解き放たれし闇
__ここは極寒の地。氷に覆われたこの場所で、突然静寂を破るかのように氷山が砕け、中から黒い影が出現した。
『ああ……体がダルい。ここはどこ?』
影は空中を漂い、キョロキョロと辺りを見渡し、状況を確認する。
『ようやくあの封印を抜け出せたみたいね。それにしても……』
封印から解放された事を理解した影。しかし目覚めたのは意識のみで、肉体は未だ封印の中だ。影はその事に強い苛立ちを感じた。
『あの女……絶対に許さない。まあ、とりあえずは封印から目覚めた同士達を探さないと。はぁ……面倒くさ』
影はそう呟くとどこかへ飛び去っていった。
__ここは深いジャンルの奥地。そこにある古びた遺跡の中。赤い壺に突然ヒビが入ったかと思うと、次の瞬間粉々に砕け散り、なかから黒い影が出現した。
『ふぁ〜……よく寝た。ちょっと寝過ぎたかな。』
昼寝から目覚めたように影は呟くが、実際に眠っていた時間は気が遠くなるほどの年月である。
『さて、実体が目覚めるまではまだ時間がかかりそうだし……退屈だな。』
影は少し悲しそうに俯くが、直後。何かに気づいたように顔をあげた。
『そうだ。他のみんなはどうしてるかな……探してみるか。その方が面白そうだし。』
すると影は、封印から解き放たれた同士を探すため、あてもなく空へと飛び去っていった。
__陸から離れた、海原のど真ん中。その上空に黒い影が浮いていた。
『封印から目覚めはしたが、肉体は未だ忌々しき封印の中か……』
彼もまた、肉体が未だに目覚めていない事に怒りを感じているようだ。
『我らを封じたあの女……まだこの世界にいるだろうか。いるのなら、礼をせねば……』
どうやら彼は、自分達を封じたとある"女"に対し強い憎悪を抱いているようだ。
『む……?僅かだが感じる。この気配は、よもや……』
何かの気配を感じ取った様子の影は、その気配の元へ向かって飛び去っていった。
__涼しげな風の吹く崖の上。そこに立ち、海を見下ろす男が一人。一見メガネをかけた、クールな美青年に見えるその男性は、独り言のように呟いた。
「……感じる。世界に遍く聖なる力の残滓……。」
この男も、何かの気配を感じて警戒していた。
「俺らを封じたあの女も気になるけど。まずはあのお方を探さないとな……」
すると男はマントを翻し、うしろを振り返ると、不敵な笑みを浮かべた。
「あの女……もう二度と邪魔はさせない。今度こそ、世界を闇に染めてやる……‼︎」