魔法の世界
俺は、目を覚ますと穏やかな草むらに横たわっていた。確か俺は一度死んで……女神に世界を救ってほしいとか言われて異世界に転生したはずだ。
だとしたらここは本当に異世界なのか?そう言えばあの女神は、最強クラスの魔法使いにしてくれるとか言ってたな……
異世界だとしたら本当に魔法が使えるはずだ。俺は、ここが本当に異世界かどうかを確かめるため、魔法を使ってみることにした。
………。
……………。
そう言えば、魔法ってどう使うんだ?ルシェーラは最強の魔法使いにしてくれるとか言ってたけど、そもそも俺は魔法の使い方なんて知らない。つまり魔法が使えないということに気がついたのだ。
俺が途方に暮れていると……
グルルルル……
どこからともなく巨大な獣が現れた。ぱっと見5メートルくらいはありそうで、やはりこの世界が異世界であることを実感できた。
……なんて感心している場合ではない。巨大な獣は俺に襲いかかってきた。
身の危険を感じた俺は、脇目も振らず一心不乱に逃げた。しかし獣の方ももの凄い速度で追いかけてくる。
絶対絶命……そう思ったときだった。
「炎よ、焼き払え‼︎フレイムバーン‼︎」
突然聞こえた声とともに炎が飛んできた。その炎は巨大な獣に命中すると爆発し、獣を黒こげにした。
何が起こったのか分からず、呆然としていると、一人のの少女が現れた。それは長い純白の髪を持つ可憐な美少女だった。
「ねえキミ、大丈夫?」
さっきの炎を放ったのはこの少女らしい。どうやら、俺を助けてくれたようだ。
「ああ。大丈夫だよ。助けてくれてありがとう。ところでお前は?」
「ああ、自己紹介がまだだったわね。私はユキ。あなたは?」
「俺は秀斗。魔法の使い方が分からなくて困ってたんだ。」
「シュートって言うの?魔法が使えないってどう言うこと?」
俺は先ほどのことを全部ユキに説明した。魔法を使おうとしたら使い方がよく分からなかったこと、そうしたらあの巨大な獣に襲われたこと。
「ふーん、魔法の使い方が分からないなんて珍しい人ね。」
「はは……まあ、色々あってな。」
ユキは俺を訝しそうに見つめる。どうやらこの世界で魔法の使い方を知らない人間はかなり珍しいようだ。
「……まあいいわ。私が魔法の使い方を教えてあげる。よく聞きなさい。」
するとユキは、この世界の魔法の仕組みについて教えてくれた。それによると、この世界での魔法は簡単な呪文
さえ唱えれば誰でも行使できるという。ただしこの世界の人間には「魔力」と呼ばれるステータスが存在し、これが、魔法の威力に影響を与えるという。
また、一部の上級魔法は魔力が低いとそもそも使うことすらできないらしい。
「まずは、誰でも使える初級魔法を使ってみて。さっき私が使った火の魔法よ。」
ユキに教えてもらい、俺は魔法を使ってみることにした。俺はユキに教えてもらった通りに呪文を唱えた。
「炎よ、焼き払え!フレイムバーン!」
すると、俺の手のひらから巨大な炎が放たれた。それは遠くまで飛んでいき、やがて大爆発を起こした。
……これ、本当に初級魔法なのだろうか。
「す、凄い……初級魔法なのにこんな威力を出せるなんて。あなたの魔力、一体どうなってるの?」
俺は先ほど魔法の威力とユキの反応を見て確信した。やっぱり俺、ルシェーラの言う通り世界最強クラスの魔法の才能を手に入れたようだ。
__「そう言えば、ユキ。「神器」って聞いたことあるか?俺、それを集めなきゃならないんだ。」
「じ、神器ですって⁉︎」
ユキは「神器」と言う言葉に過剰な反応を示した。どうやらユキは神器について何か知っているようだ。俺は詳しい話を聞いてみることにした。
「何か知ってるのか?」
「……この世界の人なら誰もが知っている伝説に、あなたの言う「神器」と言う言葉が出てくるのよ。」
「どんな言い伝えだ?聞かせてくれ。」
「ええ……」
するとユキはその伝説を話し出した。それはこんなものだった。
<この世界が再び闇に包まれしとき、6つの神器を携し勇者現れ、闇は払われる。>
「……6つの神器について知り、それを求める者……まさか、あなたが伝説のよ勇者?」
「勇者かどうか知らねえけど、とにかく俺は三つの神器が必要なんだ。」
するとユキは顎に手を当て、しばらく黙り込んだ後、何かを呟いた。
「『神の力を纏いし槍と剣、数多の人集いし地に眠り、目覚めの時を待つ』……私達の国に古くからある言い伝えよ。」
「なるほど。とりあえずその国に行ってみるか。ユキ、その国はどこにある?」
「この近くよ。私が案内してあげるわ。」
「……なあ、ユキ。目的地に一瞬で移動できる魔法とかないか?」
「え?でも、テレポートは上級の魔法使いでもかなり難しいわよ。」
「構わない。教えてくれ。」
その国まで移動するのがめんどくさかった俺は、瞬間移動魔法で行くことにした。目を閉じて、集中しながらユキに教えてもらった呪文を唱える。すると地面に魔法陣のようなものが出現した。そこから光が溢れ出したかと思うと……
気づけば俺達は、大きな門の前に立っていた。
「す、凄い。本当に門の前まで移動するなんて……」
どうやら、テレポートは成功したようだ。
__「改めて、紹介するわね。ここが花の国フローライラよ。」
「うわ、すげー‼︎本当に花がいっぱいだ‼︎」
花の国フローライラ……その名の通り、道端や民家の庭などに花が咲き乱れていて、とても美しい。この世界で初めて訪れるこの国に、本当に「神器」が眠っているのだろうか。
「……ユキ、神器が眠る場所……心当たりないか?」
「……ごめんなさい。言い伝えは知っているけど、どこに神器が眠っているかは分からないの。」
「そうか……気にするな。この国にあるっていう情報だけでも、無いよりはマシだ。」
とはいえ、神器が眠る場所も、目覚めさせる方法もわからないとなると、一体どう探したものか……
俺が途方に暮れていると、突然俺達の前に黒い服を着た人物が現れた。見るからに怪しいその男は、ユキに近づくと、こう言った。
「お待ちしておりました。お嬢様。さあ、お屋敷にお戻り下さい。」