ー余話1
配信が終わった翌日の10時にiPhone14が鳴った。
「はい。カスミです。お仕事?プライベート?案件?アンチ?暇潰し?」
ーお仕事でー
「はい。ご用件を伺います」
ーアメリカンDDのジョンネズミスと申します。ご契約の件でお電話しましたー
「なりすまし確認です。フィメールサーバントバンドのマネの名前と、そのマネが最初に取得した免許皆伝の古武道は?」
ー山崎恭之助。薩摩示現流ー
「確認しました。ご用件の内容をお願いします」
ー新宿のトリニティブルーで契約交渉をカスミさんと行いたいので、お越しいただけますか?ー
そこからスペースマウンテンのように突っ走って、気付くと一年が過ぎていた。
ワールドツアーが始まり、日本公演のオフにホテルを抜け出した。朝始発の電車に乗り、朝の通勤通学の中をスーパーウナバラまで歩いた。
「えっ?なにこれ?」
看板は錆びが流れ落ち、下側しか文字が見えない。駐車場はロープが張られ、草がアスファルトを突き破って生い茂っている。
店舗はスプレーで文字がスプレーされ、ガラス窓には板が張られている。
その下にビニール袋を持ったニューヨークギャングが居た。こっちを見ている。
「カスミじゃね?なりすましか?」
「本物だよ。確認する」
「そうだな?ファッキンウナバラの元歌詞は?」
この歌はコンプライアンスをクリアする為、大幅に変更された。しかし元歌詞を知ったニューヨークギャング達は、好んで元歌詞で歌って踊った。カスミはアカペラで歌い上げ、彼は見事なヒップホップダンスを披露した。
「アンパン吸う前で良かった。あんたはツいてるよ」
「まったくついてる。明日横浜アリーナで18時から歌うんだけど?後ろで踊ってくれない?」
「まじかよ?みんな頭吹っ飛ぶぜ!」
「その代わりお願いが有る」
「良いだろ?何だってやるぜ!」
「このスーパーのオーナーに借りが有るの、探してくれない?」
「それなら楽勝だな。歌舞伎町のゴミ捨て場に行けば会えるよ。でも、あんたが行くと大騒ぎになるから、横浜アリーナに連れて行くよ」
「使えるね!名前は?」
「アンパンキッドだよろしく!」
「素敵な名前ね」
「あぁYouTubeは、使えないって拒否られたけど」