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2/2

中編

 前の更新から二ヶ月以上。めちゃくちゃ久しぶりになってしまいすみません……。

 さて、領主であるポーギーはその頃どうしていたかというと、デヴィッドを潰す計画を立てていた。

 自分は想い人のアマンダを忘れられず婚期を逃した独り身、それも童貞だというのに、ライバルのデヴィッドは大層綺麗な女を娶ったのだ。


 嫉妬しないわけがなかった。


「しかしデヴィッドは嫁を虐げているようだな」


 実はデヴィッドの屋敷に密偵を送り込んでいたので、ポーギーは全てを見ていた。

 離れに閉じ込められたクラウディアが床で食べさせられていることも、お仕着せを着て、働かされていることも。


「それを世に出せば……」


 大きな醜聞になる事間違いなし。

 ニヤリと口角を吊り上げたポーギーは、クラウディアの父のいる商会へ足を向けた。


 ──そしてやって来た商会にて。


「ようこそいらっしゃいませ、ポーギー卿。我が商会にどんな御用でいらっしゃいますかな?」


 そう言いながら人の良さそうな笑顔を浮かべる、クラウディアの父親である商会長。

 しかし実は、金の事しか考えていないクズである。


 だから利用しやすい。

 適当なものを注文してそこそこの大金を払った後、ポーギーは彼にクラウディアの待遇を話し、その上で自分と組まないかと彼を誘った。

 うまくやればデヴィッドから大量の慰謝料を奪えるだろうと、そう言って。


「……ふむ。なかなかに悪くないお話ですな」


 商会長は少しも躊躇わずに即決して、頷いた。

 そして静かに、デヴィッドの屋敷へ向かう支度を始めた──。





 ポーギーが今の地位にのしあがるためにかなり後ろ暗いことをやっているのを、デヴィッドは知っていた。

 それを明らかにするため、証拠集めをしなければならない。


 デヴィッドがこっそり動き始めたことを、クラウディアは知らない。

 相変わらずアナスタシアに教えを受けながら、今度はお茶を淹れる練習をしていた。


「下手くそですね。そのお仕着せは飾りではないのですよ、クラウディア様」


「すみません」


 クラウディアは謝りながらもまたカップにお茶を注ごうとするが、失敗して机を水浸しにしてしまった。

 彼女、掃除や洗濯はできるようになったが、お茶を淹れるのだけは何度やってもダメだった。


 だが、アナスタシアの言う通り、せっかくお仕着せを着ているのだからただの飾りにしたくない。

 もっと練習しなければと、もう一度お茶を淹れ直そうとした、その時。


「アナスタシアさん」


 クラウディアが見かけたことのなかった、屋敷の方で働くメイドがアナスタシアに走り寄ってきた。

 何事かと振り向くアナスタシアとクラウディア。そんな二人に、メイドは言った。


「クラウディア様のお父上がいらっしゃいました。クラウディア様にお会いしたいと」


 メイドは知らない。今アナスタシアと一緒にいるお仕着せの少女が、クラウディアであることに。

 クラウディアはサッと青ざめた。


 父に限ってクラウディアを心配して会いに来る、なんてことは考えられない。

 クラウディアとデヴィッドの関係をどこかから聞きつけ、それを理由に離縁させるつもりなのかも知れなかった。そうするときっと、慰謝料として大金が得られるし、もう一度クラウディアを嫁がせて金にすることができるから。


 ……嫌だ。


「わかりました。私が対応しますから、あなたは下がっていて」


 アナスタシアが指示すると、メイドは静かに姿を消した。

 部屋に残されたのは、クラウディアとアナスタシアの二人きりになる。


「クラウディア様、顔色が優れないようですが」


「すみません。ただ――」


「現在、旦那様は不在です」


 アナスタシアはクラウディアの声を遮って言った。


「招かれざる客人には、お帰りいただきましょう」





 証拠集めのために各地を飛び回っていたデヴィッドがやっとの思いで帰り着くと、屋敷はやけに騒がしかった。

 まるで、中で大喧嘩でもしているかのような。


「何だ……? まさか!」


 クラウディアの身が危険に晒されるようなことがあれば、デヴィッドは正気ではいられなくなる。

 彼は慌ててクラウディアの無事を確かめるため、屋敷の離れに飛び込んだ。


 ――しかし、時すでに遅し。

 部屋の中は荒れに荒れていて、カップが割れてカーペットに紅茶のシミを作っている。その中央でアナスタシアが数人の男に取り押さえられジタバタともがいていた。


 ただ事でないことくらいはデヴィッドにもわかる。ただ彼が心配なのは一つだけ。


「アナスタシア、これはどういうことだ。クラウディアはどうした!?」

「旦那様、申し訳ございません。数で押し切られました。クラウディア様は……」


 アナスタシアが指差すのは、デヴィッドが入って来たのとは反対側の扉。

 そこから何者かが押し入り、そしてクラウディアを連れ去ったということらしい。


「うおーーーーっっっっ!!!!」


 口から血をこぼさんばかりの雄叫びを上げたデヴィッドは、怒りに任せてアナスタシアの上の男たちを蹴散らした後、離れの外へと突撃していった。

 どうにか気絶する男たちの下から抜け出したアナスタシアはそれを見つめながら深くため息を吐く。


 クラウディアの父の他にもポーギーまでやって来て、一人では守り切ることができずにクラウディアは連れ去られてしまった。

 クラウディアは全力で嫌がっていたのを見るに、父親がクズなのだろう。実際クラウディアを連れ去ったのは、デヴィッドと別れさせて慰謝料をぶん取るためだろうし。


 これは自分の不手際だ。「お帰りいただきましょう」などと言っておきながら追い返せずに、守らなければいけない奥様を誘拐されたのだから、後で相当叱られて最悪解雇されてもおかしくはない。


 けれどもきっと旦那様なら大丈夫だろうと確信している。だからデヴィッドがクラウディアを連れて無事に帰ってきたら叱責を甘んじて受けようと思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] うおおお、いっけえええ!!!!
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