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 山菜料理のフルコースはとても美味しかった。

 自室で食べ終えた料理の皿を下げてもらった後は、のんびりとした時間を過ごしていた。旅館にある温泉に浸かっている間に布団も綺麗に敷かれていた。至れり尽くせりだ。

 明日には元の生活に戻るのが少し、忍ばれた。


 板の間の椅子に座り、背伸びをしながら眠たそうな先輩はこちらに声を掛けてきた。

「美味しいんだけど、君の処の旅館の味の方が好みだったな」

「旅館と言うより、小さな民宿でしたけどね」

 祖父母が二人で経営していた小さな民宿は、もう大分前に畳んでしまった。

 不便だった山を降りて、少し離れた町に移り住んでいる。もう、商売はしていない。

 今年の春に里帰りした時、二人とも元気そうだった。坂が多いのが少し辛いと零していたが、そこからもう少し離れた所に、僕の実家も有るので安心だと言っていた。

「また、食べたかったなあ」

「祖父母が実家の近くに住んでいるんで、今度行ってみますか? 作ってくれると思いますよ。それに、昔のお客さんにまた会えるのも喜ぶと思います」

「それは、嬉しいな」

 先輩は、楽しそうに笑っている。眼帯は外されている。両目の色は違う。

 それが、嬉しくて笑えてきた。

 二日目の晩までは、僕が眠るまでは付けっぱなしのはずだったからだ。気を使われるより、ずっといい。


 過ぎてしまえば、夢だったかのようだ。

 畳の上で足を揉む僕の少し先の方から、ピリッと、何かを剥がす音が聞こえる。

 独特の薬品の匂いが、鼻先を掠めた。

 先輩の筋肉痛は結局、三日目の晩にやってきた。

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