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Zショッピング  作者: ラプチャー
3/7

第三回 扇風機

チープな音楽、風の有利の歌声で番組スタート。


「ゼットー?」

「ショッピングゥ!根賀くん?!おかしいじゃん!!ポーズはどこいったの!?」

「ポーズ?なんすかそれ?全く聞いてないっす」

「教えただろがぁ!!なんで分からねんだよ!これだから平成はぁ!!」

「いつ教えたんすか」


根賀が途中で番組名を言うことを有利へと投げる。言い終わると同時にポーズをとるスタッフと有利だが、根賀は全く知らない為キョロキョロと挙動不審である。そこに青木Pがぶちギレるが───


「……あ、教えてねーわ」

「いや流石っすわ、そのクソ度には尊敬の念しかないっす。流石クソP違いますわ」


直後、ハッとした顔に急変し、教えてないことを思い出した。カメラマンである立花が青木Pの顔をズームで映し、彼の驚愕を端的に表したかのようなBGMが流れる。


「山崎ィ!テメェどこでこのBGM買ってきたぁ!金がねーから買うなって言ったろ?!!」

「あ、大丈夫ですぅ!これネットで見つけたフリーBGMなんで」

「よし!それじゃ始めるぞ!」


青木Pがゴーサインを出す。


「皆さん、こんにちは。ゼットショッピングのお時間です。販売員の有利泰蔵です」

「同じく販売員の根賀貴司です」

「本日も、前回の放送をご視聴して下さいました視聴者の方々から、たくさんのご意見を頂きましたのでお答えしていきましょう」


スタッフがカメラの前を堂々と横切り原稿を渡していく。


「埼玉県の方からです。『前回の放送で流れていたスーパーで流れているようなポップなBGMが気になります。そのBGMが気になりすぎて話が頭に入ってきませんでした。商品の説明もBGMが気になってしまって全く覚えていません。このBGMを止めて欲しいです』と頂きました」

「前回のBGMが気になってしまってしまった皆様にお詫びいたします」


有利と根賀、そしてスタッフの山崎が並ぶ。


「大変申し訳ありませんでした」


息がピッタリと合った謝罪を見せる。


「なので本日は、有利が前回流れていたBGMを思い出しながらそれっぽい感じに口ずさんだものをBGMとして流しております」


次のメールに移るようカンペが出る。


「もう一枚紹介します。山口県の方からです。『前回の放送を見ていて思ったのですが、テレビの画面にずっと男性しか出てきていません。しかも、出ているのがイケメンならいいんですが、40代位のおっさんとそれなりにイケメンかな~、そうでもないな~っていう感じの大学生ですよ!

普通テレビショッピングって美人やイケメンのタレントさんやアナウンサーとかがいるんじゃないんですか?何でいないんですか!美人のタレントを出せ!出さなければ見ないし買わない!』と頂きました」


根賀にカンペが出る。


「今までの放送で、イケメンでもない男性陣がテレビ画面を埋め尽くしていた為に不快感を覚えてしまった視聴者の皆様にお詫びいたします。大変申し訳ありませんでした」

「尚、本日はスタッフが何処の事務所にも連絡しなかっ…──んんっ、間に合わなかった為、男性しかいない放送になります。その点は、ご理解頂きたいと思います」


さらっと有利がボロを出したが、どうにか咳払いで誤魔化した。


「それでは、今週の商品の方に参りましょう!」


有利が商品の紹介を始める直前にCMが入る。

炭酸のことなら何でもやります。

抜くのも出すのも何でもござれ!

炭酸化学工業をよろしくどうぞ!


「はい!始まりました!」


青木Pのゴーサインで番組が始まる。


「ねぇ根賀君。夏って暑いよね」

「そうですね。暑いですね。てかこのスタジオエアコンついてるの?暑すぎでしょ」

「エアコン在るじゃん。ほら」


有利が指差す先には氷水の入った水槽とその上で壊れそうに動く扇風機が在る。


「あれエアコンじゃね~から!エアコンも無いのかよ!」

「そんなことより質問に答えて。スタッフここカットね!」


勿論カットなんてしない。


「はい!じゃあ根賀君、そんなときはどうしてる?」

「そりゃ~もちろん、水を頭からかぶりますよ」

「部屋の中ではどうしてる?」

「エアコンつけて部屋を冷やしてますけど…」

「そうだよね、ということで今回ご用意いたしましたのがこちら!」

「エアコンでしょ!年期の入った古いやつでしょ!この流れでエアコンじゃなかったらヤバいよ!」

「水を撒き散らせる扇風機!!アクア工業の『水ブッシャー扇風機』です」


スタッフ五人が協力して運んでくる程のバカ大きい扇風機が登場する。


「これ?これを室内に置くんですか?」

「そう!これを置くんです!」


ずんと顔を根賀に近づける。


「それでは、商品の実力を見ていきましょう!」


画面が変わり、食堂のような場所が映る。

画面には、スタッフが机と椅子を急いで片付けている様子が映っている。


「何で机と椅子があるんだよ!急いでしまえ!」


青木プロデューサーが怒鳴る。いつものことだ。

それに対し、スタッフの山崎が答える。


「もういっそ、風で吹き飛ばせば良くないですか?その方が分かりやすいですし」

「そうだな!よし、スタッフ!しまわなくていいぞ!有利!早く説明して吹き飛ばせ!」

「了解しました!」

「え?…本当に吹き飛ばすんですか?」

「当たり前だろ!吹き飛んだ方が面白いだろ!早く説明して!」


青木プロデューサーの顔が度アップで画面に映る。


「え~、では商品の実力を見ていきましょう。こちらの扇風機の魅力はなんといっても風の強さなんです!早速ですが、こちらの5年前の扇風機と風の強さの違いを見てみましょう!」


五年前と言いつつ十年位使っていそうなオンボロ感がメチャクチャ漂う扇風機とスタッフが頑張って運んできた組み立て中のデカイ扇風機が映る。


「何で組み立ててないんだ!」

「青木P無茶言わないで下さいよ!本来あのスタジオから出さない計画だったからあっちで組み立てたのに、面白く無いからって急に食堂に変えるんですもん。移動させるのにバラバラにしないといけないんですよ!全く!」

「しょうがないな…有利!その扇風機で時間を稼げ!」


怒っている青木Pの顔をドアップで撮影するカメラマン立花。顔がにやけており、クククと小さく笑いを抑えている声が入っている。


「では、普通の扇風機を見てみましょう。根賀君、スイッチを入れて」

「はい。では弱ボタンを押します。…あれ?」


根賀は弱ボタンを押しているが、羽は一向に回らない。


「コンセントに繋がって無いじゃん!根賀君繋げて!」


コンセントに繋げるも回らない。


「根賀君、風を感じる?」

「全く感じないです!」

「良し分かった!中ボタンを押して!」

「はい。では中ボタンを押します!」


根賀が中ボタンを押すも羽は回らない。


「風が出ていますよ感を出してコメントを言え!根賀!」


青木P のイライラが蓄積していく。


「え、何言ってるんすか。風出てないのに出てるなんて言ったらそれは捏造ですよ。犯罪ですよ?ここはそこまで落ちぶれたんですか?……ってか羽回ってないんで視聴者にバレバレなんですけど」

「強ならギリギリ回るから根賀君お願い!早く強ボタン押して!感想は弱風受けてるっていう体で!」

「山崎ィィ!ちゃんと回るやつ用意しろって言ったよな!何で壊れたやつ持ってきたんだ!」

「いや、昨日までちゃんと弱ボタンでもギリギリ回っていたんですけど……。ギリギリ生きてたんですけど……。青木P がイライラして八つ当たりで蹴り倒した後、回らなくなりました」

「他の扇風機持ってこいよ!」

「だってこの会社にある扇風機の中で、ちゃんと動いていたやつこれだけですよ!それ壊したんですから無理です」

「何で昨日俺の所に持ってきたんだよ……。他に何か回るものは有るのか?」

「回るということでなら、風車持ってきました。使います?」

「使うに決まっているだろ!遠近法を使って扇風機に被せるんだ!」

「こうですか?」

「そうだ!それでいい。息を吹き掛けて回せ!それで弱、中の代用にしろ!」

「なるほど、そうすればこれが扇風機に見えますもんね」

「いや無茶にも程があるでしょう」

「黙れ根賀ァァ!よしよし、これで弱と中はどうにかなったぞ!最後に強だ!強をやれ!」

「はい!根賀君、強ボタンを押して」

「はい、強ボタンを押します」


扇風機はギーというヤバめの音を出しながら回り始める。風の強さは壊れていない扇風機の弱位の風である。


「根賀君どう?」

「風車の方が涼しいんじゃないすか?」


扇風機からバキッという音がして羽が消失する。


「青木P 、扇風機が逝きました!」

「分かっている山崎……。今までありがとうなぁ……」


泣き顔の青木P が扇風機に抱きついている。

その顔をアップで映しつつ有利が進めていく。


「え~、ちょうど組み立てが終わったようです。スタッフの方々お疲れ様です~。終わったらまたばらしてくださいね」


スタッフが苦労している姿が面白かったのか、笑いながら有利が彼らを労う。


「では、こちらの扇風機を動かしていきましょう!根賀君、弱ボタンを押して!」


そのまま有利は根賀に指示を出した。


「はい、押します」


ボタンを押すとジェットエンジンのような音を立てて動き出す。風の強さは普通の扇風機の強並みの風である。


「いや~、とっても涼しいです」

「じゃ、根賀君こっちに来て。はい、それではこの扇風機の最大出力を見てみましょう!この扇風機には強の強さを設定することが出来るんです!この強ボタン設定ダイヤルを回して調節するんですよ。このダイヤルを35に回して固定します。では、スタート!!」


台風のような風が発生する。その暴風により食堂に置いておいた机や椅子がゴミの如く吹っ飛んでいく。飛翔した机や椅子は窓ガラスに向かっていき、粉々に粉砕していった。


「回る~ま~わるよ世界は回る~」

「根賀ァァ!?お願い!!止めて!!色々引っ掛かっちゃうから!色んな人にプロデューサーである俺が怒られちゃうから!」

「いや~、素晴らしい風ですね~。窓ガラスが雪みたいに美しいです~」

「美しくないです。訴えられますよ?」

「さらに、この扇風機はミストを出すことができるんです!楽しみですね~。それじゃ根賀君、ホースをつな…え、やらない?何で!」


根賀がホースを繋ごうとすると、青木Pが慌てて止めに入る。


「この扇風機は電気代がバカにならないんだよ!ホース繋いじゃったら水道代もかかるでしょ!」

「当然じゃないですか…只でさえ貧乏テレビ局なんですよ…当たり前でしょ……」

「では、この扇風機を使っている内田さんの家を見てみましょう!VTRどうぞ!」


画面が切り替わり、郊外の田舎の風景が映し出される。


「はい、こんにちは。有利です。今回は、私だけでロケに来てます。さて、こちらのお宅ですね。大きいですね。さてお邪魔しましょう。」


インターホンを押す。一分程経ってBBAが現れる。


「いつも孫がお世話になっておりますね~。さぁ、どうぞ」


家の中へと入る。


「私たちは映らないようにしますので、普段通りに使っているようにして頂ければオッケーです」

「分かりました。普段通りにこれを使えばいいんですね。おい!ジジイ!分かったか!」

「うん、これで遊べばいいんじゃろ」

「じゃあ、早速ここで涼しく使っている所から始めましょう!」


ヤラせ発言を堂々とする有利。

まず、内田のジーさんバーさんが椅子に座っている場面から撮影していく。


「はい、ここでおばあちゃんが扇風機のスイッチを入れてもらって涼しいなっていう顔をしてください!強さは弱で!」


「はいはい、分かりました」


内田のバーさんがスイッチを入れると、

扇風機が唸りを上げ始動し始める。

かなり強い風が内田のジーさんを襲う。

頭にあった毛がぶっ飛んでピカピカの頭へと進化した。


「いいですよ!そのまま!」

「いやー、素晴らしいですよ」


内田のバーさんとスタッフは笑いを堪えている。内田のジーさんはかつらが飛んでいったことに気付いていない。

そんなこんなで家の中の撮影は終了した。


「さて、どうしますかね?」

「この扇風機って水が出るんじゃろ」

「そうですね、出ます」

「じゃあ、これを使って畑に水をくれても良いかの?」

「ナイスですね!」


ということで、扇風機を外に出し畑へと向かう。


「いやー、今日は晴れていて良かった!」

「そうですね!いい絵になりますね!」


扇風機にホースを繋ぎ、準備をする。ちなみにこのタイプは外でも使えるバッテリー付きのより高いやつだ。


「それでは、いつも通りの感じて」


ジーさんがスイッチを入れると、消防車が放水をしているかの如く水が飛んでいく。水に光が反射して虹が現れてとても綺麗だ。


「おい!ジジイ!こんなに水使っているじゃないよ!」

「婆さん、虹が綺麗じゃ」

「そんなことはいいんだよ!水出しすぎなんだよ!」


夫婦が噛み合ってない会話もバッチリカメラに撮っている。もはや夫婦が重要みたいな感じになっている。


「よし、そろそろいいんじゃないか!」


扇風機のスイッチを落とす。畑はゲリラ豪雨が降った後のように水溜まりができている。


「なんか物足りないな。なんかもっと欲しいな。有利なんかない?」

「そうですね。おばあさんなんか飛ばしたいものないですか?」

「そうだねぇ。あっそういえば一年前から畑の所にボロい小屋を立てられてねぇ、とっても邪魔なんだよねぇ」

「ナイスですね!それを飛ばしましょう!」

「それはありがたいねぇ」


ということで小屋に向かう。

番組の始めにも同じような事をやっていたが、覚えていないんで仕方がない。

全く同じ事をスタジオでもやったのだ。


「この小屋ですか?」

「そうなんですよ。邪魔なんですけどどかすのも大変でしょ。どうしようかと思ってたのよ」

「じゃあ木っ端微塵に処しましょう!」

「カメラ!これが吹っ飛ぶ所押さえられるように準備急げ!」


クルーがカメラと扇風機をセットしていく。


「それじゃ、二人ともいつも通りに小屋を吹き飛ばす感じでお願いします」


カウントの後、最大出力で風が吐き出されていく。ボロい小屋は木の葉の如く舞い上がり、すぐ近くの林へと飛んでいく。そのまま木に激突し木っ端微塵になった。


「あはは!小屋が無くなったねぇ!」

「いやー、最高じゃ!」


夫婦は笑顔だ。


「カメラに向かってどや顔お願いします」


夫婦のどや顔をアップを撮影する。

スタッフもストレス発散したようでいい顔だ。

そのあと、夫婦の扇風機を使った感想を最後にVTRは終了した。

スタジオに映像が戻る。


「いや~、涼しそうに使っていましたね!」

「最早扇風機じゃないですよあれ……」

「私もあんな使い方があったなんて驚きです!それでは、この商品の詳しい説明を根賀君よろしく!」

「はい。商品カラーは、白と黒の二つです。風の強さは弱、中、強5、10、15、20、25、30、35m/sです。水のタンクの大きさは500Lになっています。」

「それでは、この商品のお値段を発表したいと思います!」

「早く言ってよ…」

「強力な風と水でとっても涼しくなるアクア工業の『水ブッシャー扇風機』。メーカー希望小売価格189000円+税の所なんと、149800円+税です!」


デデン!とテロップがテレビ画面に表れる。


「十五万丁度かと思ったわww」

「こちらの商品は、お届けした後に組み立てが必要です。メーカーの技術者と共にお届け致しますので、届いた時に技術者を追い出さないよう注意して下さい!」

「え~と、また、洗い方はアクア工業にお電話して確認してください。また、こちらの商品の送料は勿論有料です。また、届いた時に技術者の人件費として15000円が別途かかります。」

「お電話番号は0120-××-○○○○です」

「沢山のご注文をお待ちしております!」

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