よくある異世界転生話?
20年ぐらい前のそこはかとなく良き時代。
「……悪い。電源切っとくの忘れた」
聞き慣れないアラームでうっすら目を覚ましたら、耳元で少し鼻声気味の低い声。
優真……? いつのまに声変わりを……。
ベッドのヘッドレストのケータイを掴んだ大きな手、筋肉質の男の腕を見て、硬直した。
なんなんの……? 異世界なの?
それ以上の言葉が思い浮かばないあたしの耳にため息が届いた。
「風呂入るだろ? お湯入れてくる」
そう言って、すっぽんぽんでベッドを降り、ガラス張りの浴室に入っていくのは紛れもなく林田で。
ガチャッとガラス戸が閉まる音と同時に、ベッドの中で自分のカッコを確認した。
全裸。パンツも穿いてない。
……ということはつまり……。
ふと思いついて、ベッドの横のゴミ箱を確認すると、使用後のティッシュで溢れていた。
くらっと眩暈がして、再びベッドに頭が崩れ落ちる。
……何なの、これ。夢なら覚めて……。
受け入れられない状況を顔を振って拒絶してシーツに擦りつけたけれど、確実に頬が痛くて鼻の奥がツンとした。
……わたし、やらかしたみたいです。
禁断の『不倫』というものを。
20年前に書いたものなので、ケータイです。
iモードとかが主流の頃。
スマホなんてなかったです。
時代の流れって恐い。