、ただ幸せであるようにと私は願っている。
ご拝読ありがとうございました。
これはショパンのワルツ第7番を聴いていて出来上がりました