そーせーしんわ
いつもお読みいただきありがとうございます。
※読者様がお開きになった小説はオッサンしか出てこない奴でまちがいありませんのでご心配なく。
又、作者が投稿する小説を間違ったわけでもない事を弁明させていただきます……。
「ワルスギーテ・コマルーノ! もう我慢できん、貴様との婚約は破棄する!」
と、唐突に学園の卒業記念パーティーを催していた会場に高らかな宣言が響き渡った。
「……左様でございますか、まぁご自由になさったらいかが?」
しかし相手のワルスギーテは、全く興味を示さずしらけた様子のまま美しい扇で口元を覆っている。
その様子を見たワルスギーテの婚約者であるはずの王太子は
「それがこの次期国王たるオレサマーに対する態度か! ……こうなったら俺の愛するヒローインに対する行いを、皆にすべて暴いて見せてやろう! みんな準備は良いか?」
とヒローインと呼ばれたピンク少女をかばう様に自らの後ろへやりながら、傍にいた友人兼臣下でもある三人の恋のさや当てメンズへ声をかける。
「ああ勿論」
「任せてよ!」
「すべて万全です」
勢い良く返事を返す三人。
「まずは私が!」
と勢いよく一人目がワルスギーテを糾弾しようとしたが、即座にワルスギーテに
「あぁ……めんどくさいので却下で」
と切り捨てられてしまった。
「なっ!? さては自分が犯した罪を暴かれそうになって誤魔化すつもりですね!」
「いえ時間がもったいないのでそういうのはもういいです」
と、ワルスギーテはうんざりしたように吐き捨てる。
「ワルスギーテ! 貴様一体どういうつもりだ!何の権利があってコイツの言う事を遮ったのだ! 黙って糾弾されろ!」
とオレサマー王子は頭の悪い発言をしたが、ワルスギーテは答えるつもりもないのか
「はぁ……これはひどいわね……」
と、何やら透明な板状のものと羽ペンをどこからともなく取り出しなにやら書き込んでいる。
「貴様! 人の話はちゃんと聞けと教わらなかったのか!」
「その言葉は、殿下にそのままお返ししますわね。わたくしは婚約破棄など、してもしなくても構いませんのでこんな事なさっている暇があるのならさっさと手続きするなり国王陛下に報告するなりなさったらいかがですの?」
「ぐっ……しかし貴様が犯した罪を明らかにせねば、ちちう……国王陛下に婚約破棄させてもらえぬ!」
「あら一応考える頭は残っていらっしゃるのですね、そこは少し評価を上げましょうか」
とワルスギーテは、板状のものから目を離さず書き込みながら答えている、その様子をわなわなと震えながらオレサマーが見つめていたが、即座に限界に達して
「いい加減にしろ!」
と板状のものを取り上げようと動いた。
しかしワルスギーテにもう1歩というところでバチーンという音と共にオレサマーの手がはじかれてしまうではないか。
「なっ! 貴様一体なにをしたのだ!」
動揺しつつはじかれた手をかばいながら、後ろへものすごい勢いで下がっていくオレサマー。
「特に何もしておりませんわ。ただ『管理者』に貴方がたは触れる権限を持ってないだけです。」
と、淡々と書き込みながら何事もなかったように話すワルスギーテ、茫然とする一同を無視してしばらくたち、やっと書き込み終わったようでワルスギーテは顔を上げた。
「このままではまともにお話もできませんね。【上位者権限により『世界名ウォルセア』の因果律改変、並びに契約魂の契約時の記憶封印処置解除】」
ワルスギーテの発した言葉により世界が劇的に改変されていく、そして彼女の目の前に存在するオレサマー達の様子も変わった。
「あれ……私は一体何を……そうだ……確かあの時事故で死んだはず……」
「ここは一体……そうだ俺は誰かと契約して……」
などという沢山の声が溢れ会場内は騒然とした雰囲気に包まれている。
「どうやら皆さま記憶が戻ったようですね。これ以上混乱されても困りますし、直接被害にあわれた方以外の契約魂の方は後日個別にお話しさせていただきますので、とりあえず今はそのままお帰り頂きましょう」
と、冷たい目でヒローインを見ながらワルスギーテはパチンと指を鳴らした瞬間、会場内はヒローインとオレサマーそしてメンズ3人だけが残されていた。
「さて、ヒローインさん……いえ『創世神候補生ウォルセア』これは一体どういうことなのかご説明いただけますよね?」
と、射貫くような目でヒローインと呼ばれていた少女を見つめるワルスギーテ。
その目に心の底から恐怖した表情でヒローイン……いや創世神候補生ウォルセアは全身を震え上がらせてへたりこんでしまった。
「き……教官……なぜお分かりになられたのですか……私まだ審査申請だしてませんよね?」
「まったく……貴女は一体今まで何を学んできたのですか? 貴女は契約魂の方々の魂に干渉して、自分の都合のいいように動かす事は重大な違反行為として自動的に通報されると卒業テストを受ける前の授業で聞いているはずですよ!」
「え……それは審査申請を出した後の話じゃなかったんですか?」
「その発言を鑑みるに契約魂の方々に対して審査前なら何をしてもいいと思っていたと……これは大変な問題ですよ候補生ウォルセア」
「契約魂って言っても、ただの魂であることに変わりはないじゃないですか。卒業後作る自分の世界では業の問題で出来ないし、ちょっとくらい遊んでもいいかなって……」
その発言に頭痛がしたのか、こめかみを抑えながらワルスギーテは答える。
「はぁ……。 そんな浅はかな事を考えていたのですか……まぁ実際過去にも貴女のような愚かな考えを実行に移した創世神候補生は何人かおりました。その候補生がどうなったかご存知ですか?」
「うーん。 留年とかですか?」
「そんな甘い処分になるわけないでしょう。神格剥奪の上、新しい世界をつくるためのエネルギーに変換されて存在が抹消されます」
「へ……え……それって実質死ぬってことですよね?」
「普通の人間などの『死』よりよほど重いのではないですか? なにせ魂すらエネルギーに変換される文字通り『存在抹消』ですから」
淡々と言葉をつづるワルスギーテに、ウォルセアはやっと事の重大さに気が付いたのか、顔色が真っ青になりガタガタと震え出した。
「そっ……そんな……なんとかならないのですか教官!」
半泣きになりながらワルスギーテの足にしがみつくウォルセア。
「残念ですウォルセア候補生……指導官であったわたくしも処分は免れませんので仲良く沙汰を待ちましょう」
そう言いながらワルスギーテは微笑みかける。
「あぁ……自棄になって面倒な事をされても困りますので【上位者権限により創世神候補生ウォルセアの存在凍結処理】を」
ワルスギーテがそう言うと、ウォルセアは蒼く美しい氷に覆われてしまった、それを満足そうに見ながらワルスギーテは残ったメンズへと視線を向け
「さて、これでゆっくりお話しできますね……皆さまにはいくつかの道が示されております。一つは『このままどこか違う世界へ新しく転生する』こちらは契約時にお望みになった特典をつけての転生でございますね。もう一つは『このままこの世界で生きる』この場合はこの世界での生を続行したまま契約時の特典を付けさせていただきますが、死後はこの記憶をなくし、そのままこの世界の魂となり、この世界で輪廻転生を繰り返すことになります。三つめは『転生しない』この場合は魂をしかるべき場所へお送りします。それ以外もないわけではないのですが個別相談の時にでもご相談くださいな」
そういいながらニコリと微笑んだ。
その美しさに思わず見とれてしまうメンズであったが
「では今日の所はこれでお開きにいたしましょう。後日改めてお伺いいたしますわ」
そういうとワルスギーテはウォルセアの氷ごとスッと消えてしまうのであった。