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雨天の中の話し合い 1

「………………なんともはや……つまり今賢者様方がお話し下さった事が実際にこの世界で行われたという事でよろしいのですよね?」


ハリーテはなんといっていいのか微妙な顔で双子賢者を見る。


「えぇ、この創世神話はさすがに後の何も知らない多くの人々に広めるような内容ではないと判断された初代聖下……「元オレサマー王太子殿下」が、『創世神ウォルセアがこの世界を作られた』という一点のみを強調したうえで、後の戒めになるような戒律を作ったと言われておりますじゃ」


「その創世神話を知るのはウォルセア教の上層部だけなのですか?」


「いえ……おそらく各国の上層部のほうでもご存知の方はそれなりにいらっしゃいますのう」


そう言いながら、エドワード達をチラリと見る。

双子賢者の視線にエドワードも頷きながら


「最低でも王やそれに付随するような身分の方々や後継者、継承権のあるものには教育が施されているはずです、愚行を犯すことなかれという教えも兼ねての事でしょうね」


「なるほど……なら父上や兄上はご存知なのか……だがあの罪人のハニートラップに簡単に引っかかった兄上には教えは響かなかったようだが……」


ハリーテは自嘲気味に笑う。


「まぁその辺はスモウーブ公国の事情なので、こちらでは何とも言えませぬが、この話にはまだ続きがございましての」


「そうなのですか……拝聴させていただきます」


「この世界を作った創世神候補生であったウォルセアは、その後この世界を維持するためのエネルギーへと変換され申した。現在の直接の【管理者】は教官であったワルスギーテ嬢の中にいらっしゃったお方がされていると言われておりますじゃ。お名前などは一切公になっておられないので通称【上位管理者】と名乗られて時々この世界へ向けて【神託】という名の警告をお授け下さるのです」


そう言いながら双子賢者は祈りを捧げる。


「その【上位管理者】が初めて神託を下されたのは、はるか昔に起きた瘴気が世界に蔓延する天災の時でございました」


ハリーテはハッとした顔で


「それは聖女降臨の?」


「左様でございますじゃ。本来そのような瘴気と呼ばれるようなモノがこの世界に存在する事はあり得なかったと【上位管理者】様はおっしゃられたそうです、原因は候補生としても未熟であったウォルセアの世界構築が完全ではなかった事と例え未熟であったとしても【神】の名がつく者だった……という事なのかエネルギーそのものとなっても尚この世界を恨む……というのが適当なのかは分かりませぬが、その純粋な増悪の思念が世界を維持する為のエネルギーを変質させたものが『瘴気』なのだそうですじゃ」


「古の降臨された聖女が祓ったとされる瘴気はそんなものであったのですか……ところでなぜ我ら現地の者では対処できなかったのかお聞きしてもよろしいですか?」


ふと思いついたハリーテは双子賢者へと疑問を投げかける。


「ハリーテ殿下の疑問はもっともですじゃ。実は瘴気がこの世界を作った神のエネルギーを変質させたものであったために、この世界で肉体を持った者には干渉できなかったのだそうですじゃ、しかしほかに方法がないとはいえ異世界から人を拉致してくることは【上位管理者】様も最初はお考えではなかったそうなのですが、きちんとした【システム】を構築する前に世界が滅びそうになっておりました為、苦肉の策として聖女様をお呼びしたと古文書には記されておりますじゃ」


「ん?つまり、話をまとめると現在は【システム】が機能している……それが最初に話しておられた【魔王】の関係だという事であっておりますか?」


ずっと黙って話を聞いていたクレイグが双子賢者へと話しかける。


「左様でございますじゃ。色々な試行錯誤はされたそうですが、結局異世界人に瘴気を祓ってもらうのが一番効率的だと【上位管理者】の《《方々》》が結論を出され今のような召喚が行われるようになったと言われておりますな」


「勇者マサタカもこの話を聞かされた為に、『二度と召喚するな』とは言えなかったと言っておりました。代わりに召喚された者の身の安全と帰還の希望だけは保障しろと【上位管理者】に直談判したと聞いております」


エドワードも師であった勇者の言葉を思い出しながら答える。


「現在の【システム】と言われるものは、まず瘴気を世界に蔓延させないように一か所に凝縮して【魔王】の肉体を構築させまする。これが深層から入る道の先にある場所でございますな、現在は瘴気も大分薄れてきておりますので長い時間がかかるそうで……一説には千年単位はかかるとか」


「そんなにかかるものなのですか」


クレイグは驚く。


「肉体を構築させた後は、中に【管理者】の方が入り魔族や魔物を操り魔王が誕生したことを世に知らせ、勇者を召喚する儀式を行わせ魔王を討伐していただくという流れになっておりますじゃ。もちろんその前に我々のほうにも【神託】は頂いておりますがのう」


「【神託】を戴くのでしたら魔族を動かす必要はないのでは……?無用な血を流す必要がどこにあるのでしょう」


クレイグが疑問を投げかける。


「人間側の都合からすればそれが一番でございますが、【管理者】側が『システム』としてそう作ったからとしか我々としてはお答えできませぬのう」


双子賢者が申し訳なさそうにフカフカ眉毛を垂らす。


「確かに神々がそう作ったのなら賢者様方を責めるのはお門違いですね……失礼いたしました」


クレイグも感情的になった己を恥じて謝罪するのであった。


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