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 少女にTシャツをかぶせた後、何度もここでジッとしているように言い聞かせ、落ち着きなく由利は買い物に出て行った。


 一週間前の高額バイトの金がまだ残っていたので、まずは駅前のスーパーで、女の子の服を上から下まで一式買い揃えた。しかし、あえて売り場のおばちゃんに、妹の服を買いに来たと言い、見繕みつくろってもらったのだが、逆に明らかに不審な眼で見られてしまった。


 帰りにはコンビニで何か食べ物をと思い、立ち寄ったのだが、

 ――天使って何食べるんだ?

 ハタとそう考えてまた困ってしまった。おにぎりや弁当はイメージが違う。

 ――やっぱりパンか・・・

 菓子パンやクロワッサンなど、洋風なものをいくつか籠に入れレジに向った。

 


   ****



「君、名前、なんて言うの?」

 部屋の真ん中に据えた、小さなこたつテーブルに向き合って座り、由利が少女に尋ねた。

「ミカ・・・」

 そう答えた少女は、さっきコンビニで買って来たクロワッサンに、おいしそうにかぶりついている。

「そう、ミカちゃんって言うんだ」


「お兄ちゃんは?」

 食べながらミカが上目遣いで由利に尋ねた。

「俺? 俺は由利健人・・・」

「けんと!」

 由利が言い終わる前にそう呼んで、ミカは嬉しそうに彼を見てまた微笑んだ。

 ――うっ、か、かわいい・・・。幼女を愛でる趣味などないが、流石にこれはかわいすぎるだろ!!


「あ、いや、そんなこっちゃない。君、どこから来たの? どうしてここに居るの?」

 ミカは首を傾け、少しの間上を向いていたが、

「う~~ん、わかんない!」

と、大きな声で答えた。

「えっ!? なんで? じゃあ、おうちはどこ?」

「ここ!!」

 今度は間髪を入れずに答えた。

「はっ? 何を言って・・・」

「だって、ミカ、ここで生まれたんだもん」

「なんだって!?」


 会話は終始噛み合わないまま食事を終え、次に買って来た服をテーブルに並べて見せた。

「よくわかんないけど、一通り買って来たから、これ着てみて」

 ミカは並んだ服や下着をいちいち手に取って見ていたが、やがて、

「ミカ、着たことないからよくわかんない。けんとが着せて!!」と言った。

「えっ!? いやいやいや、なに言っての、そんなのダメだってば!」


 結局、手伝いながら一緒に服を着せてやった。できるだけ見ないようにとは思うものの、時折覗く白く透き通るような肌、華奢なかいなに細く美しい脚、チラチラと視界に入って目の毒だ。


 ――本当に天使みたいだ。いや、それにあの翼・・・。やっぱり天使なのか? 俺の部屋に天使が舞い降りた!?

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