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楽しいキャラクターメイキング

「よし、機械関係のセッティングは全て終了! いよいよゲーム開始だ。くくっ、わくわくするな」


 老人は満面の笑みで皺を深くしながらモニターの前に座った。

 眼前にあるモニターには、事前に病院で検査済みのパーソナルデータが3Dで表示されている。 パンツ一丁のまるで自分のフィギュアのようなその様を可笑しく思いつつ、老人は早速設定を始めた。


「まずは年齢。……やっぱ思いきり若くせんとな」


 年齢設定のつまみを18歳にスライドさせると、それに合わせてモニター上のパーソナルデータもどんどん若返っていく。せっかくの仮想現実だからと、一番元気だった大学1年時の年齢に設定した。 


「次は足をちょっと長くして身長をその分高く、体形は若干細目の筋肉質にっと……」


 身長175cm、体重89kgだった若かりし頃を思い出しながら調整する。ちょっとした過去のコンプレックスの解消だ。


 何かと独り言が多いが、これも独り身が長い者の特徴と言える。


「顔はまあ、左右対称にして歪みを無くすくらいにしとくかな」


 モニター上では老人だったパーソナルデータが、現在では細身の好青年といった姿になっていた。

 もちろん元が元なので所謂イケメンではないが、老人的には中の上か上の下くらいにはなったと満足げだ。


「うん、良い感じだな」


 現在とは年齢もかけ離れた姿だが、老人は自分の理想像といった出来に満足する。種族はデフォルトの人族のままで、髪や肌の色も変えていない。


 このゲームでは、キャラクターの外観はかなり大胆な変更が可能だ。

 まるっきり別人の美形にする事も可能であるし、他にも例えば獣人族が種族なら犬猫兎などの各種獣耳が選べ、獣の度合いも耳のみ尻尾のみからもっふもふまで変更可能だ。

 また、妖精族であればエルフやドワーフ、魔族であれば魔人や吸血鬼等、様々な細かいバリエーションも選択可能と、かなり自分好みの姿でプレイ出来るようになっているのだ。


 老人も出来上がった自分の人間族の姿をドワーフやもっふもふにしたりして遊んでみたが、結局は一番落ち着くとの理由で種族は人族のまま変更しなかった。

 もちろんこのゲームは性別も変更できるのだが、彼は好奇心で試した事を後悔したようだ。

 女体化の記憶は速やかに無かった事にされた。


「我ながら気持ち悪かった。次いこう」


 外観モデルの設定を終え、次にスキル設定に移る。

 スキルは《才能スキル系》《補正スキル系》《ギフトスキル系》《能力スキル系》の4種類があり、ゲーム開始時に与えられる15ポイントを消費する形で習得するようになっている。

 


====================================


《才能スキル》

(習得必要ポイント 10P)

 …武の才能・魔の才能

 …剣の才能・槍の才能・斧の才能・棍の才能・弓の才能・格闘の才能

 …火の才能・水の才能・風の才能・土の才能・光の才能・闇の才能


(習得必要ポイント 6P)

 …創の才能


(習得必要ポイント 5P)

 …鍛冶の才能・裁縫の才能・錬金術の才能・調合の才能



《補正スキル》

(習得必要ポイント 1P消費する毎にLVも1ずつ上昇する MAXLV5)

 …HP補正・MP補正・STR補正・VIT補正・INT補正・DEX補正・AGI補正

(習得必要ポイント 3P)

 …身体操作補正・魔力操作補正



《ギフトスキル》

(習得必要ポイント 1P)

 …HP回復速度上昇・MP回復速度上昇・消費MP削減・必要経験値減少・獲得経験値増加・魅了耐性・麻痺耐性・石化耐性・毒耐性・呪い耐性・混乱耐性・眠り耐性・火耐性・風耐性・水耐性・土耐性・光耐性・闇耐性・健康・幸運・金運



《能力スキル》

(習得必要ポイント 1P消費する毎にLVも1ずつ上昇する MAXLV10)

 …剣術・槍術・斧術・棍術・弓術・格闘術・火魔法・風魔法・水魔法・土魔法・光魔法・闇魔法・二刀流・受け流し・回避・防御・指揮・鍛冶・錬金・調合・料理・裁縫・音楽・開墾・騎乗・調教・索敵・気配察知・魔力察知・鷹の目・気配遮断・罠解除・鑑定・看破・交渉・威圧・隠蔽


====================================



「やっぱり多いな」


 さすが自由度の高い成長システムを売りにしているだけあって、選択可能なスキルの数は多い。しかもこの一覧に表示されているものは一部でしかない。

 スキルレベルを上げる事や複数の必要スキル所持している等の、ある一定の条件を満たすと取得できるようになる派生スキルや統合スキル、隠しスキルなども存在するのだ。


 例えば両手剣を使い続けて剣術レベルが10になった時は、剣術LV10はそのままに新たに両手剣術LV0という派生スキルを自動習得する。そうなる事で両手剣での戦闘にボーナスが追加され有利になる事はもちろん、よりオリジナリティのあるプレイが可能となるのだ。


 また与えられたポイントは15Pしかないが、スキルによっては此処で選ばなくとも、ゲームの中でそのスキルを習得できそうな行動を繰り返す事で新たにスキルを習得する可能性がある。

 仮に剣術スキルを持っていなくとも、剣を振るなどの何らかの行動を繰り返す事で剣術スキルを習得するといった具合だ。もちろん習得条件や確率は公開されていない為、確実ではない。

 ただそうした発見を楽しむというのも、このゲームの魅力の一つなのだ。


「さあて、まずは才能スキルだな」


 才能スキルは習得Pも高いし、最大1つまでしか選択できない。だがどの才能スキルを選んでも消費P以上のスキルを同時に習得できるので、ポイント的にはお得だ。必要ポイントが多い分他のスキルに使えるポイントが減るが、どれか選択しておくのが初心者にはお勧めとなっている。


 ここの選択でゲームスタイルが決定する重要なところなので、男は気合を入れて確認する。


〔武の才能〕10P…武術や運動全般に関係する才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正 但し特化才能には若干劣る

 同時習得スキル〔HP補正LV3〕〔STR補正LV3〕〔VIT補正LV2〕〔DEX補正LV2〕〔AGI補正LV2〕〔身体操作補正〕


〔魔の才能〕10P…魔力や精神全般に関係する才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正 但し特化才能には若干劣る

 同時習得スキル〔MP補正LV3〕〔INT補正LV3〕〔DEX補正LV2〕〔魔力操作補正〕〔MP回復速度上昇〕〔消費MP削減〕〔魔力察知〕


〔剣の才能〕10P 剣に特化した才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正

 同時習得スキル〔HP補正LV3〕〔STR補正LV3〕〔VIT補正LV2〕〔DEX補正LV2〕〔AGI補正LV2〕〔身体操作補正〕〔剣術LV1〕


〔火の才能〕10P…火の魔力や精神に特化した才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正

 同時習得スキル〔MP補正LV3〕〔INT補正LV3〕〔DEX補正LV2〕〔魔力操作補正〕〔MP回復速度上昇〕〔消費MP削減〕〔火耐性〕〔魔力察知LV1〕〔火魔法LV1〕


〔創の才能〕6P…物づくり全般に関係する才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正 但し特化才能には若干劣る

 同時習得スキル〔HP補正LV1〕〔STR補正LV1〕〔VIT補正LV1〕〔DEX補正LV4〕〔鑑定LV1〕〔交渉LV1〕


〔鍛冶の才能〕5P…鍛冶に特化した才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正

 同時習得スキル〔HP補正LV1〕〔STR補正LV1〕〔VIT補正LV1〕〔DEX補正LV4〕〔鑑定LV1〕〔交渉LV1〕〔鍛冶LV1〕


「う~ん、悩むけどやっぱ武の才能かな」


 若い頃も決して運動が得意ではなかったが、年をとってさらに体が思うように動かなくなった。せっかくの仮想現実なのだから、体を思い切り動かしたいというのが男の考えだ。

 使いたい武器が決まっていれば特化才能の方が良いのだろうが、武器なんて現実には持った事もないのだから色々試したい。それに《武の才能》の説明にある運動全般に効果があるという一文が気に入った。何となく運動神経が良くなるようで気分が良いというのも、老人が決めた大きな理由だ。


 老人にとっては楽しめる事が第一で、効率や最強は求めていないのだ。実際、才能系スキルを習得する事と最強は必ずしもイコールではない。何を持って最強とするかは人それぞれだが、すべてはスキルの組み合わせと成長次第なのだ。


 結局老人的には納得がいったので、武の才能を選択する。すると同時習得としていくつか補正スキルもついてきた。


〔HP補正LV3〕…HPの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい (最大LV5)

〔STR補正LV3〕…STRの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい(最大LV5)

〔VIT補正LV2〕…VITの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい(最大LV5)

〔DEX補正LV2〕…DEXの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい(最大LV5)

〔AGI補正LV2〕…AGIの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい(最大LV5)

〔身体操作補正〕…アシスト機能によるスムーズで効率的な身体運用 具体的なイメージが強いほど効果的な運用が可能になる


 ステータスが上昇するとその項目に応じた能力とアシスト機能が強化され、全身金属鎧フルプレートアーマーで100mを13秒台で走る等の現実的にはありえない行動も可能となる。

 だがポイントが5Pしか残ってないこともあり、老人はこれ以上のステータス補正系のレベルアップは不要と判断した。

 また、〔身体能力補正〕はまさに運動神経が良くなるイメージそのままだったので嬉しかったが、これなら同系統の〔魔力操作補正〕も重要スキルなのではないかとチェックする事にした。


〔魔力操作補正〕…アシスト機能によるスムーズで効率的な魔力操作 具体的なイメージが強いほど効果的な運用が可能になる


「うん、これ必須だろ」


 メインは武術系でも、せっかくのファンタジーだから魔法も使ってみたいと思っていたのだ。運動音痴ならぬ魔法音痴では元も子もない。ただでさえ魔法なんて謎の技術なのだから、若い者と違って適応力が落ちている自分には必須じゃないかと老人は考える。


 残り5Pのうち3Pも使うが仕方がないと、この〔魔力操作補正〕も選択する。


「残りはたった2ポイント。どう使うかな」


 老人は残ったギフトスキルと能力スキルを眺めながら考えをまとめる。 

 ギフトスキルは基本的に常にその効果を発動しており、スキルレベルはない。 能力スキルは〔剣術〕や〔火魔法〕のような技術系のスキルと、〔鑑定〕や〔気配察知〕のような個人能力系のスキルの2種類があるように感じる。そしてどちらもレベルは10まで上げる事が出来るのは共通しているが、イメージ的に〔剣術〕のような技術系のスキルのほうがレベルアップさせやすく、かつ習得もしやすいと感じる。

 ただ剣術などの技術系スキルは、レベルを上げる事で武器から衝撃波を飛ばす等の必殺技的なものを覚える事ができる。ロマン的な楽しみもそうだが、戦闘を考えると武器系と魔法系のスキルを最低1個ずつは所持しておきたいところだ。


 悩みに悩んだ末、老人が選んだスキルは…


====================================


〔武の才能〕10P…武術や運動全般に関係する才能 成長率・成功率・習得率等にプラス補正 但し特化才能には若干劣る

 同時習得スキル

〔HP補正LV3〕…HPの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい

〔STR補正LV3〕…STRの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい

〔VIT補正LV2〕…VITの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい

〔DEX補正LV2〕…DEXの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい

〔AGI補正LV2〕…AGIの初期値と成長率にプラス補正 LVが高いほど効果が大きい

〔身体操作補正〕…アシスト機能によるスムーズで効率的な身体運用 具体的なイメージが強いほど効果的な運用が可能になる


〔魔力操作補正〕3P…アシスト機能によるスムーズで効率的な魔力操作 具体的なイメージが強いほど効果的な運用が可能になる


〔健康〕1P…病気にかかりにくく怪我も治りやすい 状態異常になっても一定時間で全回復する


〔鑑定LV1〕1P…対象の情報を知る事が出来る 効果はLVに依存する


==================================== 


 結局老人は最後のスキルに〔健康〕と〔鑑定〕を選んだ。 

 大学生の頃に無茶苦茶な食生活がたたって糖尿病と診断されてから健康には縁がなく、つい最近も大病を患って1年近くも入院していた身としては、例えゲーム上の能力ではあっても〔健康〕は外せなかったのだ。

 

 そして最後の1ポイントは悩みに悩んだが、後から習得しにくいが便利そうなスキルを考えて〔鑑定〕に落ち着いた。

 加齢と共に物覚えも悪くなっていたので、人や物の名前を忘れた時などに便利じゃないかと割と切実な考えからだった。 

 また戦闘用のスキルは《武の才能》の効果で武器スキルは覚えやすいであろうし、魔法スキルもゲーム内で覚える楽しみが出来るじゃないかと老人はポジティブに考えたのだ。


「よーし終わったー。だけど結構時間かかったな」


 老人がゲーム設定を始めてから、すでに1時間以上が経過していた。


「ふふふっ、けど楽しいな。やっぱり良いものだ」


 だが老人に疲れの色はない。そこにあるのは、ただ夢を叶えつつある事への満足感だ。


「よし! 水分補給とトイレにいったら、いよいよログインだ! わくわくするな」


 老人の初めてのVRゲームまであと少し。目を細め楽しげに語る老人の笑顔は、まるで少年のように屈託がなかった。

老人口調の喋り方を、普通の喋り方に変変更しました。

違和感を感じるという意見も多くいただき、確かに自分もそう思いましたので。


ご意見を下さった皆様、ありがとうございます。

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[良い点] ぼくも主人公神宮寺?でしたっけ?の選んでいく考え方にすごく同感でしたね。最後の二つも、僕も同様に選んだと思います。情報を得られることの大切さ、重要さはどの世界でももっとも重宝するのではない…
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