第一回放送 ZON-TVグッズ
狐太郎、頑張って第二作品目に手を出しました!
お陰様で死にそうなのは仕方ありませんが、この作品は作者が完全に遊びに走っているので「忌姫と嗤う騎士」のように真面目な内容は一切含まれておりませんことをご了承下さい!
尚、この作品、作者は私一人ではなくラプチャーさん参加の共同作品になっております。
ZON-TV。あなたはしっているだろうか。そこは世界に存在するありとあらゆるどんなテレビ局よりも視聴率が低い伝説的な放送局である。理由は単純である。番組の内容、構成、編集、全てにセンスやスキルの欠片も無い為、何一つとして面白い番組が無い。
そんな伝説的放送局は、ある危機に直面していた。そう、経営難である!
広告収入はほぼゼロ。協賛企業も無い。
崖っぷちであるZON-TVは、昨年から改革を始めた。
某バナナの放送局のやり方を真似て、午後二時頃に映画を放送し始めた。しかし、営業部が買い付けてくる映画は、「鉄人間」や「ウェポンマン」などヤバイ感がプンプンしている物ばかり。
それもそのはず、金がないためとにかく安い作品しか買わないからだ。
その結果、視聴率は変わらず余計な金を使って映画を買っただけに終わってしまった。
行き詰まり、金が欲しくて堪らないZON-TVの経営陣は、起死回生の一手を導きだした!
「ゼェット!ショッピング!!」
そう、テレビショッピング。
痩せぎすの男がカメラに向かって番組名を叫び、記念すべき第一回の放送が始まった。
彼の名前は有利泰蔵。
カメラに映るのは慣れないのか、声が上がっている。
「記念すべき第一回ということで───」
彼は声が上ずりながらもスムーズに進行させていく。そして、商品紹介の前に一拍おき。
「本日紹介する商品はこちら───」
お決まりの台詞を言い、彼は商品が載ったテーブル、ではなく台車を持ってきた。
「ZONくんグッズです!!」
かと思うと有利は足を躓いて転び、商品が載っている台車を盛大にひっくり返した。
「おいおい何やってんだよぉ!!」
生放送であるにも関わらず、プロデューサーがカメラ内に映り込み、手に持っているメガホンで容赦なく有利をぶっ叩いた。
「いいか!?これは収録じゃねぇんだよ!生放送!!分かる!?生放送なんだよ!!」
「す、すいません……」
「あぁもう、貸せ!!やるなら、こう!いいか?こうやるんだ!!」
「あっ、そっちっすか。あ、はい。分かりました」
しかし注意は注意でも転び方の演技指導。
プロデューサーは台車を有利から奪うとカメラに向かって商品をぶち撒けながら盛大に転ぶ。
商品をぶち撒けたことに怒られると思った有利はすくんでいたが、転び方についてだと分かると拍子抜けして適当な返事をしてしまった。
「山田ァ!ちゃんと今の録ったな?!」
「あ、はい。録りましたよ青木P」
「おしじゃあ紹介に戻るぞ!有利!!」
「あ、頑張ります」
青木Pが有利を激励し、カメラに映らなくなると商品の紹介を始めた。
「えーっとまず紹介するのは、こちら!!ZONくんマグカップ!!」
最初に紹介するのはZON-TVのマスコットキャラクター、象のZONくんが描かれたマグカップ。が、パリィンという音がして弾けとんだ。
「……すいません、マグカップ割れたんですけど」
「申し訳ありません!!それ、次の番組で使うマジック用の小道具です!!」
「AD内田ァ!!何間違えてんだコラァ!!音響、山崎ィ!!すかさず効果音!」
「パリィーン」
ADの内田ちゃんがちりとりとほうきを持って割れたマグカップの破片を片付けている。音響の山崎は効果音を機械、ではなく口で只言っているだけ。
それでも番組は続いていく。
「なんとこのマグカップ、耐熱性が素晴らしく、六百度までなら溶けずに耐えることができるんです!!多彩な色があることも大きなポイントなんですよ!!赤、ピンク、オレンジ、黄、水色、青、黄緑、緑、紫、黒、白、十一色からお選び下さい!本来千二百円のところを今回きっかり千円でご提供とさせて頂きます!!」
なんということだろう。マグカップは割れ、取っ手しか残っていないにも関わらず、有利はそこにあるという体で商品紹介を進める。ちなみにこのマグカップ、原価は一個百円程である。
「更に!今から30分以内にお申し込み頂いた方には、もう一個お付けしてお値段そのまま。千円に致します!」
デテンという有利の声と共にテロップが画面を埋め尽くす。
「更に更に!今から15分以内にお申し込み頂いた方には、二つお付けしてお値段そのままの千円に致しますよ!」
ちりとりに取っ手だけのマグカップを置くと、次に準備されたタオルの紹介が始まった。
「次は、こちらのタオル!!ZONくんとZON子ちゃんが可愛らしいですね!」
ZON子ちゃんは、ZONくんの飼育員という設定で、何故かゾンビである。
「いや可愛いですねぇ!!」
ちっとも可愛くなくおどろおどろしい。
「こちら、とても肌触りが良く、水分を吸収しやすいことが売りなんです!!」
そう言いながら有利は水をタオルにかけていくが、タオルは水分を全く吸収せず、驚く程の撥水性を発揮している。
「これでお値段千五百円!お安いでしょう?!」
画面いっぱいの値段のテロップと共にお決まりとも言える台詞をかます。有利は、さらに、と一拍おくと尚テンションを上げる。
「番組終了から三分以内にお申し込み頂いた方には、もう一枚タオルを差し上げます!お値段もお安くピッタリ千円!!」
おぉー、とわざとらしくスタッフ一同が声を発する。
「おっと。そろそろ時間となってしまいました!ではまた来週!!Zショッ───」
番組終了の時間が迫る。有利が番組を締める途中で時間になり、喋っている途中で番組は終了した。