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聖女 エドワードの推察を聞く

 降り出した雨を宿の部屋の窓から眺めつつ、ハリーテはゆっくりとお茶の香りを楽しんだ。


「本格的に降り出す前に宿へ到着できて幸いであったなエド兄」


「ええ確かに。 面倒に巻き込まれはしましたが旅程に変更を加えるほどの遅れがでなくて助かりました」


エドワードもお茶を飲みながら答える。


「それでクレイグ殿。 もう少し詳しいお話を伺いたいのですが」


そういいながらエドワードはクレイグへと視線をむける、他人の目がないので仮面を外したクレイグは、少し困ったように眉を下げ二人へ


「……申し訳ない、お二人にはきちんと話すべきだった。 ……あの日突然襲撃を受けた時執務中だったことはお話したと思うのだが、その時印章を手にしていた為無意識に持ち出したまま逃亡していたのだ。」


と語った。


「なるほど、それはある意味幸いでしたね。 あれは簡単に偽造できるものではありませんし、新しい物へ変えるためには膨大な手間暇がかかる上に、登録されているギルドマスター本人の魔力紋が必要な代物ですから……あぁ、なるほど。 それで()()も焦ったのでしょうね……とすれば相手はそんなことも知らないような身分、もしくは人間ではない……そういうことですか……なんとなく見えてきました」


エドワードは真剣な表情で考え込みながら結論を出していく。


「エド兄……なにか分かったのか?」


ハリーテはエドワードの答えを聞きたそうにソワソワしている。


「そうですね……クレイグ殿にもこの際ですからきちんと説明しておいた方がいいでしょう。 実はこの聖女一行のダンジョンの都へと向かう裏の目的とでもいうのでしょうか……魔族が暗躍している可能性を探るために向かうのが本命なのです」


「なんですって……魔族とはあの魔王討伐の際に魔王の配下であったと言われるあれのことですか?」


そう言いながらクレイグは困惑したようにエドワード達を見る。


「ええ……他の者が言う事ならともかく、法王猊下より直々にその可能性を示唆されてしまいましてね……」


「そ……それはもしや……」

クレイグは顔色を青くして問いかける。


「いえ、魔王の復活……はまず見込めないでしょう、まだ5、60年程度しか経っておりませんからね。 他の可能性としては世を混乱に陥れて復活の時を早める程度ではないかと推測されます」


「ちょっと待てエド兄! 魔王はマサタカ師匠に滅ぼされたのではないのか!?」


ハリーテは驚愕してエドワードを問い詰める。 その言葉を聞いたクレイグは


「『師匠』……とはハリーテ様はもしや」


とこちらも驚愕している。


「……順番にお答えしましょうね。 ハリーテ様は先代召喚勇者マサタカの最後の弟子でいらっしゃいます、そして魔王という存在は周期的に発生するもので完全に滅される事はないものなのだそうですよ」


クレイグとハリーテは似たような表情でポカンとしている。


「まぁ魔王に関しては古代の書物などを見る限り復活するには、最低でも千年単位の周期はかかるようですから、今すぐどうこうという話ではないという事です、ただしその周期を少しでも早めようと魔族が暗躍することは今まで何度もあったという事ですよ」

なんでもない事のようにあっさりと答えるエドワード。


「しかしそれならなぜ魔王が討伐されてすぐ動かなかったのであろうな?」


「恐らく今代勇者が呼ばれてしまったせいでしょうね……」


「今代勇者というと、2年ほど前に無茶苦茶な召喚で呼ばれたというあの?」


「ええ、ショカンシタ王国と呼ばれていた、今のエルピス国で起きた勇者強制召喚事件ですね」


それを聞いてハリーテが考え込みながら言葉を紡いでゆく


「先代勇者のマサタカ師匠が魔王討伐したときに望んだ報酬である『世界の存亡にかかわらない事柄での召喚を禁じて欲しい』という願いにより生まれた『勇者召喚基本条約』に反して、私利私欲を満たすために呼ばれたという今代勇者様か……たしかもう無事元の世界にお帰りになられたのであろうエド兄?」


「ええ、今代勇者ゴトーはもう帰還してこの世界にはおりません。 ですからこの事件により大陸条約会議でもよほどのことがないと、当分勇者の召喚は行えなくなりましたので魔族としては絶好の機会となっているのだと思うのです」

苦々しい表情で答えるエドワード。


「魔族にとって最大の抑止力になりうる勇者が呼べないからか……なるほどなぁ、となると今回のクレイグ殿が襲われた件も魔族が関係しているという事なのか?」


「なんですって!」

ハリーテの言葉に驚愕するクレイグ。


「恐らくは……ただ本来であればもう少し穏便というか密かに事を運ぶつもりだったのではないかとおもうのですよ」


「どういうことだ?」


「こういう事は長い時間をかけて徐々に根を伸ばしていった方が最も効果が高いのです。 最低でもダンジョンの都を完全に掌握するまで、このような派手な動きを見せてしまうのは悪手どころか愚者の振る舞いにしか見えませんよ……おそらくクレイグ殿がお持ちの印章のせいでボロが出てしまったのが原因でしょうがね」


「つまりエド兄の話を簡潔に訳すと、今回の件が魔族の仕業であり、そやつらが印章の件を知らずにギルドマスターとして派手な行動をして次々にボロを出してしまっているという事か?」


「現状では推論でしかありませんが、可能性はかなり高いのではないかと考えています。 そして恐らくこの先もギルドから追っ手がやってくるでしょうね」


「あの司教みたいなのが、又やってくると?」


「とりあえずダンジョンの都の神殿の方へは法王猊下より協力することを止めていただきましょう。 ギルドの方はダンジョンの都へ入るまではこちらで対処するしかないでしょうね……」


「具体的には?」


「幸いクレイグ殿が印章をお持ちですから、有効に活用させていただきましょう」


そう言うとエドワードはニコリとクレイグへと微笑みを投げるのであった……。



風邪をひいてしまいしばらくお休みしておりました……。

まだ本調子でない為、次回も短いかもしれませんごめんなさい。

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