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 なにかが鼻先をくすぐる感触があって、由利健人は目を醒ました。背後にある窓のカーテンの隙間から、細く伸びた日差しが差し込んでくる。

 ――もう朝か・・・

 まだ夢心地の由利の頰を、淡いブリュネットの卷毛の先が再び掠めた時、これは夢ではないと気がつき、目をひらいて驚いた。

 ――隣に、誰か居る?


「・・・だれ!?」

 由利が目覚めたことに気がつくと、相手も軽く寝返りを打ち、見知らぬ少女が、上目使いでこちらを見てニッコリと笑った。

 思わず飛び跳ねるように身を起こす。勢いで夏用の肌掛け布団が半分ほど捲れ上がった。その瞬間、全裸の少女の姿があらわになる。七、八才くらいだろうか。


「うわっ!!」

 慌てて捲れ上がった布団を掛け直す。

「君は一体?・・・」

 少女は頭まですっぽりと被っている布団からチラリと顔を覗かせ、黙って由利を見つめ、小首をかしげて微笑んだ。

 そうしてゆっくりと身を起こした時、肩口に引っかかっていた布団が、ゆるゆるとずり落ちた。

 こちらを向いていた少女は、前を隠す物が何もなくなったのに気がついて、頰を赤らめすぐに後ろを向いた。

 身をよじった彼女の背には、鳥のような白い羽が、淡い光を放っている。


「・・・天使!?」

 そう呟いた由利は、ふと思い当って、出窓の棚に置いてある、蘭の鉢植えに目を遣った。

 すると、昨夜ゆうべ寝る前までは確かに、一輪だけ大きく咲いていた、鳥の翼の形の純白の胡蝶蘭の花が、いつの間にか姿を消していた。

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