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覗く瞳の零星少女  作者: 刺縫依彦
番外編
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輪転、諦念、予感

番外編になります

これは呪いか、それとも祝福か。

死は巣立ちであり帰巣でもある。そう決められた僕らは、始まってからどれほどその営みを繰り返してきたのだろうか。片手でそれを数えられる者は僕以外に存在するのだろうか。

ひたすらに繰り返される輪の中で、兄妹達は既に狂ってしまっている。死が終点と創造の始点であり、世界の礎であることを放棄し、己が為に与えられた選択肢のひとつへと成り果てている。


それは正解なのだろうか?

問うても姉は応えない。


その疑問が泡のように浮かぶ時、古い記憶だけが僕に応える。


たった一度だけ、姉以外に質問した事があった。

我らが父と言うべき存在が産み出し、我らが母と言うべき存在が己の意思を宿らせた、その人形に。

彼女はほんの少し、きょとんと不思議そうな目で僕を見た後、微笑んで、然も当然かの様に答えた。


「彼の人を次は失わない為よ」


その言葉は「次」を信じて疑わない様で、その純粋な瞳は嘘ではない事を物語っていた。

それは呪いでも、祝福でもなく。ただ、エゴと狂愛だけが人差し指を口に当て微笑んでいた。


これは呪いか、それとも祝福か。

己の中では割り切れない、定められた営みを今日も僕は先伸ばす。

いつかまた、姉が応えてくれる日は来るのだろうか。叶うとしたら、僕は一体どんな代償を支払うのだろうか。


ふと、あの子を思い出す。

営みの中に在りながら、僕にとっては戯言のような夢を本気で実現させようと狂ってしまった妹を。僕にとっての姉のような存在は、あの子にとっては星なのだ。どれ程遠く離れていても、煌々とその道を示し続けているのだ。

色のない世界で目を覚ます。忘れることの出来ないこの感覚をあの子はどれ程繰り返してきたのだろうか。あとどれだけ繰り返せばあの子は報われるのだろうか。色のない世界を切り裂く程にその星は輝いているのだろうか。

答えはもう、知っている。その代償は知らないけれど。


空は白味を増し、僕はゆっくりと起き上がる。

ひとつ伸びをして、いつもの様に姉の形見を握り締める。

「いってきます」

視界の片隅で、握られたハルバートの刃先に小さく眩い光がきらりと反射したような気がした。

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