第一話 転生
爆ぜた大地の上に新しく傷跡が入る、それをつくている張本人たちは神速と呼ぶにふさわしい速度で動いている。
「ガアアアァァァァァァァッ!!!」
一方は四人でもう一方は一人だ、これだけを見ればすぐ決着がつきそうだがかれこれ三十分は戦っている。
二人の剣を一手に弾き振りぬいた隙に魔法が飛んでくるがまるで予知しているかのように半身を動かすだけで避ける。
その戦士は今すぐにでも死んでしまいそうな傷を負っているがまるでそれを感じさせないかのように動けないはずなのに動いている、だが片腕を斬られていしまえば動かすことはできない。
多量の血が流れているはずなのにそれを無視するかのように動く黒い戦士、四人...いや勇者パーティーはもうほとんどの身にまとっている鎧が壊れ、肌が所々露出しているが急所だけは守り、ヒーラーが回復させて万全の状態で常に動いている。
黒い戦士は何を思ってこうなってしまってでも戦っているかは勇者たちは知るすべはない、ただ目の前のことに集中しないと死ぬからだ。
黒い戦士は片方の腕だけで幾十もの剣戟、魔法を防ぎきり、一振りで五個の斬撃を飛ばす。
黒い戦士の斬撃を滑るように剣で防いだり盾でパリィをし、素早く反撃をする、それは胴体に新しく傷跡を作るが黒い戦士は止まらない、止まることが許されていないかのように。
しかしようやくこの戦いもようやく終わりそうだ。
『戦の魔法三式、千の弾丸』
その瞬間前衛は一瞬で後ろに下がり魔法の範囲外に出る、広範囲に広がるその魔法は避けることはできず、俺はとっさに後すこしだけ生きれるように必要な部分だけ守る。
そして勇者たちの一人が喋る。
「終わった...か?」
「いえ...まだ生きてます」
その言葉で勇者たちは一瞬で身構えるが黒い戦士は一向に動かない、それに安堵したのかとどめを刺そうと彼女が近づいてくる。
ちょうど声が聞こえるところで俺は喋る、ある話をするために。
「聞こえ...るか?兜をとってくれ...」
まだ喋れることに警戒し、武器に手をかける。
「安心しろ...俺はもうすぐ死ぬ...無理やり動かしているだけだ...」
その言葉に警戒しながらも兜をとってくれるが...
その瞬間彼女は俺の顔を見て息をのむ、それは幼いころ苦楽を共にした長馴染みの顔がそこにあった。
「く...くくく...驚いたか...?俺がお前らと戦った理由はな...強くさせるためだけだ」
そこで血の塊を吐く、あと一分も持たない命の中で必死に言葉を紡ぐ。
彼女は現実を受け止めきれないのか顔を青白くさせ声にならない声を出そうとしている。
「俺がここまで強くなった理由は...全て迷いの樹海の最深部...家に隠してある...お前達ならば一ヶ月足らずで基礎はできるだろうな...」
そしてようやく彼女は言葉を紡ぐ。
「ぃや...死なないで...死なないで!!」
そう大きな声を出す、その表情は悲痛に歪んでいるがもう耳も聞こえず、目も掠れて俺には見えていない。
「ジェンテ...ーレ...あい....し.....る」
「嘘...嘘よ...いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
誰かの声が聞こえた気がするがそのまま俺は闇に落ちる、そして俺の一度目の人生は終わる、色々な後悔をしながら。
―♦―♦―♦―
「よくやってくれたねぇ...」
微睡の中でそんな声が聞こえた気がした、それは久しく味わったことのないような感覚で抗いようのないものだ。
「君のおかげで勇者は復讐の鬼と化し、魔王を相打ちのような形で殺して約2000年ほどたった現在でも魔王の【停滞】の役割により封印されている、さて」
そこで一回言葉を区切る、分かり切ったことを聞くかのように。
「君はどうしたい?このまま潔く眠りにつくかい?それとも...」
―生き返るかい?―
その瞬間抗いようのない微睡の中でもどうしようもない熱が、感情が決して燃え尽きない炎のように灯り、確固たる意志の元に集う。
「はははっ!それでこそ君だっ!いいだろう、もう一度その身で黒き光となり、悪を滅する正義となれ!」
会話が終わったとばかりに深い、深い闇へと引きずり込まれるように意識が無くなる。
―♦―♦―♦―
俺は目を開け、先程の微睡の中でのことをぼんやりと思い浮かべながら身を起こす。
「ここは...」
周りを見れば質素で白を基調とした教会のような場所の寝台で寝かされていた。
横になってても意味はないと思い、部屋の外に出るために立とうとすればよろめいてしまう。
(力が...無い?...いや...身体に流れていない...?)
俺は鏡を見つけ、よろめきながらもその前に立つ。
(この姿は...子供の頃の俺その物だな...どういうことだ?)
修道服のような格好をしているが正しく俺だ。
しばし考えるがなぜ子供の時の俺の姿の理由は思いつかない、先程の記憶があるのみだ。
さらなる考えを巡らそうとするが何者かの足音がし、中断される。
一瞬戦闘態勢に入りそうになるがこの体だと何もできないと思い出し、とりあえず自然体でいることにする。
そして扉が開かれる、現れたのは神父の格好をした男だ。
「―――?――――――?」
その言語は一切わからず聞いたこともない。
何か反応しないとだめだと思い、とりあえず俺も喋る。
「なんて言ってるんだ?」
その神父は首をかしげながらも何かを言ってるが分からない、段々と神父は焦りはじめて何かを言った後大慌てでいったん部屋の外に出る。
数分したのち黒っぽい服を着ている女性を連れてきて神父は現れ、その女性は全く知らない呪文?を唱える。
『――――――、――――――――――、『―――――』』
神父たちは一瞬安堵した後表情が曇る。
何回か言葉を交わした後俺に話しかけてくる。
「――――、――――?――――――」
そして何回も同じ言葉を紡ぐ。
しばし考えて名前を言ってるんだと理解し、俺も自分の名前を何回も繰り返す。
「クロト」
それが俺の名だ、女性の名は『シースタ』と神父は『エルダー』という名前のようだ。
二人は会話をした後俺の手を引き部屋の外に連れ出して数分歩いた後食堂のようなところに着く、そこで何かを食べさて貰えるようだ。
神父は俺の頭を撫でた後調理場に向かい何かを作り始める、ほどなくして美味しそうなにおいが漂い始め料理が運ばれる。
「いただきます」
食べ終わった後は皿を洗い、先程の場所で寝かされるかと思いきや別の場所で寝かされるようだ、さっき寝かされていた場所と逆の方向に向かっている。
着いた場所は俺ぐらいの背丈の子供たちがたくさんいるところで寝る準備をしているところだった。
子供たちはいっせいに興味津々の様子で集まってくる、そして俺にいろいろ言ってくるがそのどれもなんて言ってるかはわからない。
そしてシースタが大声を出して落ち着かせた後おそらくだが俺の説明をしているのだろう、段々と重い空気になっていく。
少し固まり、シースタが話して子供たちは寝る準備を始める、俺も修道服から着替えさせられ、ベットに寝かされる。
そのあとは精神的に疲れているのか光が消えた後は数分もしないうちに眠りにつく。
(しばらくはここで言葉を覚えるのと情報収集だな...)
そんなことを考えながら意識を沈ませる、二度迎えるはずのなかった明日に思いをはせて。
―♦―♦―♦―
七年後