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不穏な気配は賢者と共に

※こっちでもカワイイ癒しキャラ出そうと思ったら、なぜかちっちゃいお爺ちゃんに……(どうしてこうなった)


い、一応真っ白なふわもこのおひげはカワイイ……かも……。

 翌日の宿屋内、早々に目が覚めたハリーテは窓に強く叩きつける風雨を眺めていた。


「これは、本日の移動は中止かのう……」


「えぇその通りですよハリーテ」


気配もなく突然声を掛けられハリーテは驚いた。


「エッ! エド兄! 吃驚するではないかっ! 気配を消して部屋へ入ってくるのはやめてくれ!」


「それは申し訳ありません、ちゃんとノックもしたのですが聞こえないほどなにか考え事でも?」


エドワードはニコニコしながらハリーテの向かい側に座る。

その様子はまるで、悪戯が成功した子供のようだ。

ハリーテはムッとする、どうせ自分が昨日の件を考えていたことをからかっているのだろう。

この兄弟子はいつもそうだ、こうやって人を見透かすような言動をする。


「分かっておるなら早く教えてくれ!」


ハリーテは拗ねる様に頬杖をつく。

エドワードはそんなハリーテの様子を見てクスっと笑った。


「貴女が心配している、アドルファスとミカさんの件は心配いりません、あまり詳しくは言えませんがお師匠様が仲裁にはいりましたので」


「大魔導士師匠が……それならわたくしがどうこうと、気をもむ必要はなかったか……」


ハリーテは、ホッと胸を撫で下ろす。


「それでアド兄は?」


「夕べ、ヤケ酒煽ってガーガーうるさかったのでスマキにして眠らせておきました」


「……そ、そうか……所で本日はこの宿で待機ということで良いのか?」


アドルファスの扱いが雑な気がするが、あえてそこは触れずに話題を変える。

するとエドワードはニコリと微笑んだ。


「えぇ、この天候では警護も難しいですし、街道で事故が起きては取り返しがつきませんからね……あぁそうだ。これは貴女宛てにですよ」


とエドワードは懐から一通の手紙を取り出した。

差出人はミカ。

ハリーテは急いで手紙を受け取り封を開けると、そこには短く簡潔に書かれていた。

〈迷惑かけてごめんなさい。旅の安全をお祈りしています、道中気を付けて〉 と。

ハリーテの頬が緩む。


「クレイグ殿も、もう起きてらっしゃるようですし、朝食を用意させますね」


「エド兄、よろしく頼む」



ハリーテは手紙を大事そうに仕舞うと、宿の食堂室へ向かった。


宿屋内の貴人専用の食堂室には、すでにクレイグとアドルファスの姿があった。

アドルファスはハリーテを見るなり、仏頂面で視線を逸らす。

そんなアドルファスを不思議そうに横目に見ながら、クレイグが


「おはようございますハリーテ様」


と声をかけてくる。


「おはようクレイグ殿、体調はどうだ?」


「えぇ、ご心配いりません。もうすっかり良くなりましたので」


と、笑顔を見せるクレイグ。

その様子にハリーテはニコリと微笑むと、椅子に腰かけて創世神へ祈りを捧げたあと、朝食を食べ始める。

その間もなにか言いたげにチラチラとアドルファスがこちらを見ているのを感じた。


「アド兄、どうかしたのか?」


おもわずそう問いかけると、ばつが悪そうにアドルファスが


「あー……昨日は心配させて悪かったなハリーテ」


そう言いながらアドルファスは顔を背けてしまう。

どうやらアドルファスは昨日の事を反省しているようだ。


「気にせずともよい、エド兄から問題は解決したと聞いておる」


ハリーテは、安心させようとアドルファスに微笑みかける。

しかしアドルファスはバツが悪そうにしている。

その様子にハリーテは首を傾げる。


「気にせずとも構いませんよハリーテ、この男は今朝がたお師匠様からそれはこってりと絞られましたので」


エドワードがクスクス笑いながら言う。

それを聞いたアドルファスは苦虫を噛み潰したような表情をした。

どうやらエドワードが言った通り、相当絞られたらしい。


「なるほど……それでなんか挙動不審なんだな」


ハリーテは大いに納得した。

アドルファスは、ハリーテの言葉を聞くとギロリと睨む。

そしてエドワードはニコニコと笑っている。

アドルファスの態度にハリーテは思わず吹き出した。

それを黙って見ていたクレイグも我慢できず笑いだす。


「チッ!笑ってんじゃねぇぞテメェら!」


アドルファスが不機嫌そうに怒鳴るが、エドワード達はどこ吹く風といった感じだ。

そんな様子をみてハリーテは、

(なににしても険悪な雰囲気にならず良かった)

と、思いながら紅茶を飲む。


 すると突然、宿の食堂室の扉をノックする音が聞こえてきた。

エドワードが返事を返すと、護衛の騎士が入室してくる。


「ご歓談中申し訳ありません、ウォルセア本国から火急の知らせをもった御使者がまいられました」


その言葉に眉をひそめながらエドワードは


「至急、応接室へお通ししてください」


「畏まりました」


と急いで騎士は出て行き、アドルファスも後を追うように出て行った。


「エド兄……」


ハリーテは少し不安そうに、エドワードを見る。


「心配はいりません、大丈夫ですよ」


エドワードは、ハリーテを安心させるために優しく微笑む。

その笑顔を見てハリーテはホッとした表情を見せた。


◆◆◆

数分後にアドルファスが応接室へと入ってきた。

その後ろには、白いフードを被った小さな人物が二人ついてきている。

その人物を見た瞬間、エドワードが


「貴方様方は……元賢老会筆頭であられたベーネ様とディクシオン様ではありませんか! 小神殿にお住いの方々が一体……」


と驚いている。


「ほほほ、かの名宰相と名高いエドワード殿を驚かせることができるとは痛快よのうベーネよ」

「まことまこと……愉快よのうディクシオン」


二人の双子の老人は、楽しそうにコロコロと笑い声をあげている。


「……お楽しみの所大変申し訳ありませんが、詳しいお話をお伺いできませんか?」


老人たちの様子に、背中にブリザードを背負ったような冷たい声でエドワードは問いかけた。

エドワードの言葉に双子は、ハッとする。

そしてベーネと呼ばれた小柄な方の老人が、コホンと咳払いをする。


「こたびは今代聖女様が、ダンジョンへと赴かれるとお聞きいたしましてな、教皇聖下に少々ムリをお願いして聖女様にダンジョンの都についての『お話』を語りたく馳せ参じましたのじゃ」


その言葉を聞いてエドワードは納得する。

確かにこの『双子の賢者』とも称される方々の話には、多くの者が興味をもつだろう。

しかし、だからといってこの二人がわざわざここまで来る理由にはならない。

何かあるのだろうとエドワードは考える。

すると、ディクシオンが口を開く。


「そのついでに賢老会で所蔵しておったいくつかの品々も、お納めいただきたいと思いましてな……なにぶん、この歳になるといつ救済の手が差し(お迎えが来る)のべられるかわかりませんからのう」


ほっほっほ、とどこまで本気で言ってるのかよくわからないセリフを語り出す双子老人。


「お話は分かりました、この天候にもかかわらず急いで駆けつけて下さったお二人に深く感謝いたします」


黙って話を聞いていたハリーテが双子老人へ感謝とねぎらいの言葉をかける。


「おぉ……今代聖女様のなんとお優しいことか……このベーネいたく感激いたしましたぞ!」

「まことに、聖女にふさわしい御仁であることよ」


ベーネとディクシオンは、ハリーテの両手をそれぞれ握りしめて感動している。

その様子を見ながらエドワードは、

(お二人は相変わらずくえないご老人ですね……)

と思う。


ベーネとディクシオンは、かつて総大司教の位にいた。

その知識と経験を買われて、賢老会のメンバーとなり、のちに筆頭として教皇のご意見番として仕えていたのだ。


そんな二人が語ろうとしている『お話』もただの話ではなさそうですね……と気を引き締めてかかるエドワードであった。

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