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プロの諜報員が異世界に転移した。  作者: 関節貴族 膝小僧
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4.

リーナとライルは怪我人を例の洞穴まで運び、体を温められる毛布や起きた時に食べられるように食べ物と飲み物水をそばに置き、2人は一旦城に戻った。

城に戻った2人は今日あったことをリオナに話して聞かせた。

「今日はとても忙しい日だったみたいね。それでその方は大丈夫かしら?」

2人が困っている人に迷わず手を差し伸べたことへ嬉しさと、怪我人と2人に危険の可能性を少し心配しながらリオナは話す。

「わからないわ。心臓は動いていたみたいだけど、呼吸も弱々しかったから・・・。できる限りのことはしたけどあとは本人次第だと思う。」

リーナは本心からあの怪我人が元気になることを祈っていた。

初めは母の言葉を思い出し渋々なところがあったが、真剣に治療している中で情のような物が湧いてきた。

「お母様?もしあの人が目を覚まして困っているようならここに連れてきて匿ってもいい?責任は私が取るから!」

「もちろんいいに決まっているじゃない。私はただあなた達に危険がないならあなた達が何をしたって構わないわ。」

「おかあさま。ぼくもする!」

「ええ、ライルにも頼むわね。その方の怪我が治るように頑張りましょうね。」

いつもリオナの薬代を捻出するのに精一杯で自分達のやりたいことを主張することがなかった2人が初めてやりたいと言ったことが、「困っている人を助けること」だったのが母は誇らしく思った。

「それじゃ明日のためにも今日は早めに寝なさい。疲れてでしょ?」

「「はいお母様」」

3人はそこまで広くないベッドで仲良く眠りについた。







次の日の朝、リーナはいつも通り早く起きて3人分の朝食の準備をする。

昨日のうちに買った硬めのパンと八百屋のおじさんからもらった野菜のくずで作った薄い味のスープをテーブルの上に並べる。

「お母様、ライル起きて。朝食の準備ができたわよ。」

まだ夢から覚めていない2人を優しく起こす。

「ありがとうリオナ。今日の朝食も美味しそう。」

少し前まではリオナが準備をしていたが、体調がここ最近悪化してしまい、朝起きて朝食を作ることが困難になってしまった。

それからはリーナが率先して家事をこなしている。

「んんん・・・。ぼくまだ眠い・・・。」

ライルはもっぱら朝が弱く、いつもライルを起こすのに手を焼いている。

そんな時はいつもリオナが優しく起こしてくれるのでリーナは着替えの準備をしている。

国王の寵愛を失った一妾とその子供達が持っている服などたかが知れている。

それこそ城に住んでいながらも、身につけているものは平民と変わらない。

住んでいる場所も城と言っても離れの手入れのされていない廃墟同然の建物だ。

「ライル早く起きて。昨日の女性の様子を今日は見に行かなきゃいけないんだから。」

いつもはもう少しのんびりしているが今日はそういうわけにもいかない。

いつもより早めに出て様子を見に行ってから薬草採取、換金、薬と、夜と明日の朝の食事の調達をしなければならない。

「わかった!」

最後のリーナの言葉か効いたのか、ライルはさっきまでとは打って変わって元気よく飛び起きた。

「お姉ちゃんぼくのお洋服とって!」

「はいはい」

現金なライルをやれやれと見つめる。

「元気になっているといいわね」

リオナはそんな2人を愛おしそうに眺めながら自身も起き上がる。

今日の食卓もそんな2人の元気な声が飛び交う。






朝食を食べ終え、昨日女性を避難させた洞穴へリーナとライルは急ぎ足で向かう。

ガサガサと背の高い草をかき分け、やっと入口が見えた。

そこには昨日避難させた時とままの女性が横たわっていた。

「まだ、目を覚ましていないわね。まあそうよね、あれだけの怪我だったもの。」

「お姉ちゃん大丈夫かな、この人。」

少し泣きそうになりながらライルはリーナに問いかける。

「きっと大丈夫。絶対に目を覚ますわ。・・・・さ!包帯を変えるわよ!」

かけていた毛布をどけると、昨日巻いた包帯は女性の血で真っ赤に染まっていた。

「これは大変だわ。昨日採った止血草たりるかしら。」

止血草は使用頻度が高いため薬草採取では定番の薬草だ。また季節場所問わず生息しているため、足りなければ採りに行けばいい。

「ライルお願いがあるの。止血草を採ってきてほしいの。でもお姉ちゃんが見えるところまでしか行ってはダメよ。」

「わかった!さっきあそこでみたからあそこで採ってくる!」

ライルが指差した場所は6mくらいの場所だ。

「うん、わかったわ。お願い」

ライルは元気よくうん!と返事をすると駆け足で採取に向かう。

幼いながらも、リーナについて薬草採取について周ったため、簡単な薬草とその採取方法などは理解していた。

さて、とリーナは真っ赤に染まった包帯をとる前に止血草をすり潰す作業に移った。

止血草は草のまま貼り付けてもいいが、すり潰して患部に塗った方が飛躍的に効果が出る。

ただ、塗る直前にする潰さないといけないので今日は道具を持参してきたのだ。

その間、女性はピクリとも動かなかった。




「ふう、終わった。」

少し肌寒いのにも関わらず額に浮かんだ汗を拭ったリーナはつぶやく。

「このお姉ちゃん大丈夫かな?」

ライルが心配そうにいう。

「昨日よりは出血が少なくなっていたから、大丈夫だと思うわ。だけど・・・・。」

傷は悪化しなければ問題ないが、目を覚さなければ食事ができない。そうすれば餓死してしまう可能性がある。

それをリーナは心配していた。

先ほどリーナはせめて水だけでもと思い、女性の口を少しあけ水を数滴流し込んでみたが、喉が動くことはなかった。

このままでは怪我以外の理由で命が危ないが、2人にはどうすることもできなかった。

「お医者様に見せられたらいいのに・・・。」

「そうね。でもこの人の傷の原因がわからない今はむやみに他の人を呼ぶことはこの人の危険にも繋がっちゃうから。」

自分達もいつ他の側妃たちに命を狙われてもおかしくない立場のため、そんな危険を犯すことはできなかった。

「早く元気になるといいな・・・・。」

女性が目を覚まし、回復することを切に願いながら2人はいつもの薬草採取に向かう。











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