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サバイバルカメラマン  作者: 木村BON
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今日は2月2日、節分の前日だ。

いよいよ明日は「長田神社追儺式」だ。

追儺式前日は、長田神社で鬼役たちが練習を行い、長田神社内にある井戸で身を清める。

神社内の端に井戸があり、外部から見えないよう幕で囲う。

中で鬼役たちは真っ裸で井戸の水を約50回桶で肩にかぶる。

これを練習の間に繰り返す。

私は、井戸水をかぶる鬼役たちの表情をカメラに納めた。

鬼役たちの練習はふんどし一丁で行う。

ふんどしには鬼役の鬼の名前が書かれている。

鬼役は、一番太郎鬼、赤鬼、青鬼、姥鬼、呆助鬼、餅割鬼、尻くじり鬼の七匹いる。

2月3日。

時間は朝の8時前。

私は須磨海岸でカメラを準備しスタンバイしていた。

ぞろぞろとカメラを持った一般見物人が集まりだした。

やがて着物姿の追儺式関係者がやって来て準備を始める。

まもなく、ふんどし一丁の鬼役たちも現れた。

鬼役たちは、須磨の海に入り身を清める。

砂浜では鬼役たちが暖を取るため焚き火をしている。

鬼役たちは、砂浜を走り海に入り、七人肩を組、スクワットのように数を数えながら上下する。

そしてまた焚き火で暖を取り、また海へと繰り返す。

私は、一歩一歩踏みしめる鬼役たちの足を狙いシャッターを切った。

そして、海で上下する鬼役の表情や走りあがってくる鬼役を必死で撃ちまくった。

須磨海岸でのお清めが終わると、一旦神社に戻り、本番に備える。

長田神社の御朱印は、節分の日は鬼の判子が押される特別仕様となっている。

12時30分、鬼役含め追儺式関係者は神社近くの公民館に集まり、皆で気合いを入れる。

鬼役たちは着物姿で顔は白い麻布でくるまれている。

神社付近を法螺貝の音と共に練り歩き、神社に向かう。

私は、脚立とカメラバックを担いで列の先頭を進みながら撮影する。

神社に到着すると観客たちが舞台の前に並んでいた。

舞台は本殿に繋がる形で設置されている。

この日のために、舞台が設置され、追儺式が終わると撤去する。

鬼役たちは鳥居をくぐり、境内に入ってくる。

本殿までの一本道は、鬼役たちの通り道となり、観客たちは左右にわかれ道を開ける。

本殿で鬼の衣装等を受け取り、神社奥の小屋で支度する。

舞台より奥は関係者以外立ち入り禁止になっているが私は許可をとり腕章をつけている。

いよいよ私にとってのゲームも本番だ。

銃に見立てたカメラのセッティングを整え、鬼退治スタートだ。

小屋の中で、着物姿の関係者たちに囲まれ、しっかり着せてもらっている鬼役たちを狙い打つ。

ほぼ着替えが終わる頃、私は小屋の前で出て、出てくる鬼を息をひそめてじっと待つ。

一番太郎鬼が出てきた。

周りから「頑張れ」と気合いを入れる掛け声がかけられ、松明に火がつけられる。

一番太郎鬼は右手で松明を掲げ、勇ましく前進した。

向かってくる鬼に何発か撃ち込み、道を開けた。

もう鬼役ではなく、鬼となっていた。

それから舞台で舞い踊る鬼たちを休むことなく撃ち続け、鬼との戦いは終わった。

この二日間の撮影目的は、写真コンテストだ。

土門拳文化賞を取るためだ。

撮影枚数は約4000枚。

この中からコンテスト用の写真を選ぶ。

土門拳文化賞に応募する写真は、究極の奇跡の一枚を選ぶのではない。

土門拳文化賞は、組写真と言う10枚から30枚までの写真をセットにして1つの作品に仕上げる。

私は、この時の写真を二つの作品に仕上げた。

1つは、タイトル「伝統を歩む」とした。

伝統を守り、鬼役が歩んできた道、これからも継続し、伝統を守り歩んで行く姿を表現し、一歩一歩、歩む足元に着目した作品だ。

そして、もう1つは、タイトル「鬼となる」だ。

二日間の密着撮影でのリアリズム写真の中から、鬼が手伝った写真を選んだ。

結果は8月に発表される。


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