Ⅳ
「猟奇殺人、ってヤツ? それにしちゃ、遺体がなくて、骨が数本。
床に残っていた血痕と、骨のDNAは一致。この部屋に住んでいた女のものだったらしい。」
床に足を投げ出して座り、休憩に入った矢田部が話し出した。
「そんな・・・。残りの身体、骨とかいろいろ、どこ行っちゃったんすか?」
同じく床に胡坐をかいて座っていた由利が尋ねた。
「さあね。だから警察も訳わからない。変な事件だって。自殺や変死して骨だけになったにしたって、残りの骨はどこへ行ったんだ。第一その女が亡くなって、骨だけになるにはどんだけ時間が掛かるんだって話さ。しかも数本しか残ってないって・・・」
「犯人が残りの骨を持ち出した、ってことっすか?」
「お前が犯人なら、殺人を隠すのに証拠になるモノをわざわざ少しだけ残して行くか?」
そう言うと、矢田部は朝ここへ来る途中で買った缶コーヒーを開けて口に付けた。
「そりゃそうですよね。どういうことだ・・・。この部屋だってすごく汚れてるとか、埃が溜まっているって程でもないし、自然と骨になる時間なんて経ってないっすよね」
「警察の話じゃ、亡くなって、発見されるまで一週間も経ってなかっただろうってさ」
「ええっ? それじゃどうやって遺体を骨にしたんすか?」
「俺が知るか! 鍋でぐつぐつ煮て溶かしたんじゃねえの」
「うえ~。気持ちの悪いこと言わないでくださいよ~~」
一瞬想像してしまい、思わず由利は口に含んでいたミルクティーを吐き出しそうになった。
「まっ、そんなこと有り得ないけどな。――この間、亡くなった祖父さんの葬式に行ってきたんだけどさ、火葬場でお骨になるまで一時間以上掛かったよ。それを考えると、人一人をここで骨にするって、とんでもなく大変なことなんじゃねえの」
「ほんと、なんだかよくわからない話っすね・・・」
「そうだな・・・。まあ、いずれにせよ俺たちには関係のない話さ」