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第三話 狩る者

「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!!?」


ホブゴブリンは断末魔を上げる、俺は叫ばせて仲間を呼ばせるためにわざと不意打ちをしたのにも関わらず足を切り落とす。


俺は少し待ってから最初に後ろからくるホブゴブリンを振り向かずに攻撃を受け止め、回転するように首を切り裂く。


「狩りの始まりだ」


そうつぶやき、全方向に対処できるように耳を澄ます。


左から二匹、正面から一匹、右から三匹だな、俺はその場から木の上に移り、適当に隠れる。


三十秒もしないでホブゴブリンが予想通りその方向から人数通り現る、俺はある程度ホブゴブリンが固まった瞬間木の上から飛び降りながら左手に持ったナイフで頭を刺す。


残り五体。


右手に持っている剣で一回転をする、それで二体のホブゴブリンを軽く切り裂く。


「「ぐぎゃっ!!」」


揃ってホブゴブリンはそのような声を出し、俺から飛び引く。

少しの間もいれずに飛び引くのに少し手間取ったホブゴブリンの首を斬る。


残り四体。


流れるように俺は次に近い奴を斬ろうとしたがホブゴブリンは持っていた棍棒を無理やり差し込み、なんとか避ける。


俺はその反動を利用して後ろから襲い掛かってこようとしているホブゴブリンの胴体を真っ二つにする。


残り三体。


他の二匹はは同様に背後から襲おうとしていたので胴体を切ったことで勢いが途切れた剣に力を込めてそいつらに向けて距離をとらせるために横なぎに振るう。


片方は避けることには成功したようだがもう一匹は浅く胸を斬られ、動きが鈍る。


痛みはこと戦闘になると邪魔にもなるし助かることもある、真の戦士は痛みと思考を切り離し、常に生き残る一手を考え、勝利を渇望する者だ。


しかしその境地に至れるのは一握りの者か修羅のように戦闘を繰り返した者のみだ、とうぜんこのホブゴブリンはその境地に至っておらず動きが鈍る、ちなみにクロトが相手をしてきた剣士や一部の魔法使いはその境地に至っていたのでそれが強者にとって当たり前だと思っている。


話を戻そう、俺は後ろにホブゴブリンが居るのにもかかわらず二匹を見たまま飛び引き、後ろを振り向かずにホブゴブリンの攻撃を避けて剣を逆手に持ち後ろに振るう、それで後ろのゴブリンは腹を突かれ数秒痙攣した後動かなくなる。


残り二体。


ここまでくれば消化試合のようなものだ、俺は無造作に突っ込んで攻撃を受け流し、反撃で首や胸を突いてとどめを刺す。


「さてと...魔石を取るか」


俺は手慣れた手つきでホブゴブリンの胸を解剖し、心臓付近にある魔石を取る、魔石とは魔物だけが持つ心臓のような役割をする器官の事だ。


魔石は空気中にある魔素を体内に取り込み、戦闘時に魔石から魔力を消費して身体強化や武器の強度を底上げなどをする。


あとは上級以上の魔物でないと使わないが魔技(まぎ)という特殊な技を持っている。


まぁ魔技は魔物によって魔物によって違うからその時になってから説明しよう。


よし終わったな、大体百匹ほど狩ったからいったん宿に戻るか。

俺は少しここまで上手くいっていることに気分が良くなっていた、帰りの道を歩いているとき偶然にも怒声や下卑た声が聞こえてくる。


ちっ...盗賊か...


俺は倒せれる相手か見てから決めようと思い、そちらに向かう。

俺は音を立てないように歩き近寄る、草木の隙間から見えたその場所で行われている蛮行が目に飛び込んでくる。


死の危険にさらされながらも冒険者たちと騎士と思われる者達は己の命を懸けて馬車を守っていた、しかし冒険者たちの練度や質は勝っているが圧倒的に盗賊共の方が多い、その数は冒険者と騎士を合わせて15人に対して盗賊は50人近くの人がいる、これでは普通では負けるだろう。


ふむ...弓10人、魔術15人か...後ろから奇襲すれば行けるか?


俺は日々の魔物狩りの成果で力が少し戻ってきており一対一なら中級の役割持ちとなら相性が良ければ勝てるほどの力を取り戻している、盗賊の力量から見ればそのような者はいないしうまく立ち回れば無傷で倒せるだろう。


俺は身を隠すためにフードを深くかぶり、ばれないように後ろに回り強襲を仕掛ける、盗賊は一人殺されるまで気づかず、新たな敵が現れたことを全体が把握した時にはすでに4人ほど殺していた。


「な、なんだこいつは!?早く殺せ!!」


そう叫ぶリーダーらしき男、他の者より身なりのいいそいつに狙いを定め、地を這うようでそれでいて素早くリーダーに接近する。


そいつは剣の腕に自信があるの剣を抜き放ち俺を向かい打つ。

剣がぶつかり合い鍔迫り合いが始まるかと思われたが俺は最小限の動きで血が滴っている剣を滑らせ、同時に落ちてくる剣を避けながら下から胸らへんに向けて剣を突きさし、すぐさま抜いて倒れるのを確認せずに次の獲物へと移る。


それにしても弱いな...後衛でも最低限の武術ができないといざっていう時すぐ死ぬぞ...


彼は知らないことだがこの長い歴史の中で役割持ちはそれ以外の事は神が定めた運命から外れるのでやってはいけないと言われている。

実際役割持ちは得意なこと以外は普通の人と習得速度が同じなのでそれ以外はできないと誤認してしまっている。


ちなみに彼が言っている最低限の武術とはこの時代の人からしてみれば中の下、つまりそこそこの強さの人達だ。


「こ、これでもくらぇっ!!」


そう言い味方に当たりそうになるのもおかまいなしに風魔術を放つ、しかし俺は当然のように魔術特有の()()()を叩き切る。


彼が生きていた時代は巧妙に隠し、何重にも細かく切れ目を分散させることで斬られても大幅に威力を落とさずにしていたものだが...どういうことだ?


これはただ単純に無用に犯罪者に力を与えないために魔術の切れ目を分散させる魔術文字を貴族が独占しているだけの話である、これはたまたまクロトが知らないだけで常識だ。


その攻撃を皮切りに混乱が深まった盗賊たちは次々に味方に当たるのをお構いなしに俺に向かって魔術を放つが時には避けられ、斬られ、恐怖は伝播していく。


「ば、化物だぁッ!!」


盗賊たちにはその姿は相当異様に見えるようで後衛の盗賊は雲を散らすかのように逃げていく、前衛の盗賊はそのことを知らず、遅れて逃げ出す。


完全に盗賊たちの気配がなくなるまで剣を構えて警戒をして安全だと判断してから剣を鞘にしまう。


しかし馬車を守っていた冒険者たちは気を抜かない、なぜならまだ正体不明の俺という者がいるからだ。


しばらく無言の睨み合いをして俺が去ろうと後ろに動こうとすると声を掛けられる。

「待ってくれ!どうして助けてくれたんだ...?」


「...悪は殺す、それだけだ」

俺はフードを深くかぶり直し、森へと戻ろうとするがそこで馬車のドアが開きもう一度制止の声がかかる。


「お待ちください!!あなたはどうして役割を持っていないのにそんなにも強いのですか!?」


馬車から飛び出してきたのはいかにも聖職者の格好をしているとびっきりが付く美少女だ、その顔は何故、という疑問で埋め尽くされている。

馬車からは必死に彼女を止めようと焦っている従者が馬車に戻そうとしている。


役割持ちは同じ役割持ちとそうでないのを感じ取ることができる、俺はある程度強くなれば魂力を使い、役割持ちと思わせれるように魂の外見というのだろうか?それを操作して周囲には役割持ちと思わせることができる、まぁある程度修練を積めば普通にばれるが。


「...この力は闇に葬られ、今は潰えた過去...いや古の産物、我が身は一度滅び、今一度舞い戻った、悪を殺し、(魔王)に備え、『勇者』を復活させる身、それだけだ」


俺は恐らく疑問に思うであろうことを先に答え、この場を去る、周囲が呆然とするなか走り去る。


さて...根城にしている洞窟に帰ったら魔石を『吸収』するか。


―♦―♦―♦―


聖女は彼が言っていた言葉を反芻させる、しかし分からない、少しは理解できるがほぼ何のことを言っているか理解できなかった。


潰えた古の力?我が身...肉体の事だろうか?生き返ったとでもいうのだろうか?そして悪を殺し『―――』を復活させる身...何のことなの?


彼が喋った『勇者』という言葉は伝わっておらず困惑させた、クロトが先ほど言った言葉は現在で言う古代の言葉であり当然理解はできない。


「何者なんでしょうか...彼は?」

従者はそれに恭しく言葉を発する。

「我々が調べておきますのでご安心ください、聖女様には指一本触れさせません」


しかしその言葉は信用ならない、なぜなら私の立場は非常に危うい物でいつ暗殺されてもおかしくない。


今さっきも盗賊に見せかけて私を殺されそうになったばかりだ、私の従者の中に内通者がいてもおかしくない。


まぁ信用できる者はいるのでその人たちに頼むことにしよう、しかし私のやる事は変わらない、弱き人々は守るのみだ。



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