第四話 強くなる方法
「ふぅ...やるか」
俺はご飯を食べ終わり『吸収』の準備を始める。
乱雑に狩ったホブゴブリンの魔石を袋から出し、手をかざす。
魔石からはゆっくりとだが陽炎のような紫色の煙が這い出て来る、それを手のひらに球体中にくるくると集める。
そして自身の真っ黒な魂力を織り交ぜながら紫色から黒色に染めていく。
彼が行っている事は魔石から魔力を取り出し、魔物の魔力に飲み込まれないように自身の魂力で取り込んでいく。
『吸収』をして何が成るというと単純に魂力の量が増える。
魂力はこのような方法以外では決して自力では増やせず、ある意味唯一の抜け道だ。
ちなみに魂力と役割持ちが使う力は別物だ、役割持ちは魔物と同じく魔力を使っているが性質は違い、役割持ちが使う魔術が光りだとするならば魔族が使う魔法は闇だ、それほど性質が違う。
この方法は遠い過去でも現在でも彼しかできず、もはやそれはどんなに人類の技術が進んでも再現不可能なレベルの絶技である。
クロトができる『吸収』は理外のような力で彼は元々あった『併呑』という技術をもとに作られており、『併呑』は自身の全てというほどの魂力を魔石に流し込み、魔石を経由してから体内に戻すというもので少しづつ魂力を増やす方法だ。
しかしこれはデメリットが大きくやりすぎると魔物の魔力に引きずられて狂暴になり、三時間で魂力は全回復するが本当に少ししか増やせずやる価値はほとんどない。
しかし俺は役割もなく、魂力も少なかった、それでも俺は長馴染みのジェンティーレの為に唯一強くなれる可能性がある方法の『併呑』を研究した、幸いにもジェンティーレが勇者として連れていかれるときにジェンティーレがどうしてもと頼み込み一緒に王都に向かった、俺はそこで王室図書館ですべてを覚えるかのように本を読みふけり、空いた時間はひたすら鍛錬に費やした。
長くなるので省くが何百回も死ぬような目にあってようやく『吸収』を会得する。
もちろん才能がなければここまで至れなかっただろうが努力と言っては生ぬるいほどの血がにじむほどの果てに手に入れた力だ、すさまじいほどの恩恵がある。
まずはそこまでの魂力を消費せず取り込むことができ、自身より大幅にある魔力でも問題なく取り込める。
それも長くても十分ぐらいで済む時間だ、魔力は一切のこぼれなく魂力に変換できて返還直後でも少しの違和感もなく魂力を使用できる。
デメリットは取得の難しさのみで取得してしまえばあとは魔物を倒して手に入れるか買って手に入れるのみであとは吸収するのみだ。
ちょうど魔力を魂力に変換し終わり、魔力だった物を糸状に細長くし、手から吸収していく、これで俺の魂力は約二倍ほど増えた、後は二、三回ほどホブゴブリン狩りやれば魂装の一部分を発現できるだろう。
いい加減市販の切れ味の悪い剣は使いたくない、魂装の剣ならいつでも取り出せるし遥かに強い、あともうちょっとぐらいなのでしっかりやってくか。
今は効率を優先するためにホブゴブリンを狩っているが魂装を発現できるようになれば次はハイオークに移るか、一週間ほど狩れば役割の偽装もできるようになるのである程度の実力を付けたら冒険者ギルドに登録して情報を集めよう。
一週間後、俺は冒険者ギルドに来ていた、まだ弱い部類の役割しか偽装できないが登録するだけならこれで充分だろう。
そして今は何故か登録を渋られている、理由は役割が弱いからだ、まぁ見た目が全身を乱雑に布で隠し、顔は目以外は隠しているからな怪しまない方が無理があるだろう。
「本当にいいんですか?死んでも責任取れませんよ?」
「だからいいて言ってるだろう、最低限の実力はあると思うが」
受付嬢はそこで何かを思いついたのかある提案をする。
「そこまで言うのでしたら仕方ありませんね...現在は使われていない制度ですがCランクの冒険者と戦い、認めてもらえれば冒険者登録を容認します」
「頼む」
俺は短くそう答え、受付嬢は小さくため息を吐く。
「30分ほどあちらでお待ちください」
俺は素直に椅子に座り魂力の操作をし始めるが邪魔をされてしまう。
「おい、お前最下級の役割のくせに冒険者になろうとは生意気だなぁ、俺が教育してやろうか?」
筋肉隆々の禿げた中年の男が粘っこく、汚らしくニヤニヤとしながら近寄ってくる。
「...不要だ」
俺はイラつきながらも答える。
「あぁ!?弱者のくせに口答えをするな!!」
周りはその男を冷めた目で遠巻きにこそこそと話している。
「またやってるぞあいつ...良く飽きないな...」
「あいつも運が悪いな...」
「穏便に済めばいいが...」
「まったくだ...」
大体このようなことを言っている、どれも俺に同情する声やハゲ男を罵る物だ。
「お前のような生意気な奴は拳でわからせないと...なッ!」
ちっ...面倒だな。
俺は片手でそいつの拳受け止め、腕を回す。
それで腕はグキッという音を出し折れる。
「ぐわぁぁぁぁっっ!!?」
「失せろ、殺されたくなければな」
俺は殺気を込め言い放つ。
「ひっひぃ...!」
男は折られた腕を抑えながらドタバタと逃げていく、その姿はあまりにも情けない。
それにしても何だったんだ...そこそこの役割を持っていたようだが一切身体強化もせずに殴りかかってきて折ってくださいって言ってるようなもんだぞ...
禿げたおっさんが身体強化もせずに殴りかかってきた理由は単純に圧倒的弱者だと思って舐めてかかってきただけである、それ以下でもそれ以上でもない。
周りがざわめくがそんなのはお構いなしに魂力を操る修行をする。
そして三十分後、ようやく呼びに来る。
「お待たせしました、こちらについてきてください」
付いていった先はギルドの裏手にある修練場で試験をするようだ。
修練場は広く、結構の人数が利用しているようだ、その中でも一番強そうな男が寄ってくる。
「お前が試験を受けに来た者か?ふむ...まぁいいだろう、俺に三回ほど攻撃を与えることができれば認めてやろう」
先程の男とは違い、武に厚く、ひたすら鍛錬を繰り返してきた正しく武人のような男だ。
俺達は無言で距離をとる、俺は魂装があるため刃をつぶした鉄剣は受け取らず構えをとる。
「...拳士か?いや構えが違う...まぁいい、いくぞッ!」
相手が迫ってくる、俺はギリギリのところまでひき付け、魂装を発現させる。
瞬間金属と金属がぶつかり合う激しい音が響く、周りには突然剣が俺の手に握られていたと認識するだろう。
「な...!?そういうことか...!」
男は少しは予想していたが驚愕に顔を歪ませる、同時に体勢を立て直すため男は後ろに跳び引く。
俺からすればようやく一歩目を踏み出したのだ、口が動くままに宣言する。
「俺は剣士クロト!今ここに新たな一歩を刻む!」