満月の夜
ーー?!
なんだ?
このぎりぎりする感じは。
何か切れ味の悪い刃物が、通った様な感じ…。
2日連続で何かわからない物に苛まれてる気がする。
覚えてないから正体がわからない。
…こんな事初めて過ぎて、どうしたらいいかわらない…。
ーー何故、こんな思いをしてるんだろう…?
何故…。
そうだ…今夜は満月。
ここで迎える最初の満月。
何が起こるかわからない夜。
苦しみを感じるかもしれない。
堪えられるだろうか?
ーーもし。
堪え難い苦しみだったら…。
もし。
体が燃える様な苦しみだったら…⁇
魂が溶ける様な苦しみだったら…⁇
どう堪えればいい?
自分がどうなるかわからないのは、こんな感じ⁇
ーー「わからない」とはこんなに恐れを感じる…⁈
どうしたら、いいかわからない…。
ーー考えたくないのに、考えてしまう。
こんな思いをするなら…。
時が進まない牢獄に閉じ込められた方がまだ、よかった。
ーー月の満ち欠けがこんなに憎いなんて初めて…。
とりあえず、誰にも会わない方が良いだろう。
月が見えるように布をピンにかけた…。
とりあえず…月が満ちるまで時間が経つのを待とう…。
はぁ…本でも読むか…。
…振り返るとブロンのショルスにタンザナイト色のカァド、ショルスにはブロンのロゥジァが、右の半分に咲き誇っている美女が。
「次は、私と踊ってくださらないかしら?」
光栄なお誘いだ。
「はい、喜んで!」
さっと美女の手を取る。
美女が回るたびタンザナイト色のカァドが煌めく。
決して、露出が多いわけではないが何故か色気を感じる。
「ふふっ貴方と踊っているだけなのに不思議ね。楽しいわ。」
クルクル回る。
「僕も楽しいです。」
美女があまりに楽しそうに踊っているから、僕も楽しくなってきた。
「本当は、始め不安だったのよ。
着飾ったり、踊ったりするのは趣味じゃないから。」
「でも、とてもお上手です。それにとてもお美しいです。」
クルクル回る。
もうすぐ、終わってしまう。
この美女なら、次のお相手が待っているだろう…。
嫌だ。
もう、少しでいい。
この美女と一緒にいたい。
曲が終わってしまった…。
…あれ?
美女が僕の手を引く。
「こっちよ。少し話ましょう。」
え?
まだ、一緒にいれる!
「はい。」
「貴方のよ、お飲みになって。」
2人で外へ涼みに出る
泡がパチパチ弾ける。
それは、瞬く星の様だった。
ごくり、ごくり。
「ハァ、やっぱり貴方、素敵だわ。」
「え?」
「ごめんなさい!初めてお見かけした時、気が乗らないスヮリィだったはずなのに貴方を見て瞬く間に気が変わった物だから…。」
「そんなっ!嬉しいです!!」
お世話だろうか?
だと、しても嬉しい。
照れ臭い…。
美女はとても不思議な魅力の持ち主だった。
話し方や仕草が色っぽい。
もう、追わずにはいられない…。
!?
ーー窓を見ると月が赤い夜空に天高く昇っていた。
え?
えぇぇ⁈
何度観ても満月は、天高く昇ってる。
何も起こらない?
おかしい…。
今までは「何か」あった。
何故?
まぁ…ないならそれでいい。
むしろ有難い。
時が進むのを甘んじて、受け入れよう…。
頭からクロスを被った。