目覚める神器
マキアの攻撃からユキを庇い、炎の魔法で攻撃を相殺した俺だが、その際の爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされてしまった。
「キャハハ、他人を庇って自分から攻撃をくらいにいくとかチョーウケるんですけど」
俺を嘲笑うマキアの声が聞こえる。
「シュート、大丈夫⁉︎」
俺を心配したユキが、俺のもとに駆け寄ってくる。ユキは怪我を負った箇所に回復魔法を使い、俺の傷を癒してくれた。
「どうして、あんな無茶をしたの⁉︎」
どうして?そんなの決まっている。実に単純にして明快だ。俺は……
「お前を、守りたかったからだよ。」
そう。俺はユキを守りたかった。俺は昔、大切な人を失った事がある。それは俺に勇気がなかったからだ。あの時の悲しさ、今でも鮮明に覚えている。もう二度とあんな思いはしたくない。だから俺は、大切な人は絶対に守ってみせると心に誓ったのだ。
「お前が俺を助けてくれたように、今度は俺がお前を守ってやる。」
俺はゆっくりと立ち上がり、再びユキの前に立ちはだかる。すると、ユキは俺の横に移動した。ユキの行動が理解できないでいると、ユキは口を開いた。
「守ってくれるのは嬉しいけど、あなたが傷つく姿を見るのは嫌。だから私も、あなたを守る‼︎」
「……そうだな。俺はユキを、」
「私はシュートを」
「「絶対に守ってみせる‼︎」」
俺とユキの声が重なり、街にこだまする。すると、街の中心にある噴水の水が光輝いた。やがて水の中から二つの光の球が現れた。その光の球は、俺達の前までやってくると、なんとそれぞれ剣と槍に姿を変えた。
「これはまさか……伝説の神器?」
「私達を選んだの⁉︎」
俺は剣を、ユキは槍を、それぞれ掴んだ。
「なにそれ。微かに"あいつ"の力感じるけど……まあとりあえずぶっ壊しとこ。」
マキアは指を弾き、黒い球を放ってきた。まずいと思った俺は、とっさに剣を構える。すると、黒い球が触れた刀身に触れた瞬間、黒い球は爆発もせずに消滅した。
「あたしの闇の力を無効化した⁉︎ありえないし‼︎」
マキアは、今度は俺目掛けて黒い光線を放ってきた。しかし、攻撃が俺に当たる前にユキが俺の前にやってきて、槍を構えた。すると、槍から光が放たれ、光線を防いだ。
「シュート、今だよ‼︎」
「任せろ!炎よ、焼き払え!フレイムバーン‼︎」
俺は全力で呪文を唱えた。すると、今までで最大クラスの炎の球が現れた。俺はそれをマキアに向かって放つ。
その炎は見事にマキアに命中し、マキアは炎に包まれた。
「ヤバ……‼︎」
しかしマキアはすぐに瞬間移動によって炎を脱し、離れた場所に出現した。
「あんた、何者⁉︎そんな力を持っていて、ただの人間とは言わせないし‼︎」
マキアは俺に問う。それに対し、俺はこう答えた。
「……俺は、榊原秀斗。この世界を救う勇者だ‼︎」
「……勇者?訳わかんない。消しちゃえば終わりじゃね⁉︎」
マキアは特大の黒い球を出現させた。どうやら、本気で俺を迎え撃つつもりみたいだ。
「シュート‼︎」
ユキは俺に手を伸ばしてきた。その意図を察した俺は、ユキの手を掴む。
「「炎よ、焼き払え……‼︎」」
「「フレイムバーン‼︎」」
俺とユキが声を合わせ、呪文を唱える。出現した二つの炎の球は合わさり、マキアの炎の球と同じくらいになった。
二つの球はぶつかり合い、拮抗している。
「俺は……"俺達"は……絶対に負けねえ‼︎」
俺が強い思いを込めると、それに呼応するように炎の球はさらに大きくなる。
「くっ……」
そしてついに、マキアの黒い球を遥か彼方へ押し返した。
「「やったーーー‼︎」」
俺とユキは思わずハイタッチをした。
「シュートのおかげで勝てたのよ!」
「いや、ユキのおかげだよ。俺一人じゃ絶対勝てなかった。」
そして、俺達は笑い合った。
「勇者……次こそ絶対倒す。」
そんな俺達を空から見下ろしながら、そんな捨て台詞を吐いて、どこかへ消えていった。