表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/207

初戦闘とチュートリアルの終わり そして……

〔チュートリアル④ 戦闘を行おう〕…モンスターと戦闘を行って勝利しましょう。


「はい、それではいよいよ最後のチュートリアルになります。ですがモンスターとの戦闘前に、私と模擬戦をおこなっていただきます」


 そう言ってクリスは剣を抜くと、此方に向き直った。


「準備はよろしいですか? ジンさんのタイミングで結構ですので私に打ち込んでみてください。私のレベルは高いので、ジンさんの攻撃で傷つく事はありません。思いっきり来てください。あ、それとその木剣は折れる事も傷つく事もありませんので、その点もご安心ください」


 このゲームでは、武器や防具には耐久度などは設定されていない。だから現実では木の剣が折られるか切り飛ばされるかで終わるであろうこの打ち合いも、ゲーム上では問題なく可能となるのだ

 すっかり木剣を気に入ってしまっているジンは、破壊不可とはありがたい仕様だと素直に思った。


「よろしくお願いします」


 ジンは一礼すると、思い切りよくクリスに切りかかった。実力者相手に初心者の、しかも老人の自分が遠慮するなんておかしいとジンは考え、ただひたすらに全力で剣を振るった。

 もちろんクリスは軽々とジンの攻撃をいなしていく。クリスはジンに一切攻撃を仕掛けることなく、そのまましばらくの間攻撃を捌き続けた。


「はい結構です。攻撃をやめてください」


 ジンの体感で2~3分程攻撃し続けた頃、クリスからストップがかかった。


 現実なら30秒も持たないはずの体力が、仮想現実ここでは何の問題なく運動し続けられる。そして運動音痴のしかも老人の自分の体が、現実ではありえないほどよく動いてくれる。

 その爽快感にジンは途中から楽しくなっていた為、クリスに終了を告げられた時は少し残念そうだった。


「ジンさんは職技スキルをお持ちではありませんが、この調子であればすぐに剣術スキルを習得できると思います。あと若干費用はかかりますが、街には道場等のスキルやアーツの使い方を教えてくれるところがありますので、一度そちらを利用されるのも良いと思います」


 ジンはクリスにお墨付きをもらい少し安心する。

 そしてこうした運動自体が楽しかった事もあり、ジンは道場で武術を習うのも面白そうだなと考えた。


「それでは、今度はジンさんには私の攻撃を受けてもらいます。これは防御してくださいというわけでなく、何もせずジンさんのHPが減る私の攻撃を受けてもらうという意味です」


 さすがにちょっと驚いて腰が引けるジン。


「これは攻撃を受けたときの衝撃を実感してもらう為におこないます。普通の生活では剣で切りつけられる事も、モンスターの牙でかまれる事などもありませんから、パニック防止のいわば予行練習として私の攻撃でダメージを受けてもらうのです。もちろんちゃんと手加減しますし、当たり前の話ですが現実のような痛みを感じる事はありません。衝撃を感じるだけです。ですがその当たり前の事を、実際の本格的な戦闘の前に実感していただくという事が大事なのです。ご理解いただけますでしょうか?」


 理由を聞くとなるほどと納得できる話だ、確かに現実の剣で斬られるイメージを持ったままでは、いざ攻撃を受けた時にパニックになっても不思議じゃない。

 ましてやこのゲームには死亡があるのだ。死亡した場合は時を遡って任意のセーブポイントからやり直す事が可能だが、ゲーム上とはいえ死亡する事には変わりない。

 もちろんゲーム上の死亡で現実に何か問題が発生する事はないが、リアリティのある仮想現実であるからこそ、万一の為にそういった用心が必要なのだろうとジンは納得した。


「それでは参ります ……ふっ!」


 ジンの了承を得てクリスが剣を振る。

 ジンの左肩から右わき腹へと袈裟切りに振り下ろされる剣。しかしその攻撃はジンの体には傷一つつけることなく、ただその剣の軌跡にそってジンに鈍い衝撃を与えるだけであった。


 ジンは確かに実際に攻撃を受けるのに恐怖感を覚えたが、説明を受けていたので取り乱すことはなかった。そして落ち着いて現在のHPを確認すると、HPは半分近く減っていた。


「いかがでしたか? HPの半分を奪う程の威力の攻撃が、先程ジンさんが感じられた程度の衝撃になります。一応この衝撃度はメニューの設定で変更できますが、例え最大にしても現実のような痛みを感じる事は出来ません。また、もしモンスターに腕を食い千切られるような体の一部を失いかねない攻撃を受けた場合も、衝撃は受けますが体が損なわれるような事はありません。ちょっと言い方が変かもしれませんが、わかりやすく言えばジンさんの体も武器防具と同じように破壊不可属性なのです」


 軍事やスポーツの世界では、現実の感覚と極力同じにして訓練を行うこともある。実際その事で一定以上の成果が出ていることも事実だが、逆にそのあまりのリアリティ故にVR世界での出来事でトラウマやPTSDを発症する人も存在するという。

 特に一般に公開される前のVR最初期に多い事故であったが、現在は様々な対策がとられており事故は激減している。


 しかもこれは一般的なゲームだ。

 軍事等の分野とは違い、事故のリスクを承知してまでリアリティを高める必要はない。リアリティの高さゆえに起こる事故なのだから、そこを落とせば事故は起こらない。

 幾重にもわたる安全策の一つとして、こうしたリアリティを犠牲にした仕様にしているのだ。


 もちろん、ジンがこの仕様に異論があるはずも無かった。 


「それではこれより実際にモンスターと戦っていただきますが、その前に此方をどうぞ」


 そう言ってクリスは先程ジンが鑑定したHP回復ポーションを渡してくる。ジンがありがたく頂戴してポーションを飲むと、体が温かくなるような効果を感じるとともにHPが全快した。


「それでは戦闘訓練を始めます。モンスターは1体です。チュートリアル戦闘ですので、たとえジンさんのHPが0になっても死亡はしません。その場合戦闘の最初に戻ってのリトライが可能です。落ち着いて、そして思い切りやってみてください。準備はよろしいですか?」


 逸る心をおさえ、ジンは大きく1回深呼吸すると落ち着いて剣を抜く。


「はい。お願いします」


「では始めます。ご武運を」

 

 そうクリスが言い終わると同時にジンの前方5m程先の地面に魔方陣が描かれ、そこから一体のスライムが現れた。


 薄く青みがかった半透明のグミのようなその見た目は、まさにザ・スライムだ。プルプルと震えながらゆっくりとジンの方に向かって移動してくる。


 まずは様子見と、ジンも剣を構えたままゆっくりと近づく。もう少しでジンの攻撃の間合いに入るという直前、スライムは移動をやめるとそのプルプルの体を縮めた。

 何らかの前兆を感じ、ジンも警戒して下がろうとしたその瞬間、スライムは身を縮めた反動を利用してジンに体当たりをしてきた。

 しかし警戒していた事が幸いし、ジンは見た目余裕に内心あせりながら体を横にずらすと、反射的に木剣でスライムの横っ腹を叩いていた。ダメージを与えた感触を実感しつつ、すぐにスライムに向き直る。

 すると着地して軽く震えるスライムが、さっきと同じようなモーションをとったかと思うとまた体当たりをしてきた。今度は予測が付いていたので余裕を持って避け、さらにしっかりと力の入った一撃を入れることが出来た。


 そしてここがチャンスとジンは判断し、すぐさま着地したスライムめがけ追撃する。大きく振りかぶった木剣の一撃をスライムに入れると、スライムは光の粒子となって消えた。

 スライムの消えた地面にはドロップアイテムである〔スライムゼリー〕が落ちていた。


 これまで経験してきたモニター上のRPGゲームでは味わえない、仮想現実だからこそ味わえる自らが倒したという実感。

 ジンは初戦闘と初勝利の興奮もそのままに、嬉々としてドロップアイテムを道具袋に入れた。


〔チュートリアル④ 戦闘を行おう クリア 報酬:MP回復ポーション(小)〕


「おめでとうございますジンさん。これで全てのチュートリアルが終了です」


「ありがとうございますクリスさん。色々教えていただいて本当に助かりました」 


 満面の笑顔でクリスに答えるジン。


「そうおっしゃっていただけますと、こちらも案内人冥利につきます。それで、こちらが全チュートリアル終了報酬の500Gになります」


 そう言うと、クリスがゲーム内通貨である金貨ゴールドが入った皮袋をジンに渡した。

 お礼を言ってジンが皮袋ごと金貨を収納すると、おずおずといった感じでクリスが提案をしてきた。


「ジンさんはチュートリアルでお疲れかと思いますが、もしよろしければ追加でモンスター戦をやっていかれませんか? というのも、ジンさんは職技スキルや武器防具が揃っておられません。色々と揃えるには、現在お手持ちのGゴールドでは少しだけ心もとないかと思われますので」


「え? よろしいのですか?」


「はい。ここでの戦闘ではスキルの新規習得は不可能ですし、ジンさんは育成可能な職技スキルが『鑑定』のみなのでスキル成長的にはほとんどメリットはありません。ですがステータスレベルは上げる事が可能ですし、ドロップアイテムの買取は私でも可能です。あと10戦くらいすれば恐らくジンさんのレベルが2か3にはなると思いますし、金銭的にも余裕が出ると思います。特にここでは死亡がありませんので、安心して戦えると思うのですがいかがでしょう?」

 

 実はこうしたチュートリアル後の追加戦闘は基本的にはプレイヤー全員に提案されているが、実際に行うプレイヤーは少ない。

 何故なら多くのプレイヤーがチュートリアルを面倒くさいものだと捉えており、出来るだけ飛ばして早く本編を始めたがるからだ。 


 しかしジンは現実では老人である。年をとれば無理が利かなくなるので、何事にも慎重になるのは道理であるし、ましてや初めてのVRゲームだ。

 ペナルティなしに戦闘に慣れる事が出来る上にお金も貯まるというクリスの提案は、ジンにとってまさに渡りに船だった。


 また、単純にクリスの気遣いが嬉しかったというのも、提案を受けた理由の一つだった。 


「お気遣い本当にありがとうございます。 是非お願いします」


 そうしてジンはクリスの提案に感謝し、何度もモンスター戦を繰り返した。

 10体ほど倒せば良いという話だったが、ついつい楽しくて何戦か追加してしまった。思った以上に体が動く事に加え、クリスが嫌そうなそぶりひとつ見せることなく逆に応援してくれた事もジンには嬉しくて、ついつい興が乗ってしまったのだ。


 戦ったモンスターはスライムと一角ウサギとゴブリンの3種類だ。どれも一見リアルだが、どこかデフォルメされた愛嬌を感じさせるビジュアルだった。

 額にねじれた一本角を持つ太った耳の短い兎といった姿の一角ウサギも、錆びた小剣や革鎧を装備した緑色の肌を持つ小鬼といった姿のゴブリンも、スライムの時と同様に特に苦戦することなく倒す事が出来た。


 運動音痴の老人が危なげなく戦えたのは、『武の才能』のおかげだろう。

 ジンは1対1では余裕だったので途中から敵を2匹にしてもらっていたが、その時は全部は回避しきれずに少しダメージを受けてしまう事もあった。しかし結局ジンは一度もHPが0になることなく、戦いを無事終えることが出来た。


 戦いを終え、ジンはドロップアイテムの整理をする事にした。

 HP回復ポーションをゴブリンがドロップしたので、これはそのままとっておく。他は全部を売って所持金を増やそうとしたが、1個だけ出た一角ウサギの角に関してはレアドロップ品だからと、クリスに売らずに確保しておく事をすすめられた。


 それならばと、ジンは一角ウサギの角を『鑑定』してみる。


〔一角ウサギの角…ごく稀に生まれる癒しの力を持つ一角ウサギの角。 主に調合で使用し、作成した回復系アイテムの効果を上げる事が可能。 ?????・?????・?????〕


 確かにかなり良いアイテムのようだ。

 高く売れるかもしれないが、確保しとくべきだろうとジンもクリスの意見に同意した。

 しかしあらためてジンは思う。

 鑑定しないとレアドロップかどうかわからないとは、もしクリスが教えてくれなかったらこの事にも気付くのに時間がかかっただろう。運良くレアドロップを引き当てても、気付かず売ってしまってたら目も当てられない。


 ジンはもう何度目になるかわからない感謝をクリスに捧げた。


 そうして追加戦闘を終了したジンの現在の状態は以下の通りとなった。


====================================

名前:ジン

年齢:18

職業:自由人

レベル:1→3(2UP)


HP:49/49(26UP)

MP:20/20(10UP)

STR:23(10UP)

VIT:20(8UP)

INT:14(4UP)

DEX:20〔8UP)

AGI:20〔8UP)


所持品

HP回復ポーション(小)×5(2個UP)

MP回復ポーション(小)×3

一角ウサギの角(New)


所持金

787G(287UP)

====================================


 装備やスキルに変化はない。

 レベルが3になってステータスが上がったが、ジンには体の動きなどがさらに良くなったという実感はまだない。

 ただ何度も戦闘を繰り返したおかげで、戦闘には大分慣れた気がした。


 またMPが20になったのでマナバレットが2発撃てるようになったのがジンには嬉しかった。先程の戦闘では数発しか撃てなかったが、かなりのダメージを与える事が出来た。


 剣と魔法を使いこなす自分を想像してジンは思う。魔法戦士は浪漫だと。


 そして肝心の所持金も、当初より5割以上増えたので問題ないだろう。

 上を見ればきりがないだろうが、これだけやらせてもらったんだから大丈夫だと、ジンは己に気合を入れる。


 そしていよいよこのチュートリアルと、そしてクリスとの別れの時が来た。


「ジンさんはもうすっかり慣れたようですね」


 腰の鞄の中にゲートを出現させ、お金や道具を出し入れするジンを見てクリスはそう言った。


「この方がそれっぽいかなと思いまして」


 ジンはちょっとはにかんで頭をかいた。


「ふふふっ。大事な事だと思いますよ」


 ジンとクリスは別れを前にして、お互い名残を惜しむ雰囲気があった。


「………」


 しばしの沈黙の後、振り切るようにクリスが口を開いた。


「それでは後はジンさんのお好きなタイミングで、このチュートリアルを終えられてください。あそこにあるドアをくぐれば『始まりの街アレスタ』です」


 そうしてクリスが指差す先には、いつのまにかぽつんとドアのみが立っていた。

 ジンは今もなお愛され続けている青いロボットの秘密道具を連想してしまい、思わず小さな笑いをこぼした。そしてその笑いをきっかけに、ジンは少ししんみりしていた自分の気持ちを切り替える。


「本当にクリスさんにはお世話になりました。クリスさんのおかげでもっとこの世界を楽しめそうです。本当にありがとうございました」


 心からの感謝の気持ちを込め、ジンはクリスに向かってきちんと頭を下げる。


「いえいえこちらこそありがとうございました。私も久しぶりにやりがいがある仕事が出来ました」


 それが役目とは言え、ゲームの世界だからと横柄な態度をとるプレイヤーへの対応には苦慮させられる事も少なくない。

 そんな中きちんと礼節を守った対応をしてくれたジンの存在は、一種の清涼剤のようにクリスの気持ちをリフレッシュさせてくれたのだ。 


「ジンさん、これを受け取ってください」


 そう言うとクリスは白い指輪をジンに渡す。


「これは快癒リジェネの指輪といい、これを装備するとHPがごく僅かですが自動回復する効果を持ちます。気休め程度のものですが、貴方の命を守る一助になれば幸いです」


「え?」


 思わぬ贈り物に固まるジン。


「これは私がそうしたいと思うプレイヤーの方に、こうしてプレゼントする事が認められている品です。正直さほど良い品ではないので恐縮ですが、序盤だけでも使ってください。後、よければ私のことはクリスと呼んでください」


 フルフェイスのヘルメットで隠れてクリスの顔は見えないが、きっと笑顔で言ってくれてるとジンは感じた。


「ありがとうクリス。俺の事もジンと呼んでくれ。この指輪、大事に使わせていただく」


 だからジンも、心からの笑顔でそれに応えた。

 

「それではこれで失礼します。ジンの今後に神々の祝福のあらんことを」


 クリスはジンに祝福の言葉を贈ると、最後に一礼した。 

 そしてその姿は徐々に薄れていき、クリスはその場から姿を消した。


 ジンはクリスの消えたあたりをしばらくジッと見つめた後、しっかりと一礼した。そしておもむろに振り返ると、眼下に広がる草原を見つめた。

 視界にはどこまでも続く草原と青い空がひろがっている。


 ジンの脳裏には様々な情景が浮かんでいた。


 子供の頃に遊んだRPG。今はもういない両親との思い出。兄弟との、たわいのない日常。可愛い甥っ子姪っ子、そしてその子供達の姿。若い頃の友人たちの姿と、今もなお友情が続く年をとった彼ら。大学時代の恋と挫折。社会人の苦労と幸福。長すぎる休暇と復帰。病院での出会いと別れ。


 その他にも様々な情景が、これまでジンが『神宮寺真一』として生きてきた人生のすべてが思い出される。


 人生も終盤の今、新しく知ったVR世界でクリスという新しい友人を得る事が出来た。今日まで良い事も悪い事も色々あったが、何だかんだで楽しかった。


 ジンは、『神宮寺真一』は思う。自分は生かされていると。

 だから、湧き上がる気持ちをそのまま言葉にして叫んだ。


「ありがとう。ありがとう! ありがとーっ!!」


 世界の全てに感謝の気持ちを届けた。


 少し経つとジンはちょっと恥ずかしくなった。

 別に気持ちに嘘はない。ただ年甲斐も無くこんなに気持ちが高ぶったのは随分久しぶりの事だった。


 ジンは大きく深呼吸すると草原に大の字になって寝転んだ。ドアをくぐれば本編に行けるが、別にあせる事はない。せっかくの良い気分なのだから、ちょっとここでのんびりしていこうとジンは思った。


「本当にありがたいな……」


 もう一度これまでの人生を想い、しみじみとつぶやく。ジンというより『神宮寺真一』としての呟きだ。

 そしてふいに、もう自分の人生はあまり残っていない事を実感する。


「こんな世界でもう一度人生がおくれたらな……」


 そんな思いが、たわいのない願望を口に出させた。


 ジンはそんな自分を自嘲して軽く笑うと、軽い眠気を感じて目を閉じた。


 草原に寝転ぶジンは、眠ってしまったのかピクリとも動かない。


 そして何の前触れも無く、ジンの周囲に小さな光が灯り始めた。

 一つ二つどんどん増えるそれら無数の光は、やがて一つの柔らかな大きな光となってジンを包みこむ。


 そして一瞬まばゆく光ったかと思うと、次の瞬間にはその光と共にジンの姿は消えていた。


 これがジンの初めてのVRゲーム体験の終わりであり、そして初めての異世界生活の始まりであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ