浮世
少し退屈気味な説明回です。
ただ、これから語ることについての基本的な知識についてなので根性で呼んでいただけると幸いです。
それと前回、今回と続いて主人公の過去を前編に挟んでお送りしていく予定です。
どこまで連続で投稿できるかはわかりませんが、忙しくない限り頑張っていきたいと思います。
俺の人生はごく普通のものだ。――――いや、『だった』が正しいのだろうか。
波乱万丈などという言葉からは程遠い暮らしぶりだった。死ぬその際まで前科などなく、『真面目』一筋の人生だったといっても過言ではない。そして義務教育はもちろんのこと、高校を卒業し、愚直な努力の果てに二流大学と呼称されるほどほどのレベルの卒業資格まで得た。
して、俺の人生ではなく、自身を表すとすれば『凡庸』という言葉がお似合いなのだろう。何をやっても平均または平均以下であり、努力の果てに手にするのはいつも落胆であった。
スポーツ選手や難関国公立大学に合格するほどの突出した才はなく、またそれは努力の才能もなかった。なにせ死ぬほど何かを頑張った記憶がない。まあ言い換えてしまえばそこそこの努力で人並みの結果はおのずと出せてしまうのだけれども――――。
だからといってそれがすごい才能だとは思わない。なぜなら人並みということは、それなりの人間が俺と同じことをできてしまうということなのだから。何をやっても一位にはなれず、常に真ん中辺りに名を連ねる誰も関心を寄せない立ち位置。
しかし、一つだけ自分にしかないのだろうという特異点がある。
――『思考』だ。
勉学のための思考ではない。頭が柔らかいのでも決してない。ただ単にモノの考え方、捉え方だ。まあ簡単に言ってしまえば捻くれているのだろうけども。
例えば、家族が主役のコマーシャルがあるとする。とても心温まるストーリーで、母親が息子の一人暮らしの荷造りをするというものだ。そうした後に送り出し、お互いがお互いの存在の大切さを噛み締めるという保険のコマーシャル。
普通の人であれば『やっぱり家族は大切にしなければならないな』と再認識するであろう場面で、俺は『一人暮らしをする資金が家庭にあって、且つ母親に荷造りさせるなんてとんだお坊ちゃんのストーリーらしいな』としか思わない。
別に俺に情がないわけではない。家族に恨みを持っているわけでもない。両親からは愛情をもって育てられたと思っているし、兄弟とも喧嘩はせども恨んだりなどは天地神明に誓って『ない』と断言できる。
俺の家は貧乏なほうではあったが餓えたりするほどではないし、奨学金頼りではあったが大学を卒業することも無事できた。それだけでも家族には感謝しているのだ。
しかし、思考の歪みは消えない。それは、『今生』であってもだ――――。
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今いるこの世界は『リオ・テルエムヌス』と呼ばれている。これは以前における『地球』のようなものだ。しかし、地球のように惑星なのかどうかはわからない。なにせ朝と夜はあるが、太陽は同じように見えるものの月は紫色なのだ。
その月に見えるようなものが光を反射して輝いているのか、将又自ずと輝きを放っているのかどうかすらわかっていない。それは空はあるがその上に行ったものが誰一人としていないことに起因しているのだろう。
しかし、一応球状にはなっているようだ。地図の果てから奈落に落下するということはない。さすればこの世も惑星と言えるのではないのだろうか。ただその答えを出すものはいないし、そもそも惑星という言葉を知っているのかどうかも定かではない。
さて、天文学者でもあるまいしこの辺りで『リオ・テルエムヌス』の惑星論は終わりにしよう。それよりもこの世界がどのような場所なのかを説明したほうがいいだろうから。
この世界は一つの大きな大陸の周辺に数多くの島がある構成を成している。そして大きな大陸にはもちろんのことだが、周辺の島々も数多の国が興されている。大陸だけでも40はくだらず、周辺島国を入れればどれだけの国があるか分かったものじゃないほどだ。
しかし、どれだけ国があろうとも終着点はただ一つ、大陸統一だ。皆どこの国も常に覇権国家となることをもくろんでいる。そのためこの世の情勢は決して平和とは言えず、毎朝毎夜戦果の報告を耳にすることとなっていた。
ただ戦果とは言うが、なにも俺が住んでいる国の戦果だけじゃない。他国の進捗状況も中には多分に含まれている。まるで日本の戦国時代のような世の中だった。
だが地球の戦争とはかなり違っている。それは以前も説明した通り魔法の存在があることによるものだろう。この魔法、本当に御伽噺のような御業であった。
まあこの魔法についてはまた後に触れるとしようかな。なにせこの世界において魔法は絶対的なものだ。これなくしてこの世界は恐らく語ることはできない。だからこそしっかりと語らなければならず、とても長い長い話になってしまうだろうと思う。
だから、そうだな。今日はこの辺にしてまた明日にしよう。まだまだ説明することは山積みだけれども、これからは生活を通して伝えていこうと思うから――――。
ご読了頂きまして誠にありがとうございます。
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