光の勇者、空を飛ぶ。
うたたねしてたら、夢に見たので。
転生した。
光を操る力を授かった。
天から光を呼んだり。
敵に向けて放ったり。
思考が速くなったり。
無限再生力あったり。
有頂天。
夢にまで見たチート転生。
聖光無双。
実質不死身。
いぇい。
聖なる光の勇者。
民衆も貴族も国王も、俺の前には跪く。
魔王討伐、どんとこい!
ただ。
最後の最後までは、割りと順調だったのに。
対魔王戦。
これは予想外。
聖なる光の力を借りても、倒せない。
魔王の名に恥じぬ、凄まじい難敵。
勇者パーティの面々も次々に倒れ、敗北寸前。
起死回生の一手が、必要だった。
だから、実行したのだ。
転生の神から、できればやめとけ、と言われていたっけ。
生命力を消費して、全身を光に変換。
聖光転身。
聖なる光の威力と速度で、敵を討つ!
一撃必殺、光の勇者、最大最強の絶技!!
──かっこいいから、死ぬまでに一度は試そうと思ってはいたが。
……まさか、こういう結果になるとは予想外。
現代人なんだもん、事前に想定すべきだったよなあ、的な。
つまり。
魔王は、倒せたと思う(たぶん)。
そこまでは、問題ないんだ。
……計算してみよう。
光の速さ。
つまるところ。
秒速、30万km。
音速、マッハ88万超。
時速、10億8千万km。
……光に変わった俺、魔王に体当たり。
予定通り、貫く。
歓喜しながら、全身を生身に変えて止まろうとした。
脳の思考が全身に届くまで、1~2秒。
つまり。2秒後の、俺の位置は。
(月の裏側って、ほんとにでこぼこなんだなあ。。。)
大気圏を超え、宇宙空間に到達した俺。
月までの距離、約38万kmを秒で飛び越え。
どことも知れぬ、遥かな旅路へ。
(たぶん。偶然なにかにぶつかるまで、止まれないよなあ。。。)
慣性の法則。
動き出したら、止めない限りは動き続ける。
ガリレオさんっ、ニュートンさんっ。
あなた方は、正しかったです。
……そして、俺は。
宇宙に煌めく、一筋の流れ星になった……(投げやり)
神様。
あんまり勇者を気にかけられないくらい、忙しいって言ってたけど。
……うえぇぇぇん、助けてぇぇぇぇ(号泣)