プロローグ
＿＿目を開けると、俺は真っ暗な空間に立っていた。なぜ俺はこんな空間にいるのか？必死に記憶を辿る。
確か俺は、コンビニで雑誌を買ってその帰りに横断歩道を渡ろうとして……
渡ろうとして……そうだ。トラックを運転していた信号無視野郎に轢かれて……死んだ筈だ。
それならばこの空間は死後の世界ということになる。俺はこれからどうなるのかと考えていると、前方から小さな光が近づいてくるのが見えた。光を放っているのは、絵に描いたような……いや、絵にも描けない美しさを持つ女性だった。ここが死後の世界と仮定するなら、女神さまだろうか。
その女性は、俺に近づき、口を開いた。
「はじめまして、榊原秀斗さん。私は女神・ルシェーラと申します。」
女性は自らを女神と名乗った。やはり俺の推測通り、ここは死後の世界のようだ。しかし不思議と死んだという実感が湧かない。
女神・ルシェーラは続けてこう言った。
「秀斗さん、あなたに滅亡の運命にある世界に転生し、救っていただきたいのです。どうかお願いいたします。」
「転生？世界を救う？俺にはそんな大それたことはできない。」
「ご安心下さい。代わりと言ってはなんですが、あなたを最強クラスの魔法使いにして差し上げます。それに、肉体と記憶もそのままに転生させてあげましょう。」
最強クラスの魔法使い？魔法が存在する世界感なのか？まあ確かに魔法が使えるというのは悪くはない。それに、肉体と記憶もそのままに転生させてくれるようだ。これだけそろっていれば転生の特典として申し分ない。
「……世界を救うって、具体的にどうすればいいんだ？」
「では、ご説明いたしましょう。」
ルシェーラは語り出した。話によると、遥か昔、全てを飲み込もうとする「闇」がその世界を襲った。しかしその闇は世界を守護する神によって世界の各地に封印された。
しかし時は経ち、その「闇」が今再び蘇ろうとしている……
そんな話だった。
「あなたには世界を旅し、世界の様々な場所に眠る神の力を持つ6つの武器……「神器」を集めていただきたいのです」
情報量が多すぎて、俺は頭が混乱してきた。とりあえず情報
を整理すると……
大昔に世界の色んな場所に封じられたはずの闇が、今再び蘇ろうとしている。それに対抗するため、世界を旅して神の力を持つ「神器」を集めるのが俺の使命……という訳か。
「やっぱり、俺には無理だ。世界を救うなんて。悪いが他をあたってくれ。」
「そうですか……ですが、あなたは本当はとても心優しい人物とお見受けしますが。
「………」
「それに、あなたにとっては関係の無い世界でも、そこに住む人々にとっては大切な世界です。大切なものを失う悲しさ、あなたならわかるはずですよね？」
ルシェーラは俺のことを見透かしたようにそう言った。どうやら、女神様は全てお見通しのようだ。
「……わかった。そこまで言うなら世界を救ってやる。」
「ありがとうございます。」
ルシェーラは頭を下げ、ペコリとお辞儀をすると、俺の目の前に扉を出現させた。この扉の先は異世界に繋がっているらしい。
俺は扉をゆっくりと開けた。すると中から溢れんばかりの光が漏れ出した。俺はその先に向かって進んでいく。
最後にルシェーラは、俺にこう告げた。
「秀斗さん。本当にありがとうございます。ご武運をお祈りしています。どうか、世界を救ってください……」
俺はそのまま意識が遠のいていった……
