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Zショッピング  作者: ラプチャー
2/7

第二回 炭酸シェイカー

声優と仕事したいなと感じる今日この頃……

これ書いてるとテレビショッピングが尊く感じます……

スーパーマーケットで流れていそうなチープなBGMが流れ、Zショッピングのテロップが出る。


「皆さん、こんにちは。Zショッピングのお時間です。本日から新しい販売員が加わりました。どうぞ!!」


有利の発言で番組は始まったが、前回の第一回放送時とは違った少し落ち着いた雰囲気。

画面の端から二十代位の若い男性が現れる。


「はい。皆様初めまして。本日よりZショッピングの販売員に加わりました、根賀と申します。宜しくお願い致します」


痩せぎすで病弱そうだというのが第一印象。顔色も決して良いとは言えない。彼は丁寧な挨拶とお辞儀をして、有利の隣へと移動する。

前回とは全く違うシリアスな雰囲気をぶち壊すように、というよりそれを目的として有利が商品紹介へと移る。訳ではない。


「えー、さっそく商品紹介へと移りたいのですが、が!前回の放送で今までにない程にZON-TVへ視聴者からの意見やクレームが殺到しているのでそれに答えていこうかと思います!」


反省会が始まった。これはテレビショッピングでは無かったのか。視聴者の誰もがそう思う、訳でもない。


「おぉ!面白い企画やってんじゃん!!」


むしろ乗り気である。

まぁ、視聴率最低の放送局を見ている時点で真っ当な反応が出来ないのかもしれないが。

大体がこんな反応の視聴者達から再び物語の視点をZON-TVへと戻そう。


「東京都の方からです。『テレビショッピングなのにBGMが全く無いのは良くない』。との事でしたので、本日はスタッフが拾ってきたBGMをかけてお送りしております。ご意見ありがとうございました」


これは反省会である筈だ。

決してアンケートではない。であるなら謝罪をするのが至極自然だろう。だが、あろうことか有利も根賀も画面に向かってお礼の言葉を述べている。これをカオスと呼ばずして何と呼ぶのか。

誰も注意しないまま、反省会は続いていく。


「続いて群馬県の方から。『前回の放送で、販売員の方にプロデューサーが演技指導を行っていましたが、プロデューサーの顔が気にくわず、不快感を催した』との声をいただきました。誠に申し訳ありません。実費で整形させてイケメンにするのでどうかご容赦下さい」


謝罪はしているが、それは実現可能なのか疑わしいモノ。


「鹿児島県からいただいた意見です。『前回の放送で買ったマグカップが届きましたが、放送時の様に粉々に爆発しませんでした。使用すれば爆発するのかと思い使用しましたが普通に使えました。なんでだよと床や地面に叩きつけたところ粉々になり、壁や床にも傷がついてしまいました。あのマグカップは物理的にでしか粉々にすることは出来ないんですか?詐欺ではないのでは?』との事です。これにつきましては石川県や大阪府など、日本各地から実に多くの意見をいただきました。当スタッフの不手際が原因であり、ご購入いただいたマグカップは粉々に砕け散る事はありませんのでご了承下さい。スタッフ一同より御詫び申し上げます」


真逆の真っ当な謝罪もあった。

最後にスタッフ一同が整列、謝罪。


「申し訳ありませんでした」


頭を上げ終わると各スタッフ配置に戻る。

その間テレビ画面には、「現在、メール、ハガキ等で意見を下さり、当番組にて読まれた方には、番組特製ステッカーをプレゼント致しますので、どしどし送ってきて下さい。尚、商品に不備がございましても、金が無い当放送局では責任を負いかねますのでご了承下さい」とテロップが表示されていた。

全員が配置につき終わると、有利の


「はい、ということで色々ありましたが、Zショッピング、今週の商品へと参りましょう!」


元気な声で始まった。


「最近暑い日々が続いてますね!こんな時に飲みたくなるのは、そう!」

「ホットコーヒーですか?」

「違うよ?!根賀君?!」

「え、暑いとき程温かい物を食べた方がいいってオカンが」

「それは食べるものだから!!飲むものじゃないから!」


天然ボケを発動させた根賀に有利は冷静にツッコミを入れる。


「炭酸でしょ?!根賀くん!」

「あー。僕あんまりなんですよ」

「止めて!放送できなくなっちゃうから!!嘘でいいから炭酸好きなことにしといて!!」

「じゃあそういうことでいいです」

「……。根賀くんさぁ、炭酸は、強炭酸の方が好き?それとも微炭酸?」


新しく入った根賀に気圧され、絶句しながらもどうにか進行していく。


「んー。強炭酸ですね」

「そんな根賀くんにクイズ!このグラフは何を示してる?」


有利が持ち出して来たのは、文字が隠された円グラフのプラカード。赤が八割から九割方を占めている。


「プロデューサーへの不満持ってる率じゃないんですか?」

「まぁ、それも間違っては無いんだけど、正解はこちら!」

「お前ら減給すんぞ!!」


有利と根賀へ青木プロデューサーが怒鳴る。

二人は当然のようにシカトした。

有利が円グラフの文字を隠す付箋紙を取る。


「このZショッピングのスタッフで、微炭酸と強炭酸が好きな人の割合でしたー!!」

「強炭酸好きなの僕一人じゃないすか」


円グラフには、番組スタッフ内アンケートとなっており、強、一人。弱もしくは微、六人。と書かれている。


「ていうかこれ番組スタッフ内アンケートってことは不正し放題じゃないですか。こんなんいいんですか?普通こんな割合有り得ませんよ」

「最近の炭酸は、強すぎて飲めなぁい!!という方が九割近くいらっしゃるんです。そんな方々の為にご用意させて頂いたのはこちら!!炭酸科学工業の、炭酸シェイカーです!!」

「だったら弱炭酸、微炭酸買えばいいじゃないすか。こんなことして、一体なんの意味があるんです?」

「いいの!自分で抜きたい人もいるの!」


先程から痛いところをついてくる根賀に、有利は軽くキレ気味に返す。


「では早速、この炭酸シェイカーの実力を見てみましょう!!まずはこちら、コーラです!!」

「何かさっき急いでスタッフを数字が二つ入った名前のコンビニに走らせたのはこれですか」


舞台裏と堂々と暴露する根賀だが、誰も触れない。


「まずは、そのまんま飲んでみましょう!あれ、コップは?え、無いの?じゃあ口つけて飲んで……え?衛生上良くないから止めとけ?一体どう飲めと……。は?キャップで飲め?何バカな事言ってんの?ま、いいや。はい、根賀くん、じゃあキャップで飲んで下さい」

「それ、味とか強炭酸とかあまり分からなくないすか?」

「根賀くん!キャップ・で・飲・ん・で!!」

「あ、はい」


額に青筋を浮かばせる有利に、流石にまずいと思ったのか、自分でペットボトルのキャップにコーラを注ぎ、飲んだ。


「炭酸強いんで、うまいっちゃあ、うまいっすね」

「そうですか!では私も!あー、うまいですが、炭酸が強すぎますね」


どう考えてもそんな顔つきでない有利。本当は強炭酸が好きなのだろう。名残惜しそうにキャップを閉め、炭酸シェイカーにコーラをセットしていく。


「ではこのコーラをシェイカーへとセットしていきます。ペットボトルごと入れて、穴にセットするだけ。簡単ですよねー!!次にボタンを押して、好みの炭酸の強さにするだけ!今回は微炭酸です!ボタンを押して、スタート!!」


シャカシャカとペットボトルは振られている。


「早かったですねー。三秒位でしょうか」

「そりゃ早いでしょうよ」

「ではコーラを取り出して、微炭酸かどうか確認してみましょう!根賀くん、お願いします!」

「炭酸の被害があるかもしれないから避難しようとし───」

「根賀くん」

「はい」


炭酸シェイカーから取り外し、キャップを捻る、と。

プシューといつもより三割増し位の炭酸が抜ける音がした。


「わぁ!炭酸の音!!」

「白々しいっすよ」


有利がどこかでいつか見たテレビショッピングのような声と反応を示す。それを根賀は冷ややかな目で見つめていた。


「それでは飲んでみましょう。ちゃんと微炭酸になっているんでしょうか?」


今度は先に有利がキャップに注ぎ、飲んだ。


「んー。微炭酸ですね、とても美味しいです!!」


「微炭酸成功」という巨大なテロップが画面を覆い尽くし、何をしているのかまるで見ることができない。


「次はこちら!!」


そう有利が持ち出してきたのは強炭酸水。


「強炭酸水!これは強敵でしょう?」

「まぁ、そうっすね」

「今度は完全に炭酸を抜いてみましょう!」

「それ、もう只の水なんじゃ」

「抜いてみましょう!!」


根賀の都合の悪い発言を有利が強制的に揉み消す。

そのまま彼はとっとと準備するとスタートボタンを押した。


「うーん、一分程でしょうか。根賀くん、お願いします!」

「はい」


取り出し、キャップを捻る。

先程とは比にならない音が場に響き渡る。


「わぁ!炭酸の音!!」

「いや、さっきより全然音凄いのに同じ反応じゃ伝わりませんよ」

「いいの!流行るでしょう!?」


的確すぎる反論にもう有利も逆ギレ状態である。


「では実際に飲んでみます。根賀くん、どうだい?」

「はい、水です」

「すごいですねー!完全に炭酸を抜けました!!」

「でしょうね。振ってるんですから」

「しかもこのシェイカー!炭酸を抜くだけじゃなく、携帯の充電も可能なんです!!」


効果音と共に「充電可能」の巨大テロップが画面を埋め尽くす。


「更に!この上のボタンを押すと、なんと!!ライトになるんです!」

「それは凄いですね。色々できて便利じゃないすか」

「そうなんです!色々できて凄いでしょ?!根賀くん、そろそろ値段が気になってくるんじゃない?」

「まぁ、時間的にも少なくなってきたし、個人的にも知りたいですね。有利さん、いくらですか?」

「炭酸を抜くことができて、携帯の充電も可能!ライトにもなる!炭酸科学工業の炭酸シェイカー!本来四万九千八百円のところなんと!三万九千八百円でのご提供とさせていただきます!」


有利に言われた瞬間に値段のテロップが画面に現れる。


「実際に使用して下さっている方のお宅に伺ってきました。VTRどぞ!」

「こういう所は金使うんすね」


有利の合図でVへと移る。


「え?ちょっと、え?」


映るVTRを見てAD内田ちゃんが狼狽している。


「これ、私のい───」

「ゲホッ!ゲホゲホッ!」


P青木が咳き込み、内田ちゃんに手招き、二人でスタジオから出ていく。

廊下にて。


「なんで勝手に私の家にモノ置いてるんですか!!」

「いやぁ、事情を話したらお爺ちゃんが買ってくれてね。いいお爺ちゃんじゃないか」

「褒めてもダメです!!何買わせてるんですか!」

「いいじゃないか。あ、ちなみに次回からお前の家がVの撮影場所だから」

「私抜きで決めるとかあんたら頭は大丈夫ですか!?」

「大丈夫大丈夫。ご家族には納得して頂いたから。快諾だったから」

「そういう問題じゃありません!!私が嫌なんです!」

「もう決まったことだから、よろしくー。よし!早くスタジオに戻るぞ」



話の焦点をVTRへと戻そう。


「本日お邪魔させて頂くのはこちらのお宅!」

「うわぁ、でかいっすね」

「内田さんのお宅!」


有利が表札を手で指し示し、根賀は手に持ったビデオカメラで有利の姿と表札を撮す。そこには内田と書かれている。家を撮すとそこには、お屋敷といって差し支えないサイズの家があった。


「では、お邪魔していきましょう。お邪魔しまーす」


ピンポーン。


「はーい」


チャイムの音で出てきたのは、とんでもない美人。


「あの、僕に連絡先教えて下さいませんか?」

「根賀くん?!俺もやろうと思ったけど、我慢したんだよ?!」

「ご免なさい、私、既婚者なんです」

「え……?」


根賀が暴走。有利が止めるが、間に合わない。さらに、相手の方が本気で苦笑しながらやんわりと断った為、収拾がしきれない。有利は、どうするかを一瞬で決めた。ビデオカメラを根賀の手から奪うと、呆然としている彼の顔をアップで撮す。ちょっと絶望した感じの根賀の顔はシュールだがコミカルでもある。


「それでは、お邪魔しまーす」

「はーい、どうぞー」


家の中へと二人は案内された。

根賀は未だに落ち込んでいる。


「どちらに置いてくださっているんですか?」

「えぇ、こちらです」


案内されるがままに到着したのはリビング。お爺さんとお婆さんがおり、炭酸シェイカーを使っている。


「ばあさんや、このサイダー無炭酸にしてくれんか」

「分かりましたよおじいさん。はい」


おばあさんからおじいさんに手渡されたのはペットボトルからコップに注いだだけのサイダー。それを他所におばあさんは炭酸シェイカーで自分だけ無炭酸に。


「おい、ふざけんなよババァ!これ、無炭酸じゃねーじゃん!バリバリの炭酸じゃん!てめーだけ無炭酸とか舐めとんのか」

「うるせーなクソジジー!だりーんだよ!てめーでやりやがれ!」

「わー、仲が良いご夫婦ですね」

「この状況でそれが言える根賀くんを俺は凄いと思う」


喧嘩する二人。ショックから立ち直った根賀は爆弾発言を放り込むが、聞こえてなかったようで良かった。

そのまま言い合いが続いている中、VTRはそこで終了した。



「あー、あの人美しかったなー。人妻っていいなー」

「まだ言ってる。根賀くん、お願いだから犯罪とか止めてね?」


危ない発言の根賀に有利が釘を刺す。このままズルズルと流れを引きずらんと、後の説明を根賀へと丸投げした。


「後の詳しい説明を根賀くん、宜しく!」

「えーっと、商品カラーは白、黒、シルバーの三つからお選びになれます。対応可能な大きさは二リットル、一リットル、五百ミリリットルのペットボトルです。炭酸の強さは、微炭酸、超微炭酸、ほぼ無炭酸、ほぼほぼ無炭酸、無炭酸の五つ。充電バッテリーの大きさはグレードがあり、六万mAhから十六万mAhまであります。グレードが上がれば上がるほど値段は上がります。ライトは全てLEDライトです」


説明が終わると有利が先を引き継ぐ。


「洗い方は業者まで。送料は有料です。電話番号はこちら」


電話番号のテロップが画面の下に現れる。


「お電話お待ちしております!それではZショッピング、また来週!!」

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